京都市立学校・幼稚園
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6月3日(月)MBS放送 よんちゃんTV「ミルクボーイのおかんの代わりに学校行ってみました」(17:30頃)で本校が紹介されました! 「探究道場」第1回申込受付中。令和6年6月14日(金)17:00までです!

振り子

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3月6日,雨上がりの光を受けて揺れるフーコーの振り子



 今日は公立高校入学者選抜学力検査。午後3時前に無事終了し,中学生諸君を見送りました。15歳の夢が叶えられることを祈ります。

 さて,3月1日に第64回卒業式を行いました。
 行事ごとに雨のよく降った1年でしたが,この日は穏やかな一日でした。
 堀川を巣立つ11期生の代表として答辞を読んだのは「ひま部」のメンバーで,愛称は「トミー」です。本人の了解を得ましたので,その答辞を紹介します。


 答辞

 三年前。春。散り始めた桜。真新しい制服に身を包んだ僕たちの前で,振り子が静かに揺れていた。

 新入生歓迎会の席で,10期生の先輩方がおっしゃった。
 「あの振り子は,実は電気で動いているんだよ」
 身も蓋もないもんだ,と思った。もっと夢があることを言ったっていい。何といっても,あの振り子は,僕たちが入学したときからずっと,堀川高校の象徴としてそこにあったのだから。僕は,少し恥ずかしいけれど,いまこんなことを思っている。
 「あの振り子は,実は僕たち一人一人のエネルギーで動いているんだよ」

 振り子の一番下,銀色の玉のそばによって,そっと上から覗き込んでみると,堀川高校の校舎の中,360°全部が,そこに映っているのがわかる。振り子は,行事も,授業も,部活も,日々の語らいも,ずっと僕たちの姿を全部,見ていたんだ。

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 文化祭,体育祭,球技大会,たくさんの行事があった。その表で,裏で,生徒会,総合探究委員会,探究基礎委員会,研修旅行委員会など,たくさんの組織が動いていた。みんなで一つのことをするのは,本当に難しい。僕は,3年間,さまざまな活動に参加して,このことを身をもって知った。締め切りが守れないなどは序の口,所属する組織の存在意義さえハッキリしていないこともあった。でも,そのたびに,じっくり考え,真剣に議論し,一つ一つ乗り越えていった。たくさん失敗し,たくさん反省し,たくさん改善したことで,同じような状況で同じような失敗をすることが減った。例えば,僕の所属していた探究基礎委員会では,学年全体のまとめの会を企画した後で,「そもそもなぜまとめの会をしたのか」ということで議論したことがあった。委員のなかで,企画の目的と目標について共通認識がなければ,企画が成功したかどうかの確認さえできない,と悟った。その後のまとめの会では,企画の目的と目標を委員自身で設定し,共有することで,一人ひとりが何をすべきかが明確になり,より円滑な企画運営ができるようになった。その後,委員で行った反省会で,「前よりはよくなった」という手ごたえと共に,「次はここを改善しよう」と新たな目標も出てきて,委員会全体が一歩前進したと実感できた。僕は,このような経験が,将来の自分の糧になると強く確信している。

 それから,みんなで一つのことをしようとするとき,他の人の知らない一面が見える。3年生の文化祭のとき,本番直前,クラスの中は何だか険悪で,何とかしようと行動するも裏目に出て,自己嫌悪に陥っていた。家に帰って,ため息ついていたら,あるクラスメイトからメールが来た。「ほめ上手になりなよ」「あんまり自分を責めるな」僕は泣いた。いままで気づかなかったけれど,こんなに優しい言葉をかけてくれる仲間がいる。本当によかったと思った。このことは一生忘れられない。こんな風にして,僕たちは,少しずつお互いのことを知り,痛みも喜びも分け合って,ひとつになっていったんだ。

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 ところで,あの振り子は,学校に来客があるときだけ揺れるらしい。やっぱり身も蓋もないやつだ。僕たちは,どうだろう。若い心は,毎日揺れ動いた。迫りくるテスト。はかどらない勉強。仲たがいした友達。最近連絡のないあの子。さまざまな感情が忙しい日々の間を駆け抜けた。そんな,いつのことかもわからない,たわいもない日々の思い出が,断片的に,しかしくっきりと,手にとるように思い出されて,嬉しいような,切ないような,なんだか不思議な気持ちになる。

 「受験は団体戦」と言われて,はじめは何のことかわからなかった。勉強は,自分ひとりで,自分自身と戦うものだと思っていたから。でも,センター試験の前日,3年生激励会のとき,初めてその意味がわかった。1組の人たちのパフォーマンスに勇気付けられ,終わり際に同級生と「がんばろう」とグータッチをしたとき,何て自分は小さいんだろうと思った。同じように緊張しているはずの同級生の優しさに,自分は周りのことを気にかけてなさ過ぎると,情けない気持ちになった。でも同時に,嬉しくてたまらなかった。「一人じゃない」と思った。こんな風に,いっしょに高みを目指した11期生の一員でいられて,本当によかった。学年通信のタイトルの横にある芽のイラストが,時がたつにつれて成長しているのをご存知だろうか。「芽ぐむ」11期生は,仲間と共に,高く高く,空に向かって伸びていくことができたんだ。だれ一人欠けても,今ここにいる11期生にはならなかった。離ればなれになるのは寂しいけれど,仲間と過ごした3年間のことは忘れない。

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 それから,僕たちが今ここにあるのは,たくさんの人たちの支えのおかげだ。
 まず,教職員のみなさん。いつだって僕たちと真剣に向き合って,ときに優しく,ときに厳しく,教え導いてくださった。僕たちが時々思いつく突拍子もない企みに,みなさんはいつも,それを実現するためのチャンスとヒントを与えてくださった。だから僕たちは,勉強だけでなく,自分で考え,提案し,協力し,実行するとはどういうことかも,教わった。また,事務員さん,管理用務員さん,保健室の先生,スクールカウンセラーの先生は,僕たちがのびのびと学校生活をすごせるよう尽力してくださった。自分の力で生きていくにはまだまだ程遠い僕たちだけれど,「自立する18歳」に一歩一歩近づいていけたのは,教職員のみなさんのおかげです。ありがとうございました。

 それから,学校施設にもありがとうと言いたい。入学したときは空っぽだったBIGBOXが,今は僕たちの暖かい思い出と,夢と,希望でいっぱいになっている。3年間,僕たちを包み,静かに見守ってくれたBIGBOX,ありがとう。

 それから,後輩。いつもは可愛げないのに,部活を引退した後も,「最近どうすか」「受験がんばってください」と声をかけてくれる君たちに,いつも笑顔と元気をもらった。春からは新入生が入って,また新しい堀川の一年がはじまる。これからは,先輩として堀川高校をグイグイ引っ張っていってください。ありがとう。

 最後に,家族。起きている時間の大半を学校で過ごす僕たちは,家族の存在をしばしば忘れてしまいがちだけれど,本当は,これなくして今の僕たちはなかった。今日,胸を張って卒業できるのも,生まれてからずっと暖かく見守ってくれた家族のおかげです。特に,父と母には感謝してもし尽くせない。どんなに言い争いをしても,翌朝にはちゃんと食卓の上に弁当が載っていて,そんな優しさについつい甘えてしまうこともあった。自分のことさえ,自分でできていなくて,たくさん迷惑もかけた。今日からは,少しずつだけれど,そんな自分を変えていきたい。そして,いつかきっと,恩返しをしたい。それまで,元気でいてください。これからもよろしくおねがいします。ありがとう。

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 さて,今日も振り子は,静かに揺れているのだろうか。堀川高校,その象徴である振り子のもとで3年間を過ごした僕たちの心の中にはきっと,それぞれのリズムで揺れる,光る振り子があるはずだ。心はいつだって揺れ動くけれど,きっと大丈夫。つまずいたら,いつだってここに戻ってこられる。だから振り子よ,振り止むことなかれ。道に迷ったとき,僕たちを導いてほしい。

 振り子は教えてくれた。今日も世界は回るんだ。僕たちは,静かに揺れる振り子を胸に秘めて,今日,堀川高校を卒業する。振り子よ,振り止むことなかれ。僕たちが新しい世界を回すんだ。そんな気概と情熱をもって世界に羽ばたく,僕たちは,そんな一人一人でありたい。

 平成24年3月1日 卒業生代表


 途中からトミーは泣いていました。ずいぶん泣いていました。ときおりハナをすすりながら,ブレザーの袖で涙をぬぐっていました。
 私は彼をずっと見ていました。曇ってしまった眼鏡の向こうで,彼は少し震えていました。それでも力むことなく自然な姿で,語りかけるように言葉をつないでいきました。読み終えて,ひと呼吸して,まっすぐに私を見ました。彼の後ろのフロアには11期生が立って,こちらを見上げていました。

 11期生諸君,くれぐれも元気で。
 君たちが気概をもって生きていってくれることを心から願っています。


                      39号(2012.03.06)……荒瀬克己

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行事予定
3/14 2年スタディーサポート
2年「卒業生に学ぶ」(予定)
3/15 1年代休(マレーシアコース)
3/16 生徒校内立入禁止(〜13:00)
午後:1年登校日(マレーシアコース)
1年代休(ヨーロッパコース)
3/17 コミカレ「人間行動学入門」(14:00〜16:00)
PSTなし
3/19 後期終業式(11:00〜)
1年研修旅行解団式
一斉清掃
スクールカウンセラー来校日
許可生徒以外校内立入禁止(13:00〜)
中学生及び保護者
3/16 一般選抜合格者入学校発表(9:00〜12:30)
3/19 合格者登校日(14:00〜)
3/20 新1年教科書販売
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