最新更新日:2024/09/24 | |
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給食週間 学校長の話
さて,学校給食は,今から120年以上昔の1889年(明治22年)山形県鶴岡市の私立忠愛小学校で,日本で最初に始まりました。この頃,貧しくてお弁当をもってこられない子どもがたくさんいたため,この学校を建てたお坊さんが,おにぎりと焼き魚などを食べさせたのがはじまりとされています。その後,少しずつ全国に広がっていきましたが,日本が戦争を始めた70年ほど前から,食べ物が少なくなり,給食が中止になってしまいました。やっと戦争が終わりましたが,日本中,大人も子どもも食べるものがなく,おなかをすかしていました。この頃の小学6年生の子どもの大きさは,今の4年生ぐらいしかありませんでした。家で食べられるものと言えば,おかゆに芋を混ぜたものでした。このような日本の子どもたちの様子をみて,アメリカなどから食べ物がたくさん送られてきました。主に脱脂粉乳や小麦粉といったもので,これらを使って,また学校での給食が始められるようになったのです。今か65年ほど前の話です。
私の小学生の頃は,給食のミルクと言えば,今のような牛乳ではなく,牛乳からバターなどの原料になる脂分を取り出した後の脱脂粉乳を使ったものでした。 アメリカから,長い日数をかけて貨物船で運ばれた脱脂粉乳は高い気温と湿り気のため,かなり傷んでいて,それをお湯でといただけのものですから,とても変なにおいがして,飲みにくく,さめてしまうと,さらに飲みにくくなりました。だから,まるでお薬を飲むかのように,一息に,ぐっと飲みました。それでも,貧しい日本の子どもたちにとっては,命をつなぐ給食だったのです。そんな頃に子どもだった人は,何を食べても「おいしい」と感じ,好き嫌いなく食べる人がほとんどでした。今,あの頃子どもだった,60歳ぐらいの人に,「嫌いな食べ物はなんですか」と聞くと,「ありません。」「なんでも食べます。」と答える人がほとんどです。 また,おいしかった給食の献立も忘れられません。卒業して50年ぶりに会った小学校の同窓会で,よく話題になるのが給食の話です。「給食が懐かしい。」「もう一度食べたい。」とか,私の好きだったのは「竹輪の磯辺揚げだった」とか「クジラの竜田揚げだ」といった献立の名前が出てきます。 その頃は,クジラを自由にとることができたので,肉としては一番安かったくじらを使った料理が学校給食の肉料理でした。今でも,あの頃の味がなつかしく,調査捕鯨で捕ったクジラの肉をスーパーで買い,竜田揚げやカツにして食べるのですが,あの頃に給食で食べた味には,どうしても届きません。 さて,今の子どもたちは,豊かな日本に生まれ,何不自由なく,食べたいものを,食べたいだけ食べることができます。飽食の時代と言われています。 テレビを見ていても,いろいろな地域やお店の,おいしい料理を扱ったグルメ番組が大変多いです。とてもいいことのように思えますが,今,子どもたちの体に心配なことが起こってきました。それは,「生活習慣病」と呼ばれる,体にとってよくない食生活を長く続けていた結果起こる大人の病気が,今,早くも,子どもの体に起こり始めているのです。豊かすぎる日本では,ついつい自分の好きなものを満腹になるまで食べることができます。でも,大好きなお肉ばかり,あるいは甘いものばかり食べているとやがて病気になってしまいます。もっと野菜を取らなくてはなりません。食わず嫌いという言葉があります。一度も食べないで嫌いと決めつけていることです。食べてみるとおいしくて,体にいいものがたくさんあります。体によくて,長生きできる食べ物としてよく紹介されるのが,「まごはかわいい」という言葉です。『まごはかわいい』の,「ま」は豆,「ご」はゴマ,「か」は貝,「わ」は若布(わかめ),「い」はいりこという,小魚を煮て干したものです,そしてもう一つの「い」は芋です。 2010年の「世界保健統計」によると,日本人の平均寿命は83歳で,ヨーロッパのサンマリノという国と並んで1位だったそうです。戦争中の食べ物のない時代を生き,贅沢をしないで,好き嫌いなくなんでも食べ,腹八分目で,日本料理を中心に,野菜をたくさん食べてきた,今のおじいさんやおばあさんは元気で,世界一長生きなのです。でも,最近の子供たちは,野菜をあまり食べなくなり,お肉や甘いものをたくさん食べすぎ,必要以上にカロリーを取り過ぎるようになった結果,生活習慣病になり易くなっているのではないかと言われています。そのまま,続けていると,長生きできなくなるかもしれません。 また,食事前におやつを食べ過ぎ,肝心のご飯の時におなかがすいてないとおいしく食べることができません。体を動かし,汗を流したり,勉強したり,働いたりするから,おなかがすき,おいしく食べられるのです。「同じものを食べ過ぎす,いろいろなものを食べること」「よく遊び,よく学び,おなかをすかすこと」「体にいいものを食べること」が大事だと思います。 さて,世界には,68億人の人たちがこの地球上に住んでいます。そのうち日本には,1億2千万人の人が豊かな生活をしています。しかし,世界では今,約8億の人が昔の日本のように食べ物がなく,毎日おなかをすかしています。その内子どもが約3億人です。そして,5歳までに1200万人の子どもたちが亡くなっていますが,その内の約600万人は食べ物がなく,栄養不足や飢えの影響による病気で、毎年亡くなっています。 一方,豊かな日本は食べ物を世界から買い集め,たくさんの食べ物があふれています。そして,家庭や学校,お店での食べ残し,コンビニなどの賞味期限切れなどの食品が年間2000万トン以上捨てられています。これは, 7000万人以上の人々が1年間,生きていくために食べる量だそうです。世界には,現在,全ての人々が十分食べられるだけの食料があるにもかかわらず,このようなことが起こっているのです。 さて,今,給食では,野菜を使った献立の時に多くの食べ残しが出ています。野菜は,体作りや健康づくりで大切な働きをします。しっかり食べてほしいと思います。 日本には,昔から,「もったいない」という言葉があります。私たちは,生きるためにたくさんの動物や植物の命をいただいています。食べ残すのはもったいないことなのです。 また,昔,貧しかった日本では,よそから頂いたものを隣近所の人たちに少しずつ配る「おすそわけ」という言葉もありました。今一度この言葉を考え,世界の人たちが幸せに生き続けるために,今,自分に何ができるかみなさんに考えてほしいと思います。 |
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