京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/06/12
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本校は 自由快活な校風のもとで 多様性を尊重し共に高め合い 美の精神をもって広く社会に貢献できる 高い理想をもった創造性豊かな自立した青年を育成します

アートと遺産:京都から世界への架け橋


2023年時点での世界遺産総数(文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種類がある)は1199件、その内京都には16社寺1城の計17件あります。その世界遺産を決めているのはユネスコ、つまり国際連合教育科学文化機関であり、年に1回開催されるユネスコの政府間委員会で採択されています。

2024年、登録30周年を迎える世界遺産「古都京都の文化財」を擁する京都市は、2017年に地球環境問題の一つとして文化観光の質の向上を盛り込んだ「京都宣言」を採択するなど、世界遺産を有する都市として弛みない先進的な取り組みを続けています。このシンポジウムは、そのような京都の地で、世界遺産という制度が文化遺産保護に果たしてきた功績を辿るとともに、その発展の中で日本が果たしてきた、あるいは今後果たすべき役割についてあらためて考え、世界遺産のこれまでとこれからを見つめる機会にするためのものでした。

このシンポジウムに参加をして、私自身、再確認したことがありました。その中の一つを紹介します。私はこれまで文化芸術に携わる人として、また校長として、皆さんに機会があるたびに、多様性を認め、他者との対話を通じながら影響を受け、クリエイティビティやイノベーションを起こしていってほしいと伝えてきました。私自身も職場で、或いは様々な場において他者との対話を大切にして、できる限り他者の考えを聞き、また自分の考えを深めていくということに努めています。しかし他者の意見を耳にすることや受け入れることは容易ではないですが、できるだけ相手に対する時は先入観や感情は横に置いて、白紙の状態で対話をするようにしています。すると今まで見えていなかったことが見えてきたり、違うアイデアが浮かんでくることが多々あるのです。皆さんもそんな経験をしたことはたくさんあるでしょう。

このシンポジウムの中で、エルネスト・オットーネ(ユネスコ文化担当事務局長補)氏は、遺産の保存や保全を考える時、多様な考え方が必要であると語っていました。それは、欧米中心の国からの発案で1972年に採択された世界遺産条約は1990年代に入り、それまでの優品主義を改めて多様性を尊重する方向に舵を切ろうとしていました。そのような状況の中、1992年の日本の加盟(条約批准)と1994年の奈良で行われた国際会議での「オーセンティシティに関する奈良ドキュメント」は、保存に関わる人で知らない人はいないぐらいの影響力を持つことになるのです。それまで多くの世界遺産は欧米を中心に登録をされていましたが、これ以降欧米以外の国にも光が当たることになったのです。そこには欧米至上主義の考えかただけでない考え方が入ることによって、新たな見解が生まれ、制度の見直しにつながったのです。グローバル社会を迎えた今、グローバルな視点とローカルな視点の両方の見方・考え方が必要不可欠な世界となっています。私たちは日本の中でも非常に稀で貴重な文化を持つ京都(近郊含む)に住んでいます。その京都は、日本の文化を代表するような重要な文化財があります。そして、日本をはじめ世界各地の文化の情報も多く手に入れることができます。15歳からの多感な時期に、美術工芸を専門に学ぶ皆さんはにとっては、この京都はとても素晴らしい環境が揃っており、感性を磨く場としては最高な土地です。そしてグローカルな考え方を身につけるためには最高のところです。だからこそ、多様性を認め合うため、自分たちが住む京都をもっと知り、自分のアイデンティティをしっかり知ることが、これからの社会において重要なアイテムになること間違いありません。

オットーネ氏も語っていましたが、日本はユネスコにおいて非常に大きな役割を担っています(分担金も日本が国連加盟国中、米国及び中国に次ぎ第3位であり、2022年においては2億3080万ドルを負担(勿論、私たち日本国民の税金から支払われているのです)しています)。世界遺産の保存・修復などに大きな影響を与えている国の一つなのです。日本はもっと世界の中で存在感を示しても良いはずなのではないでしょうか。私たちは自信を持って、類い稀な日本の文化遺産を守り、かつ文化芸術を継承し、また新たな文化や芸術を生み出していくべきです。そして、皆さんには文化による世界平和の実現を希求した京都市の「世界文化自由都市宣言」の実現に向けて高い理想を持った青年になってほしいと願うばかりです。

 2024年1月22日
                       校長  名和野新吾

未来を紡ぐ遺産:若者と日本の役割

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先週の土曜日、京都大学で「世界文化遺産の50年:日本の貢献のこれまでとこれから」というテーマで文化遺産国際協力コンソーシアム主催のシンポジウムが開催されました。文化庁の知り合いから案内を受け、文化遺産や自然遺産に興味がある私は、この機会を逃さずに参加を決めました。新しい世界との出会いはいつもワクワクするものです。シンポジウムに参加して、これまでの考え方や見方が変わり始め、新しい景色が見えるようになりました。人、旅、本との出会いが自己変革のきっかけになると言われていますが、このシンポジウムもそんな経験の一つでした。

在校生の皆さんも、この感性豊かな時期に、今まで興味はあるけれど躊躇して踏み入れなかった世界や知らない世界へ一歩踏み出してみませんか。そんなきっかけになればと思うと同時に、私のこの貴重な体験を、皆さんと共有したくて校長ブログに書きました。興味のある方は、ぜひ校長ブログを読んでみてください。

校長ブログ → こちら

新年を迎えて(校長メッセージ)

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「生徒の皆さんへ」

新年明けましておめでとうございます。

新年にあたり、私が大好きな谷川俊太郎さんの「朝」という詩を皆さんに贈ります。

「朝」

また朝が来て僕は生きていた
夜の間の夢をすっかり忘れてぼくは見た
柿の木の裸の枝が風にゆれ
首輪のない犬が陽だまりに寝そべってるのを

百年前ぼくはここにいなかった
百年後ぼくはここにいないだろう
あたり前の所のようでいて
地上はきっと思いがけない場所なんだ

いつだったか子宮の中で
ぼくは小さな小さな卵だった
それから小さな小さな魚になって
それから小さな小さな鳥になって

それからやっとぼくは人間になった
十ヶ月を何千億年もかかって生きて
そんなこともぼくら復習しなきゃ
今まで予習ばっかりしすぎたから

今朝一滴の水のすきとおった冷たさが
ぼくに人間とは何かを教える
魚たちと鳥たちとそして
僕を殺すかもしれないけものとすら
その水をわかちあいたい

     谷川俊太郎〈詩集「空に小鳥がいなくなった日」所収〉

 誰にでも夜が明けて、朝が来るものです。それは当たり前なことですが、誰しも同じ朝を迎えているわけではありません。世界に目を向け、自分を取り巻く世界を思えばこの意味がわかってもらえるのではないでしょうか。また、時間軸で考えるならば、1日は24時間あり、1年は365日ありますが、大きな歴史の流れからみれば、本当にちっぽけな一瞬でしかないのかもしれません。何も目的を持たず日々をぼんやり過ごしていたら、いつの間にか1年が過ぎて、その繰り返しでいつか老いてしまいます。普段は意識していないけれど、生きていること自体が決して当たり前のことではなく、存在自体が奇跡だと考えて過ごしてみてはいかがでしょう。

 私はこの詩に、悠久の宇宙と、生物の世界と、そして人間の歴史を感じます。それは大いなる不思議に満ちています。元旦の夜が明けた朝、見た目には普段の朝と変わりはないのですが、私は特別な心地がしました。新年を迎え、皆さんは何か特別に新しくなったような気持になりましたか。

 皆さんには、ぜひ1日1日を大切にして過ごしてほしい。そして自分の思い描いた未来に向けて歩んでほしいと心から願っています。パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者である松下幸之助氏は「道」というタイトルの詩(一部抜粋)で「自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。 どんな道かは知らないが、ほかの人には歩めない。 自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがいのないこの道。 広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。 坦々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある」。また、こう続けています。「この道が果たしてよいのか悪いのか、思案にあまる時もあろう。 なぐさめを求めたくなる時もあろう。 しかし、所詮はこの道しかないのではないか。」と。これは決してあきらめて運命を受け入れるということではなく、自分だけに与えられた道を進み続けなさいということです。続けて氏は、「他人の道に心をうばわれ、思案にくれて立ちすくんでいても、道はすこしもひらけない。道をひらくためには、まず歩まねばならぬ、心を定め、懸命に歩まねばならぬ」と述べています。心を決めて歩みをつづけることで、自分に与えられた道を自ら開いていくことであると示してくれています。

 この詩を読むと思わず私は自分の心が引き締まるような気がします。年齢が幾つになっても自分を信じて、少しでもよいから昨日の自分よりは良くなっていたいと考えています。中でも私が特に好きな言葉は「自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。」という一文です。他人と自分を比べるのではなく、自分の道を一歩ずつ自分のペースで進んでいこうと思えます。ただ、進むためにはしっかりした情報収集(知識含む)や分析ができてはじめて進むべき道が見えてくるものです。常に自身の言動を振り返りながら、自分にとっていいことだと思えることのみを取り入れ、歩んでいきたいと思っています。

 皆さんが新たな気持ちで新年を迎え、自分の目標に向かってチャレンジし続けて生き生きと学校生活を送ることができることを願っています。本年もよろしくお願いいたします。


 2024年(令和6年)1月5日
                       校長 名和野 新吾

新年のご挨拶

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 新年明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 新年の挨拶の前に、この度の能登半島地震で被災された方に、心よりお見舞い申し上げます。

 元日の夕方に飛び込んできた能登半島地震のニュースには、私自身大変ショックを受けました。その後、地震被害の詳細をニュースで見聞きする度に、東日本大震災や熊本地震などの災害発生後に本校が行なった災害支援活動の取り組みの中で、現地の方から直接災害時のお話を聞かせていただいたことを思い出し、今回の地震被害に遭われた方のことを考えると心が痛む思いです。自然災害は本当に人の都合などを問わず起こることをまざまざ見せつけられました。改めて私たち自身が常日頃からどのような心構えでいなければならないか、痛感したところです。これからも在校生には危機管理について啓発を続け、いつどのような事態が起こっても自身で考え、的確な行動が取れるように育成していきたいと考えています。また、このような事態が起こった時に、一人ひとりが我が事として捉え、何か支援できることはないかを考え、行動できる人であってほしいと思います。

 さて、新年に当たりご挨拶申し上げます。
 本校は昨年4月に崇仁地域に移転し、美工として再出発をしました。移転にあたって策定した美術工芸高等学校グランドビジョン(ホームページ右側下のリンク「美術工芸高等学校グランドビジョン」を検索)を達成するため、在校する生徒のことを第1に考えて教職員一同邁進していくつもです。
 そのビジョンの中に、教育構想策定の背景として「予測困難な社会が到来している」と題して「グローバル化や技術革新により、私たちを取り巻く環境は急速に変化し続けており、人口問題や気候変動、パンデミッ クや国際社会の不安定化など、私たちが向き合わねばならない問題も複雑化・多様化しています。」と記しています。これからの社会では「グローカル」の視点からアプローチする力が求められています。これは、「グローバル」と「ローカル」を掛け合わせた造語で、「国境を越えた地球規模の視野と、草の根の地域視点双方で問題を捉えていこうとする考え方」(大辞林 第三版より)を指します。本校のグランドビジョンを策定してから2年が経とうとしていますが、世界では未だに戦争や紛争、人権侵害、貧困などの問題が解決せずに続いています。国連が2030年までの目標に掲げたSDGsの達成に向け、全世界で努力はしているものの、なかなかその達成への道筋が見えてきません。また、国内においても様々な課題が山積しています。これらの解決達成を図ることや最適解に導くことを国家に頼っていては、実現不可能なのかもしれません。しかし、私たち一人ひとりが我が事として捉え、人任せにせず「グローカル」な視点を持って取り組めば大きく世界は変わると私は信じています。そして世界中で暮らしている人が昨日より今日が少しでも幸せになったと実感できる世界になることを願っています。

 本校は生徒一人ひとりが主役となるような学校づくりを、在校生と共にこれまで同様推し進めていきます。
 今後も本校の教育活動にご理解いただき、皆様のご支援ご協力をお願いいたします。

 2024年1月5日
                       校長 名和野 新吾


 ■校長メッセージ「生徒の皆さんへ」→ こちら

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行事予定
2/12 建国記念の日
京都市立美術工芸高等学校
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