京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/07/22
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校長メッセージ(後期終業式)


今年度の締めくくりの日となりました。

今年度も昨年度と同様、コロナ禍の一年間、度重なる教育活動の制限や行事の延期や中止などで、振り回されてしまいましたが、皆さんの理解や協力があって、教育活動を実施してくることができました。学校を代表して、皆さんに感謝します。本当にありがとう。

4月から始まる来年度についても、新型ウイルス感染症が収束するとは、まだ思えません。今後も皆さんと一緒になって乗り越えていきたいと思います。

さて、終業式にあたって、皆さんに伝えたいことが二つあります。

一つ目は、毎日ニュースで目にしていると思いますが、ロシアによるウクライナ侵攻が行われ、国際情勢は混乱の中にあます。この状況を改善しようとあらゆる国や国際機関が協調し、日本も含め対応をしているところですが、なかなか先が見通せない状況です。このニュースを聞いたり見たりして、皆さんは何を感じ、思っていますか?

私は皆さんに、この出来事を身近な問題として捉え、自分事として考えられる人になって欲しいと思っています。私はどんなことがあっても他国を武力でねじ伏せるような行為はあってはならないことであり、このことは国際法に触れているだけではなく、人命に関わることであり、見逃すことができないものだと考えています。

今、ウクライナが大きく取り上げられていますが、世界中ではいまだに国と国との戦争や紛争、国内における内戦などが多数起こっています。私は今回ウクライナ侵攻のニュースが毎日のように流されるのを見て、改めて「命」とはなんだろう、「自由」とはなんだろう、「平和」とはなんだろう、ということを自問自答しています。

今、当たり前と考えている「命」・「自由」・「平和」などといったものは、奪われて初めて分かるのかも知れません。ウクライナとロシアのような国同士の争いでなくても、、私たちが大切にしているものが誰かに奪われたりするかも知れません。もしかしたら知らずに奪ってしまう立場になったりすることもあり得ます。だからこそ絶えることなく熟考し続け、備えておかなければならないものではないかと私は考えますが、皆さんはどう思いますか?

先程の「命」とはなんだろう、「自由」とはなんだろう、「平和」とはなんだろうという問いには、倫理的・宗教的な答えはあるかも知れませんが、一人ひとりに違う答えがあるはずです。この問いには正解はありません。皆さんも考えてみてください。生きていく上で大切な問いです。

ウクライナの首都キエフ市は京都市と姉妹都市となって今年で51年目を迎えます。この戦乱が対話と交渉により解決し、キエフ市はもとより、ウクライナに一日でも早く平和が訪れることを祈ります。

もう一つ皆さんに伝えたいことは、来月4月1日より民法の改正により成年年齢が18歳に引き下げられ、2年生の多くの皆さんは4月2日以降誕生日を迎えられると同時に、法的に大人になります。様々な面で責任を問われることになります。民法が定めている成年年齢は、「一人で契約をすることができる年齢」という意味と、「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。成年に達すると、親の同意を得なくても、自分の意思で様々な契約ができるようになるということです。契約を結ぶかどうかを決めるのも自分なら、その契約に対して責任を負うのも自分自身になります。

契約には様々なルールがあり、そうした知識がないまま、安易に契約を交わすとトラブルに巻き込まれる可能性があります。社会経験に乏しく、保護がなくなったばかりの成年を狙い打ちにする悪質な業者もいます。だからといって、避けて通ることはできないということです。したがって何をすべきか。しっかりと学んでください。

少し話は変わりますが、「大人になるということは、どういうことでしょう。」想像してみてください。私は「大人とは全ての自分の選択に責任を持つ」ということだと思います。父母の親権下にある子供より、大人になることは法的にも制限が緩和され、権利が増えるということ。しかしその一方で、何かあった時に責任を取るのが大人であり、責任をとれるようにならなければいけません。また、社会に対して責任感をもつことも要求されてきます。

1年生の皆さんも、1年後には同じ状況となります。1・2年生の皆さん、学校生活は社会に出るための準備期間です。今後、学校生活や私生活の中で様々な選択や決断を迫られることになるでしょう。選択の前に、後悔のないよう十分に調べ、熟考し、必要に応じて相談し、最後の決断は自分の責任で行う訓練を心がけてください。「誰かが決めてくれる」ではなく「自分で決める」ということを実践して欲しいと思います。

最後に、3週間後には新入生91名が入学してきます。皆さんが本校の先輩として、この学校の良き伝統と誇りを伝えてくれることを願っています。これで年度末のメッセージとします。

皆さんが自ら主体的に行動し、成長する姿を見守っています。

令和4年3月1日
                  京都市立銅駝美術工芸高等学校長 
                  名和野 新吾 

第42回卒業式 式辞

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第42回卒業式  式  辞

 春浅き鴨川の水音に、三年(みとせ)の月日の流れを感じる今日の佳き日、三年生の巣立ちの日となりました。

 本日、京都市教育委員会をはじめ、PTA役員の皆様、並びに、平素よりご支援をいただいております、美工交友会、京都パレスライオンズクラブ、銅駝自治連合会よりお越しくださいましたご来賓の皆様、そして多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、第42回京都市立銅駝美術工芸高等学校卒業式を挙行できますことを、心より感謝し、教職員を代表いたしましてお礼申し上げます。

 先ほど、88名の生徒の皆さんに、卒業証書を授与いたしました。卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。美術専門高校での3年間の学びを全(まっと)うし、ここに晴れて卒業の日を迎えられたこと、心よりお祝い申し上げます。皆さんは明治13年、1880年に創立された京都府画学校以来141年の歴史と伝統をもつ美術学校の卒業生として、社会に巣立ちます。その誇りと大きな志をもって、それぞれの新しい道を歩み始めてください。

 保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様は本校で確かな力を身に付けられ、立派に成長されました。この3年間、本校の教育活動に深いご理解と温かいご協力を賜りましたこと、高い所からではございますが厚くお礼申し上げます。

 さて、本日卒業を迎えられた皆さんにとって、二年前に新型コロナウイルス感染症が発生し、世界的なパンデミックとなり、「希望を創る」場所であるべき学校もその影響を受け、皆さんの生活は一転しました。この二年間のコロナ禍において、臨時休校や行事の中止など教育活動は大きな制約を受け続けました。

 本当に辛かったですよね。皆さんが一年生の時に実施する予定であった瀬戸内方面の美術研修旅行、行きたかったですよね。二年生に延期しましたが、結果的に実施できず、最初で最後の宿泊行事が叶わなかったことが、本当に辛い思い出となってしまいました。二年生の時の体育祭や文化祭、やりたかったですね。他にも沢山、高校生活でしかできないことが実現できず、皆さんは我慢し続けて、どうしようも無い思いを呑み込んできたことだと思います。最終学年で実施できた文化祭は、本当に嬉しかったですよね。皆さんの若さ溢れ出るエネルギーに圧倒され、心が震えました。美工作品展に向け遅くまで制作に打ち込んでいる姿を見て、心が温かくなりました。素晴らしい作品ばかりでした。いろいろなことがあった三年間ですが、心の整理がつかず、中にはまだ納得できない人もいるかもしれません。皆さんに寄り添って、一人ひとりの声を聞いていたら、もっと何かできたのではないかと今でも考えてしまします。

 でもこのような状況の中で、皆さんは私たちと一緒にその課題に向き合い、様々な気持ちに折り合いをつけながら、今できること、やるべきことに精一杯力を出し切って、学校生活を大切に過ごしてくれました。
 その姿は本当に立派で、頼もしく見えました。日々の教育活動を止めずに続けらることができたのも、皆さんが学校に信頼を持ち、協力をしてくれなければ、成りたなかったことでしょう。本当にありがとう。勿論、保護者の方をはじめ、関係する方の協力もあってのことだと思っています。学校を代表しまして、皆様に感謝申し上げます。

 今日の旅立ちの日に,皆さんに伝えたいことが二つあります。
 一つ目は「人間はどう生きるべきか」という問いです。コロナ禍で教育活動が思い通りにならない状況において、対応を迫られた日々を送る中、私の頭には一つの作品が思い浮かんでいました。それは「我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこへ行くのか?」というタイトルの作品です。印象派の画家、ポール・ゴーギャンが晩年タヒチで描いたものです。彼のもっとも有名な作品のひとつで、彼の人生観が描かれており、タイトルの答えは見るものにゆだねられています。

 今、社会は先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態にあると言われています。気候変動や感染症の世界的拡大の問題など、人類は大きな課題に直面しています。また、経験したことのない災害が頻発、国際社会は不安定化し、社会は分断され、差別やいじめなどの社会問題も世界的に起こっています。これらの問題を直視し、分析し、解決策を模索する過程で必ず直面する問いが出てきます。それが「人間はどう生きるべきか」という問いです。

 この問いに向き合う時、皆さんにはこの学校で培った強みがあります。本校に入学後、美術専門科目だけでなく普通教科の学び、探究活動、クラブ活動、ボランティア活動や様々な学びの中で、「観る」「感じる」「考える」「表現する」活動に日々取り組んできました。感性や思考力、創造力を発揮して考え抜くこと、そして他者との対話や協働によって自分を高めていった経験があります。この学校で学んできたイマジネーションとクリエーションは、これから先、皆さんが人生を歩んでいく上で、道に迷った時、あるいは見失った時に、勇気と希望を与え、進むべき道を明るく指し示してくれるものと信じています。

 二つ目は皆さんに、こんな時代だからこそ贈りたい言葉があります。それは「余白」という言葉。私は日本画を描いてきたのでこの言葉が身体に染み込んでいます。日本絵画の作品には「余白」、つまり何もモチーフを描いていないところを残している作品が多く見られます。勿論余白がなく、端から端まで埋め尽くしているような作品もありますが、私は絵画をはじめ、建築や文章にも余白があり、自分の感じたことがその作品に入り込み、融合することで新たな価値観が生み出されるものがとても好きです。この「余白」を意識することは、絵を描く時だけでなく、私の人生観そのものになっています。


 その「余白」が今まさに必要とされています。私たちは常に何かに追われ、考え続けなければならない毎日を送っています。時間に追われ、合理性や機能性ばかりを追求していると、気持ちが疲弊してきます。だからこそ一見何も生み出さないような、生産性のない時間。あえてこの「余白」の時間を作ってほしいと思います。私も余白を作り出すため、休日に御所のベンチに何時間も腰かけ、木々を眺めるだけの時間を作ったりしています。特別な目的を持たずに一人で過ごす時間。本を読んだり、好きな音楽を聴いたり、料理をしたり、友人と遊んだり、どんな行動でもいいのです。考え事をまとめたり、気持ちを落ち着かせたり、情報を整理したり、新しい発想を生むのに役立ちます。また、心に「余白」があると、自分を大切に思うことができ、他者に優しくなります。皆さんは皆クリエーターです。ぜひ「余白のある人生」を心がけてください。

 皆さんがこの三年間、本校で学んでいる姿を見続けてきましたが、本当に輝いていました。本校での学びを通して、頼もしく成長した皆さんは、本校の誇りです。

 最後に、この先皆さんはそれぞれの道を進んでいきます。この高校時代に培った強みを、ぜひ引き続き磨いてください。勿論、違う強みを見つけて磨くのも良いでしょう。磨けば必ず自分色に輝きます。ただ皆さん一人ひとりの顔や身体や心が違うように、強みも違います。自分の特性や才能を見極めることが大切です。そして、見極めたらがむしゃらに挑戦し続けてください。行動した分だけ必ず将来の自分に返ってきます。人と比べず、自分自身を信じて、前に進んでください。そして保護者の皆様、お子さんを信じて、サポートし続けていただけないでしょうか。保護者の皆様の存在は、子供たちの安らぎであり、心許せる唯一の場所なのです。

 この学舎を巣立つ日、無限の可能性をもった皆さんに心からのエールを送り、お祝いの言葉といたします。

 令和4年3月1日
                京都市立銅駝美術工芸高等学校長
                         名和野 新吾 

2022年 新年のご挨拶

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 新年おめでとうございます。

 新型コロナウイルス感染が確認されてから早くも2年が過ぎ、3年目に突入することになりました。やや感染拡大も年末にはおさまっていたものの、新たなオミクロン株の感染が拡大しつつあります。そのような中で新年が明けました。今年こそは感染も拡大せず、終息へ向かい、コロナ禍前の教育活動ができることを祈るばかりです。

 2021年度の始まりは、一昨年度と同様、感染予防対策を徹底しながらの入学式、始業式で幕が開けました。翌日からは、時差登校や短縮授業、放課後の教育活動を制限するなど、前期中思い通りにならない取り組みが多々ありました。その中でも特に体育祭行事については一度は順延としたものの、最終的に中止決定に至ったことは大きな決断であり、断腸の思いでした。生徒の皆さんにはその厳しい現実を受け入れていただいものの、申し訳ない気持ちで一杯です。一方で、文化祭や美工作品展が無事開催できたことは、本当に嬉しい限りでした。文化祭クラス劇発表での活躍には、胸が熱くなりました。美工作品展では、自分と真摯に向き合いながら制作を続けた成果としての姿勢と作品に、心を揺さぶられました。その他行事や教育活動が行えたのも、生徒の皆さんをはじめ保護者の方、教職員など学校に関係する皆様のご協力があってのことだと感謝しております。

 後期からは感染拡大も改善し、教育活動の制限も緩和されたものの、コロナ禍以前の教育活動に戻ることができたわけではなく、マスク着用や昼食時の黙食、グループワークやペアワークなど長時間にわたる会話の時間制限などは引き続き対策が必要です。今後の講演会なども、全員が一堂に会して実施することはまだまだ難しく、オンラインでの開催を余儀なくされるなど、いつまで続くかわからない状況です。社会情勢が刻々と変化し続ける今、アフターコロナを見据えるだけではなく、予測不能な時代を生き抜くために、皆さんと教職員が一緒になって知恵と力を出し合い、できることを自ら考え見つけて、とにかく一つ一つやっていくこと、そしてこの難局を乗り越えていきたいと考えています。そして、将来必要となる力を着実に身に付けてほしいと願っています。

 井深大(いぶかまさる)氏が語ったこんな言葉があります。

 「人生で出会う出来事は、すべて何かを教えてくれる。
  生きている限り、学ぶべきことがある。」

 この彼の言葉を皆さんはどう受け止めますか。ものづくりを通して生きてきた彼の人生そのものが表されている言葉だと思います。私には、「今のこの危機をチャンスに変えてみては」と言われているようなで、勇気づけられます。
 井深氏は、皆さんがよく知っているソニーの創始者の一人。1946年に盛田昭夫氏とともに東京通信工業株式会社(後のソニー)を設立した方です。独自の製品開発に徹し電子技術者として、同社を世界企業に育て上げ、日本初のテープレコーダーや日本初のトランジスタラジオを開発しました。
 生徒の皆さんも、ぜひイマジネーションとクリエーションを持って、新しい未来に目を向け、一緒になって切り拓いていきましょう。

 年が改まって生徒の皆さんは「今年はこうありたい、こんなことをしたい。」と願いや希望を立てていることと思います。前期終業式の時、私から生徒の皆さんに「各自がたてた目標は達成できましたか?または、順調に進んでいますか?一度振り返ってみてください。」というメッセージを送りました。後期も残り少なくなってきました。ぜひ目標を改めて振り返って残りの時間を有効に使ってください。

 「学校は希望を創るところ」。本校も今年で創立142年目を迎えることになり、いよいよ来年2023年には移転することになります。これからも美工の良き伝統は残しつつ、生徒たちにとって最善の教育とは何かということを常に考え、文化都市京都に相応しい美術の専門高校として改革し続けます。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。


 2022年(令和4年)1月4日
                    校長 名和野 新吾
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10月13日 後期始業式 校長メッセージ(生徒の皆さんへ)

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今日から後期が始まります。

前期の終業式で皆さんに次のようなメッセージを送りました。覚えていますか。
「美工作品展が開催されるこの機会をチャンスだと捉え、ぜひ自分自身を見直してください。そして、次なる目標をしっかり考えてください。美工作品展を終えて、また一つ成長した姿になることを期待しています」と。

5日間の作品展を終え、いかがでしたか。皆さんの中には毎日自分の作品と対面しに出かけた人もいると思います。自分の作品と対話したり、他者の作品と対面したりして、何かを考えましたか。ただ「自分の作品が出来て良かった」とか,「あの人の作品は素晴らしいな」とかいう感想ではありません。

先生は大学時代、グループ展を初めてした時、6日間自分の作品と向き合いました。展示した時は、「なんて素晴らしい作品ができたのだろう」と胸を張って,来場者の方に「見てください!」と得意げに説明をしていましたが、毎日ずっと作品と対話していると、時間の経過とともに「なんてつまらない作品なんだろう」と思うようになった記憶があります。「ここが描けてない」「あそこも全然や」と,はじめは表面的なことから始まり,最終日には「なぜ自分が作品を描いているのだろう」「自分が描かなくたって誰も困りはしない」などと思い、一緒に展示している友人の作品や人に嫉妬してしまうこともありました。でも,「すべては自分の決めた結果だ。しっかり受け止めよう。」と考えることにし,誰かに責任を転嫁することを止めました。

先生は日本画という分野で作品制作をし、発表してきました。それぞれの分野や個々によって作品制作の動機や内容は違いますが、成果物である作品を通して自分が透けて見えるということが大切だと思います。自分の不甲斐なさや、考えの甘さ、技量の無さが作品を通して見えてきます。このことを受け止め,認めることは簡単にはできないわけです。しかし、自分のできないところを認めなければ、次の段階に進めないんですね。

本当に苦しいけど受け入れざるを得ません。でもここを乗り越えた人だけが,次の違う景色を見ることができます。それはその人だけに与えられたご褒美。ぜひ、皆さんには今とは次元の違う世界の景色を見て欲しいと願っています。そして創作活動を通じて成長し続けてください。

もう一つ,皆さんはまだまだいろいろなことを学んでいる高校生です。美工作品展は,学んだ区切りとしての一つの成果です。その成果に対して,いろいろな人に講評を聞いてください。家族の方や友人はもとより,毎日のように皆さんの傍にいる本校の先生方がここにいます。作品制作を担当している先生だけではなく,他専攻の先生や普通教科の先生にも,ぜひ講評してもらってください。多様な見方や考え方があることを知ったうえで,また創作に活かしていってください。今まで気づかなかった自分の強みが,分かるかもしれません。

最後に始業式にあたり,このメッセージを皆さんに送ります。
皆さんは「型破り」という言葉を知っていると思います。歌舞伎の世界で、こんな言葉があります。「型のある人が型を破ることを『型破り』といい、型のない人が型を破ることを『型なし』という」。簡単に言えば、「型なし」とは基本がないもの、「型破り」とは基本をわきまえた上でそこから独自性を導き出したもの、ということになります。一見すると、どちらも自由奔放で同じように見えますが,実体は似て非なるものです。

皆さんは,今,創造したものを作品にしています。これからも作品作りは続けていくことでしょう。何か新しい表現を思いついたり、更なる改善点を思いついたり、現状の問題点を発見して解決策を探るにも,基本が身についていないと気が付くことができません。
1年生から「感じる力」「考える力」「表現する力」を,美術の授業のみならず,普通教科授業をはじめ,いろいろな場面で身につけていますよね。その基礎基本となる「型」をしっかり身につけることは,重要なことです。その上で「型」は破るものではなく,「型」に収まらなくなった時に初めて破るものだと,先生は考えています。その時,今までなかったような創作や表現が生まれると信じています。ただし,ほんの一握りの天才といわれる人は,はじめから型破りなのかもしれませんが。

「美術は自由だ」と言われます。ただ「自由」をはき違え,基礎基本もなく,好きなことをすることがすごいことではないのです。「型」を学んだうえで,「型」からはみ出した人が自由になれるのではないかと思っています。
皆さんはどのように考えますか。ぜひ作品制作を振り返って考えてみてください。そして,ぜひ校長室までその意見を届けてください。待っています。

令和3年(2021)10月13日        
                        校長 名和野新吾

10月4日 前期終業式 校長メッセージ(生徒の皆さんへ)

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●前期終業式 校長メッセージ

前期の締めくくりの日となりました。4月8日の入学式、始業式からスタートし、今日で6ヶ月が経とうとしています。
今年も昨年同様、年度当初、始業式において新型コロナウィルス感染防止対策のお願いを皆さんにさせていただきましたが、半年たった今でもお願いし続けなければならない状況です。緊急事態宣言は解除されましたが、今後もこれまでと同様に感染予防対策をお願いし続けなければなりません。大変なことではありますが、教職員とともに何とか乗り切っていきましょう。よろしくお願いします。

さて、この半年間、コロナ禍の中で体育祭の中止、団体鑑賞や宿泊行事などの延期等が決定され、本校で大事にしている教育活動が通常通り実施できず、皆さんにはずいぶん心配や苦労をかけています。その様な中で唯一、昨年度実施できなかった文化祭が開催でき、皆さんの若さ溢れる力強い演技に心を打たれました。コロナ禍でいろいろな制限が設けられた中で、短期間で集中して創作したクラス劇のクオリティの高さには、本当に感動しました。これが美工生の強さだと改めて思いました。

そして、本日、美工作品展の搬入日を迎え、明後日から展覧会が京都市京セラ美術館で開催できることになり、ホッとしています。美工作品展はこの銅駝の地に独立開校して以来42回目となり、毎年、保護者の方も含め多くの市民の方に鑑賞いただいています。

皆さんが苦悩や葛藤しながら長い時間をかけて制作してきた成果、努力や挑戦をしてきたその到達点を多くの人が鑑賞してくださいます。コロナ感染防止対策への対応や時間的な制限下での学校生活は、精神的にとても苦しく、それらのストレスが否応なしに皆さんを苦しめたことだと思います。そのような環境であったにもかかわらず、負けずに皆さんが作品制作に向き合い、授業の中で精一杯力を注いだ作品に美術館で出会えることが、本当に嬉しく、楽しみでもあります。皆さんもぜひ仲間の作品を丁寧に鑑賞してください。

最後に、本日で前期が終わります。皆さん各自がたてた目標は達成できましたか?または、順調に進んでいますか?一度振り返ってみてください。私もそうですが、日々のやらなければいけないことに追われていると、目標を忘れ、ただ時間だけが過ぎてしまうということになってしまいます。私も皆さんも1日24時間、平等に時間を持っています。この時間をどれだけ有効に使うことができるか、日々の積み重ねが1か月後、半年後、1年後の自分の姿となります。「毎日がとても楽しい」という思いをもって過ごしていることは嬉しいことですが、決して流されないようにしてください。

明日から7日間、秋休みに入り,美工作品展も開催されるこの機会をチャンスだと捉え、ぜひ自分自身を見直してください。そして、次なる目標をしっかり考えてください。美工作品展を終えて、また一つ成長した姿になることを期待して挨拶の言葉とします。

令和3年(2021)10月4日
                        校長 名和野新吾

美工創立140周年記念式典 校長式辞

式  辞

本日は、美工創立一四〇周年記念式典の開催にあたり、京都市長 門川大作 様、京都市教育長 稲田新吾 様をはじめ、同窓会や保護者、地域の皆様、そして日頃から本校を御支援いただいている多くの関係者の皆様に、ご出席を賜わり、学校を代表いたしまして、厚く御礼申しあげます。 

本校は、明治十三年に我が国初の公立美術学校となる「京都府画学校」として、京都御苑内に創立しました。その後、幾つかの校地・校名等の変遷を経て、戦後の昭和二十四年に学制改編に伴い、日吉ケ丘高等学校美術課程となり、そこで約三十年間普通科と併設した形で美術教育がなされていました。そして昭和五十五年、教職員や同窓会の悲願でもあった美工の独立開校が決定し、現在の銅駝美術工芸高等学校が開校。早いもので、銅駝地域の皆様に御支援いただきながら昨年度で独立開校して四十年を迎えました。

長きにわたり本校が存続できたのも、歴代校長をはじめとする諸先生方の熱心な御指導はもとより、本日ご列席の多くの皆様の御支援・御協力の賜と深く敬意を表すとともに感謝申し上げます。

さて、本校の卒業生数は、創立から累計で約八六〇〇名となり、これまで文化勲章受賞者八人をはじめ、多くの卒業生が国内外の美術工芸界や産業界の牽引役として御活躍をされており、京都だけでなく我が国の文化芸術の発展に少なからず貢献をされてきたものと認識しております。

本校の教育は今、大きな転換期を迎えています。予測不可能な時代が訪れる中、アートの重要性は高まっており、生徒たちにはゼロからイチを生み出すクリエイティブな力や自ら課題を見出し、その解決を図る力など、時代の変化に対応した様々な力を育成しなければなりません。しかし、どれだけ社会状況が変化しても、決して変わらないものがこの学校にはあります。

入学時は、ただ絵を描くことが好き、ものづくりが好きということでこの学校に集った生徒たちは、卒業時には見違えるほど大きく成長をして巣立っていきます。作品制作することは、自分との対話であり、そこには甘えが許されません。完成した作品を前に、その完成度の低さに呆然とし、自分の不甲斐なさに涙することも多々あります。そんな時、同じ志を持つ仲間がここには多くいます。皆さんと同じ経験をしてきた教員がそばにいます。仲間と切磋琢磨し、ともに高め合う文化がここにはあるのです。

こうした良き伝統をしっかりと継承・発展させながら、令和五年四月には、同じ起源を持つ京都市立芸術大学とともに京都の玄関口に移転し、文化芸術の創造の新拠点として、移転先地域に「文化芸術都市・京都」の新たなシンボルゾーンを創生する、その一翼を担ってまいりたいと決意を新たにしています。

結びに、教職員および生徒一同、本日のこの感激をあらたに、これから後も、これまで以上に頑張っていきたいと思っております。創立一四〇周年という節目を機に、将来に向かって、さらに充実した実績を積み上げてまいります。

本日ご列席の来賓の皆さま方、今後とも何卒ご協力、ご指導のほどをお願い申し上げ、式辞の言葉といたします。 

 令和三年七月十日

 京都市立銅駝美術工芸高等学校長 名和野新吾


校長メッセージ −まん延防止等重点措置を受けて−

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 生徒の皆さんも報道等で知っていると思いますが,今週月曜日に京都市に「まん延防止等重点措置」は発令されました。
 このことを受けて,学校では感染拡大を抑え,教育活動を保障・継続するために,感染防止対策をより一層徹底し,まん延防止等重点措置期間終了の5月5日まで,次のような対応をとります。

1.緊急事態宣言が解除されてから,本校で感染防止のため行ってきた対策は引き続き実施します。

 特に,気になっていることを2件お願いしたいと思います。

 1件目は昼食時です。
 ・HR教室等で昼食をとる場合は,対面での食事はぜひ前を向いてとり
  ましょう。
 ・グランド等で昼食をとる場合は,ベンチは2人掛けとし,ベンチを移
  動させて,向き合っての食事はしないでください。
 ・もちろん食事をしながら会話はしないでください。

 2件目はマスク着用にあたっての件です。
 ・マスク着用については皆さんに協力していただいているところです
  が,着用していても鼻マスクやあごマスクをして会話をしている人
  を見かけます。ぜひ正しく着用してください。
  もし,マスク着用が困難な場合は,担任や担当教員に相談してくだ
  さい。

 以上よろしくお願いいたします。

2.16日から授業が始まりますが,緊急事態宣言時の対応までとはなりませんが,長時間にわたるグループワークやペアワーク,一斉に大きな声で話す活動は中止とします。
 その他の対策については,各教科の先生に,学校としての方向性や考えをお伝えしていますので,担当する教科等の先生の指示に従ってください。

3.校外活動については,不特定多数の人と接触する,感染リスクが高いと判断する活動等は中止,もしくは延期とします。
 この観点から,4月20日に予定していました1年美術研修は延期とさせていただきます。
楽しみにしていた行事が延期になりますが,皆さん,理解をお願いします。

4.放課後の部活動や補習等は実施することにしていますが,まん延防止等重点措置期間が終了するまで,完全下校時間を17時40分とします。
 活動終了後は,どこにも立ち寄らず,速やかに自宅に帰るようにしてください。


 その他の教育活動については,担当する教職員の指示に従ってください。

 まん延防止等重点措置期間が終了し,また新型コロナ感染が減り,通常のような教育活動に戻れるようにするには,私たちには何ができるでしょうか。

 教職員もいろいろな工夫をし,取り組んでいきます。

 生徒の皆さんがこの状況をしっかり理解し,一緒に協力して取り組んでいけることを期待し,また,お願いをさせていただきます。

             令和3年4月14日  校長 名和野新吾

始業式 校長より生徒に向けての言葉

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 本日午前中,銅駝美術工芸高校の第42回入学式を行い,91名の新入生を迎えました。また教職員も新しく着任された教職員5名を加えたこのメンバーで第42回目の始業式ということになります。

 昨年2020年度は未曽有の危機的状況での出発となりました。ちょうど1年前のこの日,入学式を終えた午後,2年生,3年生が登校し,始業式を校内放送で行いました。

 始業式では前校長から,新型コロナウィルス感染症という世界規模で深刻な問題,今まで経験しなかった問題に直面し,医療の専門家はもちろん,様々な人が知恵と力と心を結集して日々精一杯の対応をしている,感染の拡大の面からも感染の防止の面からも人は見知らぬ人とつながっている,かけがえのない自分は,やはりかけがえのない誰かとつながっていることを認識し,ともに考え,それぞれができること行動していきましょう,と呼びかけました。覚えていますか。

 その新型コロナウイルス感染症は,世界的にまだまだ油断できない状況にあります。感染症が拡大する前の当たり前の学校生活に戻れる日が来るのかは,予想すらできません。皆さんには本当に1年間我慢と協力をしてもらいましたが,その日々がまだまだ続きます。このような中でも皆さんと共に考え,学校生活が実り多いものになるように教職員もサポートしていきますので,予防対策をしっかりしてなんとか無事に乗り切りましょう。

 さて,3月に卒業生を送り出し,寂しくなっていた校内は本日から新入生を迎え,また活気のある学校となることでしょう。4月は新しい出会いが多くある時です。また自分の立ち位置も変わる時です。そういう私も,この場所で皆さんに校長としてお話をしていること自体,大変な変化です。

 校長として初めて,皆さんにメッセージを送りたいと思います。

 2024年に作り変えられる新紙幣の一万円札の肖像となる渋沢栄一という人がいます。彼は,「日本資本主義の父」と言われ,明治から昭和にかけて何百という会社を設立し,日本の近代化に大きく貢献した人物です。その渋沢栄一が残した言葉に『夢七訓』というものがあります。そこには,「夢」 を持つことが大切な理由が示されています。

 夢なき者は 理想なし
 理想なき者は 信念なし
 信念なき者は 計画なし
 計画なき者は 実行なし
 実行なき者は 成果なし
 成果なき者は 幸福なし
 ゆえに幸福を求むる者は 夢なかるべからず

 簡単に言うと,「幸せになりたければ,夢を持つこと,夢があれば,それを実現しようと考え,知恵を絞って頑張り抜くことができる」と言うことです。

 皆さんは,ものつくりや絵を描くのが好きで,もっと専門的に学びたいと考えて厳しい入学者選抜試験を乗り越えて本校に入学してきたのではないのでしょうか。その時どんな夢を描いて入学してきましたか。「アーティストになりたい」「美術の専門の仕事をやりたい」「デザイナーになりたい」「世の中を変えてみたい」「社会貢献したい」などなど,いろいろな夢があると思います。

 私自身のことを言えば,高校時代からの夢は「絵を描いて有名になること」。高校時代からその夢を追いかけて努力をし続け,数年前まで作家活動をしていました。高校時代に持った夢は今は叶っていませんが,その中で考え経験したことは糧となって今に繋がっているので,渋沢氏がいう「幸福なし」には当てはまらず,とても幸せです。小さい頃に描いた夢を実現できた人だけが素晴らしいのでなく,夢は自分の特性や経験などで変化して当然であり,変わりながら努力し続けるられる人が幸福になるのだと思っています。

 ぜひ皆さんも常に夢を持ち続け,その実現のために精一杯努力を惜しまないでください。失敗しても 何度も立ち上がり「前に踏み出す力」を身につけてください。

 今の社会は先行きが不透明で予測不可能な時代だと言われています。将来皆さんが活躍する社会で必要となる力は,課題を自ら見出し,考え,行動して解決していく力が必要になっています。「夢」,言い換えれば「目標」をもった人の思考や行動は,持っていない人と比べれば大きな違いがあります。高校生活が終わるその日まで,ぜひ夢を持ち続け,学び続けてください。

 勿論,ここにいる教職員は皆さんをサポートしていきます。また,先生たちも「夢」を持っていろいろなことにチャレンジし,皆さんとともに成長していきます。そんな素敵な学校環境を目指し一緒に作っていきましょう。

 令和3年4月8日 前期始業式
                         校長 名和野新吾

第42回入学式 式辞

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 新緑が輝きを増し,すがすがしい春の風が吹き抜けていく今日の佳き日,PTA会長様をはじめ,平素より本校にご支援をいただいております美工交友会,京都パレスライオンズクラブ,銅駝自治連合会のご来賓の皆様,そして,京都市教育委員会様,多数の保護者の皆様のご臨席を賜り,令和三年度京都市立銅駝美術工芸高等学校,第四十二回入学式を挙行できますことは,誠に大きな喜びであり本校教職員を代表いたしまして,心よりお礼申し上げます。

 ただ今,九十一名の新入生の入学を許可いたしました。まずは新入生の皆さん,ご入学おめでとうございます。教職員一同,皆さんを大切にお迎えしたいと思います。

 保護者の皆様,本日はお子様のご入学,誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。これからの三年間,教職員一同,力を尽くしてお子様の成長を支援してまいります。ご理解,ご協力を賜わりますようお願い申し上げます。

 本校は,明治十三年,一八八〇年に「京都府画学校」として創立され,今年で一四一年目を迎えます。美術工芸科単独の高校として長い歴史と深い伝統をもつ学校であり,本校を卒業された諸先輩方は,美術界,産業界ほか,各方面で活躍されておられます。そして二〇二三年春には,京都駅東側,京都市立芸術大学に隣接し,本校は新築移転されます。新しい歴史が刻まれることになります。皆さんは,本日,晴れてこの歴史と伝統のある学校の生徒になりました。しっかりとした自覚と誇りをもって,志高く学習に取り組んでください。皆さんは,今,期待と不安の交錯する気持ちでこの場所に臨んでいると思います。入学の時のその新鮮な感覚を大切にし,美術専門高校での第一歩を踏み出してください。

 新入生の皆さんは,中学三年生になった丁度一年前,今までに経験したことのない学習状況におかれました。本校でも入学式は実施したものの,六月までのほぼ二ヶ月間コロナウイルス感染症拡大防止のため,臨時休校を余儀なくされました。その間,通常の学習ができず,予定されていた行事なども中止や延期となりました。中学校でも同じような状況であったと推測いたします。そのような中で中学三年生として過ごし,本校受検を目指し各自が本当に多くの不安の中,多くの方に支えられながら,自ら考え,行動した結果としてここにいることは,素晴らしく褒め称えることだと考えます。この一年間に培った力はきっと将来の自分の宝となると確信しています。

 校長として,これからここで過ごす三年間の目指してほしい目標を示したいと思います。

 二〇二五年の大阪・関西万博のプロデューサーで「現代の魔法使い」とも称されるメディアアーティストの落合陽一さんは,その著書『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書 』の中で,未来の予測がなかなかつかない社会で,大きく価値観が変わる“人生100年時代”といわれている現代に「社会で生き残り続けられるには」の問いに対して,「ずっと続けていられるような好きなことを仕事にすること」だと述べています。つまり高いモチベーションを維持しながら働ける人は,他の人にはないオリジナリティを発揮できるため,これからの社会で生き残り続けるという意味です。続けて彼は,好きなことを仕事にする以前に必要なのは,ストレスと感じずに「やりたいことをやる能力」であるとも述べています。

 皆さんはここ銅駝美工に入学したいと考えた第一の動機は,ものづくりが好きだから,絵を描くのが好きだから,それを思いっきり高校からやってみたいと思ったからではないでしょうか。好きなことを好きなだけできることは,高いモチベーションを保ちながら学び続けられるということです。だからこそ,本校を卒業した先輩方は,各方面で活躍をしているのだと思います。

 また,彼はこうも述べています。「誰かに教えてもらわなくても自分の頭で考えられることが,二十一世紀を生きる人たちには求められている」と。そのためには学び続ける力,考え続ける力が必要不可欠になります。この学校にいる間にやってみたいことに挑戦し続け,試行錯誤を繰り返してください。

 「観て」,「感じて」,「考えて」,「表現する」。美工での学びがこの言葉に集約されています。最後の「表現する」という言葉は作品作りだけを指し示しているわけではありません。言語や身体などによる表現活動も入っていることも忘れないでください。

 ただし皆さんにお願いしたいことがあります。好きなことはとことんやるが,興味関心のないものは全くやらないという生徒をよく見かけます。それでは思考するための基礎力や学ぶための方法論などが全く身に付きません。授業における教科学習や行事やクラブ活動などの特別活動における経験や学びも,しっかりと取り組んでください。その中で,今までに知らなかったことに出会い,知識や経験を得てください。

 結びに,皆さんは一人ひとりかけがえのない存在です。そしてかけがえのない生徒二七〇名がこの学校で学びます。学校は,自分とは異なる多様な他者を知るところ。多様な他者を発見するところです。かけがえのない自分とかけがえのない他者の,存在と自由を共に認め合う,高めあうことを学んでください。

 今,私たちはこれまで経験しなかったような社会状況の中にいます。人工頭脳AIが発達し,人間が時間をかけて考えなくても素早く答えが出せる時代でありながら,簡単に解決できない問題に直面しています。「学校とは何か,学校でできることは何か,学校でこそするべきことは何か」ということも問われています。私は子どもが学ぶ学校は「希望を創るところ」でありたいと考えています。今日から始まる銅駝美工での三年間,本校が「希望を創るところ」になるよう,皆さんとともに心を通わせ力を重ねていきたい,そのことを呼びかけ,式辞といたします。

 令和三年四月八日

        京都市立銅駝美術工芸高等学校長  名和野 新吾

校長着任のご挨拶

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 この度、京都市立銅駝美術工芸高等学校長として着任いたしました、名和野新吾と申します。私自身本校で長年日本画専攻の教員として教鞭を取り、5年前に教頭となり今に至ります。その間、学校改革や授業改革など多くのプロジェクトに取り組ませていただいた経験を持ちます。着任にあたりまして、皆様に一言ご挨拶申し上げます。

 本校は、明治13年(1880年)に、日本最初の画学校「京都府画学校」として京都御苑内に創立しました。明治22年(1889年)には京都市へ移管され「京都市画学校」と改称、のち「京都市美術工芸学校」、「京都市立美術工芸高校」と改め、戦後昭和24年(1949年)には「京都市立日吉ケ丘高等学校美術課程」として設置されることになりました。そして昭和55年(1980年)には、美術工芸単独の専門学校「京都市立銅駝美術工芸高等学校」として現在の地で新たなスタートを切りました。この地に根ざしてはや42年目となります。昨年京都府画学校が創立されて140周年を迎えました。そして、令和5年4月には、京都駅東側に新築移転し、「新美工」としてスタートします。

 この長い歴史の中で、本校はすぐれた作家を次々輩出してまいりました。また、美術工芸界にとどまらず多くの分野で活躍してる方々もおられます。そのような伝統を胸に、生徒たちはその諸先輩方に負けじと、好きな美術・工芸・デザイン分野の専攻実習や造形表現をするための基礎力を一生懸命学びながら、将来必要となる力を身につけています。多感な10代に同じ志を持つ生徒が集い、この学舎で過ごす日々はかけがえのないものとなっています。そして、多くの生徒たちが上級学校へと進み、より高度な専門性やあらゆる状況に適応する柔軟な力を身につけ、社会で活躍できる学校となっています。

 私たち教職員は、ひとりひとりの生徒の個性や感性を大切にしながら、生徒の力をしっかり引き出し、可能性を広げて21世紀に活躍する青年の成長を丁寧に支援してまいります。

 2年後の春、新築・移転しますが、移転の地も現校地と同じように四季折々の風情が感じることのできる東山が望める鴨川のほとりとなります。今年度から移転のための準備室が校内に開設され、新しい学校のグランドビジョンを構築し、新天地で再び50年、100年と続く美術専門の高校としての学校作りを行なっていきます。

 保護者、諸先輩方、市民の皆様、各方面からのご理解とご支援を、今後ともどうかよろしくお願いいたします。

令和3年4月1日    
                       校長 名和野新吾
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