京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/06/10
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本校は 自由快活な校風のもとで 多様性を尊重し共に高め合い 美の精神をもって広く社会に貢献できる 高い理想をもった創造性豊かな自立した青年を育成します

第40回卒業式 式辞

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               式 辞

 早春の輝く光が鴨川の水面にあたり、新しい季節が始まる息づかいを感じる今日の佳き日、3年生の巣立ちの日となりました。

 本日、京都市教育委員会をはじめ、PTA役員の皆様、並びに平素よりご支援をいただいております美工交友会、京都パレスライオンズクラブ、銅駝自治連合会よりお越しくださいましたご来賓の皆様、そして多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、第40回京都市立銅駝美術工芸高等学校卒業式を挙行できますことを、心より感謝し、教職員を代表いたしましてお礼申し上げます。

 先ほど84名の生徒の皆さんに、卒業証書を授与いたしました。卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。美術専門高校での3年間の学びを全うし、ここに晴れて卒業の日を迎えられたこと、心よりお祝いいたします。保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様は本校で確かな力を身につけられ、立派に成長されました。この3年間、本校の教育活動に深いご理解と温かいご協力を賜りましたこと、高い所からではございますが厚くお礼申し上げます。

 さて卒業生の皆さん。皆さんは明治13年、1880年に創立された京都府画学校以来140年の歴史と伝統をもつ美術学校の卒業生として、社会に巣立ちます。その誇りと大きな志をもって、それぞれの新しい道を歩み始めてください。

 今年は東京でオリンピックが開催される年。今回の東京オリンピックでは、国内外で活躍するアーティストが制作したオリンピック12作品、パラリンピック8作品が公式ポスターとなっています。作者は画家、漫画家、書家、写真家、美術家、グラフィックデザイナーなど多様で、国際性や多様性、伝統や革新、継承、前進、挑戦など現代における様々なテーマを込めた作品となっています。スポーツの祭典とつながったアート作品は、現代社会について問いを立て、これからの方向性を探るメッセージを発しているのです。

 私たちは、今、大きな社会の変革期にいます。「予測不可能」な時代、変化のスピードはこれまでと比べものにならないと言われています。高度に情報化・自動化が進んだ「Society5.0超スマート社会」と言われる時代は、人工知能AIが発達し、人間の様々な活動をAIがとってかわり、人間が調べたり、考えなくても最適解を出してくれる時代。しかし、人が考えなくてもよい、できなくてもよい、答えを待てばよい、それで幸福な社会が築けるのかという問題提起もあります。昨年の紅白歌合戦では、昭和の時代に活躍した歌手・美空ひばりさんのアンドロイドが登場し、本人が亡くなって約30年、生前の歌声を学習させたアンドロイドが新曲を披露するという場面がありました。AIによって亡くなった歌手の新曲が聴けるということに驚きの声が上がる一方で、私のように違和感を覚えた人もいました。歌手としての人生を生きてきたその人自身が、思いと感情をこめて、体から湧き出る声で言の葉一つ一つを、曲にのせて人に届ける、それが美空ひばりさんの歌ではないのか。AIによってこれまで不可能であったことが可能になり、社会課題が解決することに期待しつつ、AIでは不可能なことがあることを忘れてはなりません。

 プランニングディレクターの西村佳哲(にしむら・よしあき)氏は、もの作りに関わる人を訪問し、働き方について考えたことを『自分の仕事をつくる』という書物に著しています。服飾デザイナーのアトリエを訪ねた際、壁面が小さな引き出しで埋め尽くされていて、世界中から集めてきた布や糸が色別に納められていたそうです。素人目には同じ色にも見えかねない繊細な色味を見分けながら制作するデザイナーのものづくりの姿勢を紹介しています。また、グラフィックデザイナーで1ミリの間に十本の線を引ける人を取り上げ、コンピューターなら簡単なことであっても自分の手でやるためには、呼吸の刻み方、集中力、身体全体の骨と筋肉の制御、中心の取り方など高度な身体感覚が必要で、身体に刻み込まれた美意識に尊い価値がある、と述べています。

 卒業する皆さんに、まず伝えたいこと、それは、皆さんが、本校で磨いた五感で感じること、「観る、感じる、考える、表現する」ことで鍛えられた皆さんの豊かな力を、これから大いに発揮するとともに、その営みをしっかり継続してほしいということです。

 武蔵野美術大学の板東孝明教授と深澤直人教授が書かれた『ホスピタルギャラリー』という書物を読みました。徳島大学付属病院の院長から、患者や見舞客、病院職員のことを考えた環境を病院内につくりたいという依頼を受け、それを実現した経緯が書かれています。わずか数10秒で通り過ぎる10メートル足らずの空間。壁面だけに作品を飾るのではなく、空間そのものをギャラリーにする。「様々な人の気持ちに深くかかわりすぎず、しかも愛があって、決して強い主張のあるものではなく、できるだけニュートラルな自分の気持ちをシンクロしたいときだけ響いていくようなそんなアートを持ち込むギャラリーに変えたい」、そう考えた教授は、武蔵野美術大学の形態論を学ぶ学生の作品を展示しました。「針金で描く日常」というテーマでは、針金でインスタントラーメンや漫画本が造形され、「手」というテーマでは、ミカンの皮や葉っぱの葉脈を使って「手の本質」に迫る作品が並ぶ。ギャラリーを鑑賞した人のコメントを読むと、学生の観察、感性、思考の中から生まれた作品が人の心を揺さぶり、気持ちを変容させてエネルギーを生み出させている、そのことがわかります。アートの営みは、作品ができた時に完結するのではなく、テーマを立て制作している間も、完成した作品を他者が鑑賞したり、受けとめてからも力を持ち続けます。

 東京芸術大学美術館長の秋元雄史(あきもと・ゆうじ)氏は、『アート思考』という書物の中で、アーティストは、「炭鉱のカナリア」のように、まだ多くの人が見えていないものをいち早くその目で見て、聞こえていないことを聞きながら言語としては表現しようのないものを形やイメージに置き換えて伝えている、今後はそうしたアーティストのような思考法が新しい価値を生み出し世界を変えていく原動力になる、と述べています。

 私は、皆さんが制作した作品を通じて、色やカタチについてもっていた固定観念を覆されたり、普段意識していなかった視点について多くのことを教えてもらいました。皆さんがものをしっかり観察し、自己について、人について、社会について深く思考し、対話し、創作してきた姿は輝いていました。本校での学びを通して、その様に頼もしく成長した皆さんは、本校の誇りです。これからの予測不可能な社会は、答えを待つ、探すというよりもまずは問いを立てる力、その問いと向き合い人と対話し、粘り強く人だからこそ可能な解決策を導きだしていく力が求められます。いよいよ卒業です。未来に希望を創りだす担い手として、皆さんの力と可能性に大いに期待し、式辞といたします。


令和2年2月28日

           京都市立銅駝美術工芸高等学校長 吉田 功

2020年 新年のご挨拶

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             新年のご挨拶

 2020年を迎えました。皆様、新年おめでとうございます。

 今年は東京オリンピックが開催されます。東京オリンピック「東京2020」では、大会ビジョンとして「スポーツには世界と未来を変える力がある」と唱われています。コンセプトとして「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」。そして、「東京2020」のエンブレムは、江戸時代に広まった市松模様をもとにつくられたデザイン。組織委員会が制作したコンセプトムービーでは、
「3つの異なる四角形は、多様性を表しています。みんなちがうから、おもしろい。みんなちがうけれど、つながれる。互いに認め合い、支え合いながら、ひとつになる時がやって来ます。同じ形、同じ数の四角形でつくられるふたつのエンブレム。それは、すべてが平等である証。障がいの有無を越えて、あらゆる障壁を越えて、人と人がつながってゆきます。スポーツの感動は、スポーツの興奮は、世界中誰もが共有できる。世界中みんなをひとつにする。新しい未来は、きっと、ここから生まれます。」
とナレーションで語られています。

 そしてこれからの社会を考えていく上で、たいへん重要な「持続可能性」「SDGs」についても、「東京2020」では「Be better, together より良い未来へ、ともに進もう」をコンセプトにし、持続可能な社会の実現に向けて、課題解決のモデルを国内外に示していくとしています。

 日本でオリンピックが開催されたのは1964年、当時私は4歳でした。ようやく我が家にも登場した白黒テレビで聖火リレーを観ていたと親に言われましたが全く記憶にありません。その頃日本は高度経済成長の時代。敗戦からの復興をアピールする東京オリンピックは、高速道路や新幹線開通など政府も企業も大きな歳出と投資、モノの創出とそれを社会に普及させることに邁進していた時代に開催されました。50年以上経った今日、多様性、ダイバシティーやインクルージョン、持続可能性というようなワードが、未来に向けて重要な鍵となるようになって隔世の感があります。一方、オリンピック憲章には、「スポーツを文化と教育と融合させる」と言うことが掲げられており、「東京2020」を機会に文化や芸術のイベントも開催されます。文化、芸術や、教育と融合したスポーツの祭典に期待したいと思います。

 本校は、今年2020年に創立140周年記念式典及び記念事業を行います。歴史と伝統のある美術専門高校としてその重みをしっかり受け止めつつ、多様性や持続可能性を外せない未来社会において、アートの力、アートで学んだ力が不可欠であることをあらためて確認したいと思います。そして、2023年の京都駅東部崇仁地区への新築移転を前に、未来性のある教育活動を一層充実させ、生徒、保護者、市民の皆様の信頼と期待を寄せていただく学校づくりを進めて参ります。

 本年も本校教育活動へのご理解、ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

2020年1月1日
                     校長  吉田 功

校長室ウェブログを更新しました。12月22日記事「ゆく年に」

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 12月22日、校長室ウェブログの記事を更新しました。

 こちらから→12月22日校長室ウェブログ

12月22日 校長室ウェブログ  「ゆく年に」

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               ゆく年に

 学校が東山を望む鴨川のそばにあるので、銅駝の一年は、四季の変化を五感で感じる毎日です。寒椿1月、水仙2月、梅3月、桜花4月、藤5月、紫陽花6月、万緑7月、向日葵8月、牡丹9月、ススキ10月、銀杏11月、水鳥12月。学校や鴨川周辺は季節によって風景が変わり鴨川の水音も変わります。昼間は、空や雲の色や高さ、夜に東山を見れば、春のおぼろ月や夏の大文字送り火、秋の十五夜、透明感のある冬の月など、感性を刺激されるものに囲まれています。毎年同じ頃に同じものを見て一年の速さを感じつつも決して去年と同じものに見えないのは、学校という場所で生徒の成長に関わる日々だからだろうと思っています。季節と向き合い、季節を受け入れ、季節から様々なものを享受してきた今年も、あと1週間ほどとなりました。

 ひとの力で制御できない台風や豪雨。10月の台風19号の猛威で大きな被害が出ました。報道によれば被害の大きかった宮城県丸森町で、仮設住宅の入居が始まったのは昨日21日。災害発生から2ヶ月以上も待っての入居です。大切な人を亡くした人や、家だけでなく農作物・家畜などを失った人、悲しみの中で現在も落ち着いた生活をおくれない被災者がおられます。最近は、台風や豪雨の予報が早くから出され、事前に対策や避難をするようになりました。しかし、7月に発生した京都アニメーション放火事件のように、突然事件に巻き込まれて命が奪われるような悲惨な事件もありました。新元号「令和」、新天皇即位、ラグビーワールドカップの日本チームの活躍、ノーベル化学賞受賞など祝賀や気持ちの高揚する出来事とともに、厳しく哀しい出来事も心にとどめておきたいと思います。

 10月31日の沖縄首里城の焼失もショッキングな出来事でした。首里城のすぐそばにある沖縄県立芸術大学には毎年本校から進学する生徒がいます。いたたまれない気持ちをFacebookに投稿している卒業生がいました。「沖芸」で学んでいる卒業生の保護者からお話を聞く機会がありました。実は「沖芸」の大学祭は11月2日・3日に予定されておりほぼ準備ができていたそうですが、その直前の31日に首里城が火災、焼失となり、「沖芸」の大学祭は中止になりました。首里城焼失という哀しい出来事と大学祭の中止。「沖芸」の学生のショックはいかばかりかと推察します。しかし、沖縄の人たちは、地元の様々な場所や機会を提供して、学生が準備していたものをできる限り実行させてあげようと動かれたそうです。そして大学祭を見るために沖縄を訪問されていた卒業生の保護者に対し、沖縄の人たちは「せっかく沖縄にきてくれたのに首里城がこんな姿になってごめんね」と謝られたそうです。琉球・沖縄の歴史からすれば首里城は沖縄の人たちにとって特別な存在で心の拠り所です。沖縄の人たちが首里城を、そして地元の大学や学生を愛して支えている気持ち、観光客へも優しさと温かさをもって接する心の深さに頭が下がります。

 本校の校地は、明治初年、全国に先駆けて地元の人々の力で建設された上京第三十一番組小学校、銅駝尋常小学校、銅駝中学校と引き継がれてきた場所です。今年、地元では、銅駝校創設150周年記念式典が開催されました。私も出席させていただき、銅駝尋常小学校、銅駝中学校時代の貴重な資料を見せていただいたり、同校を卒業された方のお話を聞きました。学校は子どもが学ぶところというだけでなく、地域のシンボルであり、心のよりどころとなっているのです。日吉ヶ丘高校美術課程からこの校地に移転してきた私たちの学校も地域の人々から温かい思いを寄せていただき支えていただいている、あらためてそう思いました。

 さて皆さんにとって今年はどのような年だったでしょう。「ゆく年2019年」の様々な出来事を振り返りながら、「くる年2020年」の安寧を祈ります。


2019年12月22日 
                     校長  吉田 功

10月16日 後期終業式 校長の話

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●2019年10月16日(水)後期始業式

 今日から後期が始まります。中学校も高校も一時期に比べると2期制をとっている学校は少なくなりました。本校では、ついこのあいだ前期終業式を行い、秋季休業期間中に美工作品展「3年生展」があったので、学期が変わる新鮮さはあまり感じていないかもしれませんが、銅駝の教育にとってはこの2期制がうまく機能し、銅駝ならではの教育活動ができていると考えています。

 まずは「3年生展」お疲れ様でした。たくさんの方が来場してくださり、皆さんの作品をほめていただき、銅駝の教育に深いご理解と温かい激励をいただきました。来場者アンケートに書いていただいたコメントを少し紹介します。「懐かしさより新鮮さのほうが大きく勝りました」卒業生より。「こんな作品が作れる皆さんを尊敬します」保護者の方より。「3年間の過ごされた時間を感じさせるものでした」卒業生の保護者の方より。「生徒の皆さんの瑞々しい感性に触れ、とても楽しい空間、時間でした」教育関係者の方より。「Fantastic! Very amazing art works and well displayed!」外国人の方より。そして「ドレスのきれいなところがよかった」通りがかりの6歳児の方より。そして受付を担当した生徒の笑顔の挨拶、丁寧な対応など高く評価していただいきました。一方でいくつか課題もいただいています。銅駝の生徒は、感じたこと考えたことを作品として表現できることの尊さとともに、作品が人の心を動かし、影響を与えることの重さを理解できる青年ばかりだと信じています。ならば、作者として、作品展の主催者として、その作品を鑑賞していただく方々に敬意と感謝の気持ちで行動できなければなりません。明日から「1・2年生展」が始まります。あらためてすべての学年の生徒がしっかりとした自覚と誇りをもって作品展に関わってください。

 さて、明後日の午後進路講演会があり、銅駝の先輩で漫画家として活躍されている小山宙哉さんが講演をしてくださいます。小山さんの作品、漫画『宇宙兄弟』には様々な心に残るセリフがあり、ネット上でも紹介されています。第5巻、宇宙飛行士の候補者選考のミッションの終わりに、グループの中から自分たちで候補者を選ばなければならなくなった時に主人公の南波六太が言ったセリフ。「グーみたいな奴がいて、チョキみたいな奴もいて、パーみたいな奴もいる、誰が一番強いか答えを知っている奴はいるか」。このセリフ、人はそれぞれ個性があり、秀でたところがあり、苦手なこともある。それぞれ苦しみ悩みながら努力し取り組んでいることがある。だから誰が一番優れているかなんで簡単に決められない、ということだろうと思います。

 後期初めにあたり、私が皆さんにお話ししたいこと。社会には様々な評価の基準や方法があり様々なランキングで溢れています。一つの側面をある基準で評価をつけるということは自己の課題の見極めと次の目標を立てる上では必要ですが、ゴールした時の結果を一つのものさしやランキングだけで評価してはいけません。自分や他者の評価をもっと多様な尺度で測るべきです。そして評価することの前に、まずは広く様々なものに興味をもって、自ら手に取ったり、参加をしたり、出会いをたくさんつくって、主体的にやってみることです。うまくいかなければやり直したり、別の方法を考えればよい。そんな気持ちをもって後期のスタートをきってください。

2019年10月16日 後期始業式
                         校長  吉田 功   

10月7日 前期終業式 校長の話

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●前期終業式 校長の話


 前期の締めくくりの日となりました。4月8日の入学式、始業式からスタートし、今日10月7日でちょうど6ヶ月経ちました。前期は授業だけでなく、特別活動などの学校行事が多く、また美工作品展に向けた制作にも力を注いできたでしょうし、毎日が盛りだくさんで1日24時間ではとても足りないと感じた人、あるいは、自分の体や心の調子と折り合いをつけるのに苦労した人もいたでしょう。

 時間の刻みは世界中同じで、1分、1秒、1日の長さは平等です。しかしその時間のなかみは平等ではありません。世界の中には、起きている時間のうちの多くの時間を労働をしたり、幼い兄弟の世話をしたり、往復何時間もかけて生きるための水を汲みに行く子どももいます。起きている時間の多くを「学ぶ」ために使えることの重みをあらためて皆さんと一緒に考えたいと思います。このことは、生徒だけでなく、教職員の課題でもあります。同じ1時間、1日がその人にとって豊かなものになるためにどうすればよいか。

 今、学校では、「学び方」を変えるということと「教職員の働き方」を変えるということが大きな課題です。皆さんがこれから求められる必要な力をつけて社会で飛躍できる、そんな学び方に変えていくこと、そして休日出勤や残業が多くて疲弊していると言われている教職員の働き方を変えて、生徒と先生が向き合う時間を確保し、先生の仕事や生活もより良いものにしていくことが大切です。本校では、学び方の改革、働き方の改革を、皆さんや保護者のご理解を得て、少しずつ進めています。

 やらなければならないこと、やってみたいことが多すぎて余裕がないと、よく言います。やらなければならないことを3つの抽斗(ひきだし)に整理するとして、3つの抽斗がぎゅうぎゅうに詰まっていたり、溢れていたりしませんか。睡眠や食事など生活し生きていくために必要なことや、高校生としてやらなければならない学習だけで抽斗が全部詰まっている、あるいは溢れて閉まらない人はいませんか。ぜひ、抽斗をうまく入れ直して整理をし、できれば、一つの抽斗、難しければ3つ目の半分でもスペースをあけておいてください。外からやってくる新しいチャンスや、出会いの機会をとりこむためにそういうスペースをつくっておくことがとても重要で、そのことが今を変え、未来を変えることにつながります。学校では授業以外に、ボランティア活動の募集や、作品の募集などの案内をしています。先週はキャリアアップスタディという新しい学びのチャンスも紹介しました。空けておくスペースは無駄ではなく、むしろ新たな価値を生む大切なスペースです。皆さんの主体的な変革を期待します。

 さて、最後に、まもなく始まる美工作品展のことを話します。皆さんが苦悩や葛藤しながら長い時間をかけて制作してきた成果、努力や挑戦をしてきたその到達点を多くの人が鑑賞してくださいます。私もとても楽しみにしています。皆さんもぜひ自分以外のひとの作品を丁寧に鑑賞してください。そして多くの方が、美工作品展にご来場くださいます。礼儀を守って感謝してお迎えしてください。素晴らしい作品展にしましょう。


令和元年(2019)10月7日
                      校長  吉田 功

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校長室ウェブログを更新しました。10月2日記事「秋の灯」

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 10月2日、校長室ウェブログの記事を更新しました。

 こちらから→10月2日校長室ウェブログ

10月2日 校長室ウェブログ  「秋の灯」

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               秋の灯

 10月2日の京都の日の入りは午後5時40分。秋分を過ぎて日中の時間が短くなり、昏くなるのが早くなってきました。

 今年の美工作品展は、「3年生展」が来週10日(木)から、「1・2年生展」がその1週間後17日(木)から始まります。3年生、2年生は専攻で制作した作品を展示しますが、美工作品展が近づいてくるこの時期は、最後の追い込みの時期。これまで専攻実習の時間で制作を進めてきましたが、前期末考査が終わった10月初めは、放課後の時間も実習室で制作をする生徒が多くいます。午後6時頃、グラウンドに出ると各専攻実習室の灯りが輝き、生徒の姿が見えます。日の入りの時間帯は、実習室の窓の灯りが校舎の昏さの中に輝き美しく映えます。グラウンドを取り囲むように建った趣のある本館、記念棟、実習棟。実習室の明るさが一際目立つこの風景は、毎年少し立ち止まってしまいます。「もう一年経ったなあ」「去年の美工作品展前もこんな風景だった」と思いながら、去年の生徒、去年にあった様々なことを回想します。

 銅駝の教育活動は、専攻の実習だけではなく様々な学びがありますが、1年生の時「造形表現」という科目で8分野の実習をした後、3分野そして2分野と選択をし、いろいろ悩んで決めた1つの専攻。2年生になって、初めて学ぶ技法や画材・道具、難しい課題と向き合いながら力をつけて、秋の作品展に向けて作品を制作する。美術専門高校ならではのこの学びは、生徒を大きく成長させます。私は春から何度か実習室を回って、細切れではありますが、制作の様々な段階を観てきました。生徒の真剣でひたむきな眼差し、時には厳しいあるいは悩んでいる表情も観てきました。直接指導をする美術科の教員でなくても、約半年、生徒の日常の様子も含めて様々な場面を観たり聞いたりしてきたが故に、毎年、作品展の会場に展示される作品をとても楽しみにしています。

 季語には「春の灯」「夏の灯」「秋の灯」「冬の灯」と四季それぞれの「灯」のつく言葉がありますが、「秋の灯」と言う季語は、日常のあるいはこれまでの月日の様々なことを思いながら、自己を振り返ったり、他者に思いをはせたり、どこか懐かしさやものごとの深みを感じる言葉です。

 秋は透明感のある空気が満ちた清々しい季節。そんな季節に「美工作品展」を開催します。3年生・2年生の専攻実習の作品、1年生の「表現基礎」で取り組んだ作品も含めて、美工作品展に並ぶひとつひとつの作品に、生徒ひとりひとりの苦悩や葛藤、努力や挑戦の月日が内在している。学校の「秋の灯」を眼裏(まなうら)におきながら、じっくり鑑賞したいと思っています。


 2019年10月2日
                       校長  吉田 功


校長室ウェブログを更新しました。8月26日記事「ゆく夏に」

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 8月26日、校長室ウェブログの記事を更新しました。

 こちらから→8月25日校長室ウェブログ

8月26日 校長室ウェブログ  「ゆく夏に」

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              ゆく夏に 

 8月16日、本校のグラウンドで恒例の銅駝学区民盆踊り大会が開催されました。今年もたくさんの地域の方々が参加され賑やかな催しとなりました。夜8時前になるとグラウンドの照明を落とし、音楽も止めて大文字点火を待ちました。夜8時、グラウンドから鴨川を挟んで向こうに見える如意ヶ嶽に点火され、美しい「大」の字が夜空に輝きました。五山送り火はお盆に行われる精霊送り。点された火の勢いが時間の経過とともに少しずつ弱まり、鎮火するまでの時間を、京都の人々は、亡くなった人を偲びながらその人との関わりを振り返り、自分の心を静かに整えてきました。

 6年前の8月24日、京都市左京区広河原の「松上げ」を見に行く機会がありました。この行事は、火除けや五穀豊穣を願い、お盆の精霊送りをする伝統行事。長さ20mほどの灯籠木(とろぎ)を立て、先端をめがけて松明が次々投げられ、そのうち先端に火が点いて大きな炎が上がります。そして灯籠木が燃えて倒れたあとは火の粉が夜空に舞い上がります。勇壮な行事を観ながら、私は、炎の先に柔らかさ優しさを感じました。それは精霊送りの炎だったからかもしれません。自分と関わりのあった亡き人との様々な場面を思い出しながら、今の自分、これからの自分を考えさせられる時間となりました。

 「火」は、熱を発し、灯りとなり、ものを変化させる、原始の時代から人はそのお蔭で豊かさや快適さ、安心や安全を手に入れ、祈りや鎮魂という精神面でも支えられてきました。「火」は人間が生存や生活するために、また文化や産業の発達に欠かせないもので、その恩恵はとても大きなものですが、時として存在するものを滅ぼす恐ろしい魔物でもあります。7月18日、京都アニメーションを襲った炎は、まさしく魔物でした。理不尽な悲惨な事件のあと、世界中の人々からメッセージや募金が寄せられ、京都アニメーションが世に送り出した作品、そしてその制作者に対し、哀悼と感謝の思いが重なり、響きあって今も拡散しています。遅ればせながら24日、私は献花台を訪問し変わり果てた建物の前で黙祷をしてきました。世界の人々を魅了する作品を創り出していたクリエーターが益々活躍できたであろう未来を、この場所で一瞬にして断ち切られたという事実。見上げた建物の上に広がる晩夏の空の青さに、無念の思いを一層深くしました。

 30年ほど前、私が弟のようにかわいがっていた当時大学生の従弟は、8月に急病のため他界しました。20歳でした。自分自身が20歳の時に何を考え何をしていたか、従弟が生きることができなかったそのあと30数年という月日を自分はどのように生きてきたか、精霊送りの季節になると考えます。人は、自分のことは自分が一番よくわかっていると思っていますが、他者を通して自分のことを見つめ直す、時には自分の過去を振り返り将来の在り様を考えることが大切だと思っています。結局、自分が生きるためには他者が必要で、その他者は、身内だとか名前がわかる人に限らず、遠く離れた人、一生出会わない人も自分の存在を支えてくれている大切な存在である、そう考えたいのです。

 他者のことを想像する、思いをはせる、思いを巡らすということを、日頃から大事にしたい、そうあらためて考えた夏でした。

2019年8月26日
                        校長  吉田 功


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行事予定
3/11 臨時休業
3/14 新3年コース別説明会は4月に延期
新2年専攻ガイダンスは4月に延期
3/17 入学説明会(実施)

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