京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/08/27
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平成30年度 終業式にあたって

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 私は、毎日、京阪三条から学校まで4つくらいの徒歩のルートの中から、その日その日の気分でチョイスして通っています。今朝は、比較的暖かく、川沿いの道から鴨川の飛び石を渡って学校まで来ました。鴨川の水は久しぶりに透明度が高く、流れも穏やかでした。昨年の台風や豪雨の時は、ものすごい音を立てて茶色い水がうねっていたのを思い返すと、自然は変化が激しく、やはり「生き物」だと思います。

 私は、昨年4月の始業式に、学校は単なる「入れ物」ではなく「生き物」だと言いました。そして生き物だからこそ、学校にも心臓の「鼓動」や「体温」や「息づかい」が必要だ、と言いました。学校は、鉄の冷たい入れ物であってはならないと思います。皆さんにとって、今年1年、銅駝はどんな学校だったでしょうか。

 高校時代は、大人になる準備期間であり、体の成長と心の成長とのバランスやリズムがコントロールしづらい時期でもあります。当たり前ですが、270名の生徒がみんな同じように成長、変化するわけではありません。授業のこと、制作のこと、集団の中での過ごし方、家族のことなどで悩んだり、心配したり、どうしたらいいかもがいたりした人もいるでしょう。自分は人に比べて弱いとかダメだと思って自分を責めた人もいるかもしれません。そういうことはあまりなかった、1年間結構うまくいったという人もいるかもしれませんが、そういうことで心穏やかでなかった人がいることを知っていてほしいと思います。それぞれ、人には見えない葛藤と努力があったはず。みんな1年間よくやってきたと私は思っています。実は、自己の心身のこと、様々な課題について葛藤し、その結果異なる進路を選択して、今ここにいない人もいます。そのような人のことも心にとどめておきたいと思います。

 学校の「鼓動」や「体温」や「息づかい」は、そこで生活する生徒と教職員がどうであるかで左右されます。様々なことに直面した際、自分とどう折り合いをつけるか、悩んだり考えたりすることは大切です。それは自分が変化するチャンスかも知れません。しかし、しんどいこと、受け止めきれないことは決して我慢せず、ごまかさずSOSを発してください。学校は、葛藤している人、不調になっている人がいれば、そのことに気づき、受け止められる環境でなければなりません。

 皆さん、自分の「鼓動」や「体温」や「息づかい」をコントロールすること、折り合いをつけること、ただし、不調なときは我慢せず言葉にして伝えること、そして他の人の「鼓動」や「体温」や「息づかい」を感じられる人になってください。もちろん教職員も皆さんの「鼓動」や「体温」や「息づかい」を感じられるようにしなければならないと思っています。

 あと半月ほどで、新しい1年生が入学してきます。どうしても銅駝に入学したいと志して頑張ってきた新入生を迎えるために、皆さんと一緒に銅駝をそのような学校にしていきたいと思います。


平成30年3月20日

                    校長 吉田 功

1年美術見学旅行に寄せて

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              春の息吹き

 1年前の3月12日は、中学校の卒業式目前で、すでに銅駝への合格が決まっていた皆さんは、中学校卒業から高校入学という大きな節目のまっただ中にいました。早いもので、まもなく一年が経とうとしています。

 1年生の初め、美術入門研修から始まった美術の学びは、総合的な学習の時間「美術探求」で、美とは何か、美術を学ぶとはどういうことかについて探求し、「表現基礎」で美術の基礎基本を学びながら観察力や実技力を養い感性を磨き、「造形表現」で8分野の実習を経験しながら1つの専攻決定に到達しました。そして、1年間の締めくくりとして、3月12日から美術見学旅行に出かけます。これまでの学校の中での、あるいは京都の中での学びから、遠く離れた岡山、香川で3日間美術三昧の学習をします。私たちは、タブレットで何でも検索ができ、調べたことを画像や映像で簡単に見ることができる環境にありますが、実際に現地へ行って、五感をはたらかせて学ぶ経験はかけがえのないものであり、銅駝ならではの研修です。

 岡山と香川は瀬戸内海を挟んで向き合っています。3月は「水温む」「風光る」季節。この時期の瀬戸内は京都よりも暖かく、心洗われるような自然に触れることができます。とりわけ「瀬戸内国際芸術祭」が開かれた直島を中心とする島々は、アートと自然と人とのつながりを考えられる場所です。この芸術祭は、3年に一度開催されており、今年2019年が4回目の開催となります。今回は皆さんが訪問する約1か月後からの開催になりますが、すでに開催に向けて準備が進められており、その息づかいを感じられるのではないでしょうか。

 私は、今年度は京都駅前バスターミナルから手を振って見送る立場ではありますが、これまで2回引率で経験した旅行では、銅駝の生徒が主体的に学ぶ様子、共に過ごす他の人への思いやり、お世話になる方への感謝する姿をみて、誇らしく感心しました。京都を離れる特別な3日間。この3日間の学びと経験、体に吸収した感覚は、その後の美術の学び、制作活動に必ず大きな力となります。素晴らしい研修になることを期待しています。

 それでは、昨年、現地で詠んだ拙句を掲載し、皆さんを送り出したいと思います。


 三月や海でつながる島と島   吉田功

平成30年度 第39回卒業式 式辞

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               式 辞

 風光る3月を迎え、鴨川の明るい水音が学び舎にとどく今日の佳き日、3年生の巣立ちの日となりました。

 本日、京都市教育委員会をはじめ、PTA役員の皆様、並びに平素よりご支援をいただいております美工交友会、京都パレスライオンズクラブ、銅駝自治連合会よりお越しくださいましたご来賓の皆様、そして多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、第39回京都市立銅駝美術工芸高等学校卒業式を挙行できますことを、心より感謝し、教職員を代表いたしましてお礼申し上げます。

 先ほど87名の生徒の皆さんに、卒業証書を授与いたしました。卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。美術専門高校での3年間の学びを全うし、ここに晴れて卒業の日を迎えられたこと、心よりお祝いいたします。

 保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様は本校で確かな力を身に着けられ、立派に成長されました。この3年間、本校の教育活動に深いご理解と温かいご協力を賜りましたこと、高い所からではございますが厚くお礼申し上げます。

 さて卒業生の皆さん。皆さんは明治13年、1880年に創立された京都府画学校以来139年の歴史と伝統をもつ美術学校の卒業生として、社会に巣立ちます。その誇りと大きな志をもって、それぞれの新しい道を歩み始めてください。

 卒業される皆さんに2つのお話をします。皆さんと過ごした月日を思い返すと、私はまず1年生の時の美術見学旅行のことが思い出されます。倉敷の大原美術館、豊島や犬島、直島のアート作品を皆さんがじっと動かず鑑賞しスケッチをする姿、作品から発せられるメッセージを体中で受けとめようとしている姿に心を動かされました。美術専門高校で学ぶ生徒はこれほどまでしっかり美術作品と対面し、対話できるのだと感心しました。瀬戸内海の島々を舞台に2010年から開催されてきた瀬戸内国際芸術祭のテーマは「海の復権」。太古の時代より人々や文化・物資の交通路であり、人間の生活・生命を支えてきた瀬戸内海は、近代以降、産業開発優先による環境破壊やハンセン病の隔離政策、過疎高齢化による地域力の衰退、海の価値の喪失という課題を抱えてきました。芸術祭は、海・島・人に焦点をあて、島それぞれの個性を大切にしながら、アートの力で課題にアプローチし、展望を切り拓く取り組みでした。芸術祭は3年に一度の開催。しかし芸術祭が開催されない年も、今やアートの力が地域にとってなくてはならない基盤となっており、芸術祭の総合ディレクターを務めた北川フラムさんは、アートが「島の灯台」として機能し始めていると述べています。アートが個人の自己表現に留まらず、傷ついたものを癒やし、閉ざされていたものを解放し、失われていくものを復活させて新たな息吹を起こす。そのような、アートが「社会の灯台」となるように、皆さんがそれぞれの新しいステージで実践していってくれることを期待しています。

 2つ目の話。自動車メーカー・マツダで、デザイン部門担当していた前田育男氏の著書『デザインが日本を変える』には、2016年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー賞、デザイン部門賞をタブル受賞した自動車の開発に至る過程が書かれています。それまでマツダでは、デザイン本部と車体の技術製作部門との接点がないシステムでしたが、この時は、デザイナー、エンジニア、生産担当者など各部門のスペシャリストが最初の段階からチームを作って、開発、生産にあたる仕組みに変更したそうです。「理想をつくるために現実を変える」という思考の転換により、閉じていた各部門が共に創る「共創」を生み出したのです。そして近年マツダでは、新潟県燕市の銅器づくりの職人や広島県の漆芸家とのコラボレーションを行っているそうです。最先端の科学技術を結集させた自動車の開発にあたり、一見遠く離れた存在に思われがちな伝統的な日本の美、日本のモノづくりに注目したのです。多くのものの自動化が進む中、「職人たちはモノとの対話をどのように進めているのか」「意識の高い職人と交流を持つことで、自分たちも簡単に車のデザインを作ってはいけない、もっととことんまで魂を込めないと人の心を動かす作品など作れない」そんな心構えで、世界で高く評価される自動車を開発したのです。戦前の物理学者・随筆家の寺田寅彦は、「科学者と芸術家の生命とするところは創作である。他人の芸術の模倣は自分の芸術でないと同様に、他人の研究を繰り返すのみでは科学者の研究ではない。」また、「観察力が科学者・芸術家に必要なことはもちろんであるが、これと同じように創造力も両者に必要なものである」と述べ、相容れないもののように思われている「科学者と芸術家」に、実は共通点があると指摘しています。科学と芸術、最先端技術と伝統の美、このような異なるもの、離れているものに接点を見つけ、対話し協働することで新たな可能性が生まれるのです。アートは、自分だけの閉ざされた世界ではありません。今後ますます人工知能AIが発達し、予測不可能な時代になると言われていますが、アートを学んできた皆さんは、常に問いを持ち、人と対話し、人と協働して社会的課題に向き合ってください。そして、社会から課題というボールを投げられた時にキャッチできる、さらに社会に課題というボールを投げられるような人になってください。

 今年4回目の「瀬戸内国際芸術祭」が開催されます。公式サイトには「この先地球上に人が生きること、展望を持つこと」を考え、「瀬戸内海が地球上のすべての地域の『希望の海』となることを目指す」と書かれています。地図で見れば海の中に散在している島々。皆さんと一緒にアートの島を訪問した私は、海によって島と島とが離れ離れになっているのではなく、海が、そしてアートが島と島との繋がりをつくっている、という感覚をもちました。離れているものはそのまま孤立しているのではなく、アートの視点や力によって、独自性をもったままつながることができ、そこに新たな価値や魅力が生まれる。アートに未来が託されていることを私たちは忘れてはなりません。

 いよいよお別れです。個性を認め合い、切磋琢磨しながら学びと制作を重ね、立派に成長した皆さんは、本校の誇りです。卒業後、離れ離れになっても、皆さんは瀬戸内の個性ある島々のようにアートによってつながっています。銅駝から巣立つ皆さんが、多様性を大切にしながら異なるものの間に新たなつながり、可能性を創り出す担い手として、地域で、日本で、そして世界で自分らしく希望をもって活躍してくれることを心より期待し、式辞といたします。


平成31年3月1日
                  
          京都市立銅駝美術工芸高等学校長  吉 田 功

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