京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/06/12
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本校は 自由快活な校風のもとで 多様性を尊重し共に高め合い 美の精神をもって広く社会に貢献できる 高い理想をもった創造性豊かな自立した青年を育成します

第1回卒業式式辞

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 やわらかな日差しと木々の芽吹きが早春の息吹を告げるこの佳き日に、令和5年度京都市立美術工芸高等学校 第1回卒業式をかくも盛大に挙行できますことは、卒業生はもとより、教職員にとりましても大きな喜びであります。
 本日は、京都市教育委員会をはじめ、PTA役員、美工交友会、京都パレスライオンズクラブ、そして多くの保護者の皆様にご臨席いただき、卒業生の新たな門出を祝福していただくことに、深く感謝申し上げます。また、ご卒業されるお子様を持つ保護者の皆様に、心からお祝いをお伝えします。

 ただいま、卒業証書を受け取った85名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、入学以来たゆまぬ努力を積み重ね、美術工芸の専門高校で3年間の学びを全うし、ここに晴れて卒業の日を迎えられたこと、心よりお祝い申し上げます。
 思い起こせば、皆さんの高校生活はコロナ禍の中で始まりました。その時期の学校ホームページの記事を振り返ると、皆さんが非常にストレスの多い学校生活を送っていたことが伺えます。どのように教育活動を進めていくべきか模索しながら、教職員一同は皆さんと共に考え、試行錯誤を重ねてきました。さらに、2年生の時には新校舎への移転準備もあり、学校行事を含む様々な教育活動の変更を余儀なくされました。そんな中で、皆さんは不安や焦り、解消できない葛藤、抑えがたい苛立ちを抱えながらも、多くの変化や制約、新しい生活様式を受け入れ、堅実な学校生活を全うしてくれました。そして、夢や希望を諦めることなく、高校生としての責務を果たし、将来への道を切り開くために努力を続けてくれました。そして、昨年4月に新校舎への移転が完了し、皆さんが新しい環境に慣れようとする姿勢や、何ができるかを考えて挑戦する姿には、大いに感動しました。また、最上級生として後輩たちを優しく導き、新たな学校生活の基盤を築いてくれたことに深く感謝します。この卒業式を迎えるにあたり、心からの祝福を送りたいと思います。

 さて、私たちを待ち受ける社会は、「Society 5.0」と呼ばれる超スマート社会の時代です。これは、情報技術を駆使して社会全体を最適化し、人々の生活の質を向上させることを目指す概念を指します。この新しい社会では、最先端の技術と人間の知識が融合し、新たな価値を生み出しています。特に、近年の生成AIの進化は目覚ましく、その応用範囲は文書作成から美術、映像、音楽、プログラミングに至るまで広がっており、新たなビジネスチャンスも次々に生まれています。美術分野では、皆さんがこれまでに学んだ知識とスキルが、将来の職業選択の可能性を大きく広げることになります。しかし、一方で、いくつかの職業が消滅の危機に瀕しているのも否めません。それでは、美術がこれからの社会でどのような価値を持ちうるのでしょうか。私は、美術をはじめとする芸術は、人間にとって不可欠なものであり続けると強く信じています。芸術はこの時代をより豊かにする重要な要素であり、私たちの精神的な支えでもあります。テクノロジーがどれだけ進歩しようとも、人間の心を動かすものは変わらないと私は信じています。では、具体的に芸術は社会においてどのような役割を果たすことができるのでしょうか。その一つの答えを、今年度の進路講演会でお招きした劇作家であり演出家の平田オリザ氏が私たちに示してくれたように思います。

 平田氏は講演の中で、「社会包摂」というキーワードで芸術の役割について話されました。要約すると、「現代の社会は社会的弱者にとって厳しいものとなっており、従来の地域や企業を中心とした共同体の形は変化している。昔ながらの絆が減少し、人々が孤立しやすくなっている現状がある。しかし、単に昔の共同体を再現するのではなく、現代社会に合った新しい形の共同体を作り出す必要がある。趣味や興味に基づく緩やかな共同体の形成が重要で、文化芸術は、そのような新しいネットワークの構築において大きな役割を果たし、文化施設は、この『文化による社会包摂』を支える強力な存在として機能する」と語っていました。平田氏の言葉を借りるなら、多様性を備え、緩やかな日本型社会を構築していく時に大きな役割を果たすのが、文化芸術の分野です。クリエイティビティーが求められる文化芸術の世界には、人との違いや個性を認め合う土壌があり、これは寛容性や他者への理解という多様性に通じます。その力を育むために文化芸術の存在は、より一層重要になってくるものだと思います。私は3年前の入学式の式辞の中で、皆さんの「ものづくりが好き、絵を描くことが好き」を生かして「この学校にいる間、やってみたいことへの挑戦を続け、試行錯誤を重ねてください」とメッセージを贈りました。皆さんは3年間来る日も来る日も創作活動に没頭しながら、そのために必要となる様々な学びに取り組んできたことと信じています。やりたいことにチャレンジする中で、自分を知り、再び挑戦していく力を養ってきたことでしょう。そこには同じ志を持つ同級生がいて、先輩・後輩もいた。また、理解ある保護者や先生を含む頼りになる大人たちの存在も、皆さんの歩みを支えたことでしょう。これこそがこの美工で学ぶ醍醐味であったはずです。皆さんが今まで学んだ「感じる」「考える」「表現する」力は、生涯にわたって皆さんの糧となり、明るい未来を築いてくれるものと信じています。どうか文化芸術を支える人となってください。また、幸福感が持てるような社会を構築する人になってください。

 巣立ちゆく皆さんに、最後に私の好きな言葉を贈ります。
 「百花繚乱」という言葉です。皆さんはこれからこの学び舎を巣立ち、自ら挑む世界へ飛び立っていきます。その世界は今以上に広く、様々なことが待ち受けているかもしれません。ですが、怖がる必要はありません。皆さんの未来は前途洋々、希望に満ちています。無限の可能性があります。これから新しい場所で自分の可能性を限界まで試してください。そしてここにいる一人ひとりが自分なりの花を咲かせてください。他人の花に憧れる必要は全くありません。あなたの花を咲かせることが、人生を豊かに生きることなのです。そして時々、この学校に戻ってきて、先生たちにあなたたちの素晴らしい物語を聞かせてください。その日を楽しみにしています。

 保護者の皆様、この3年間、本校の教育活動に深いご理解と温かいご協力を賜りましたこと、高い所からではございますが厚くお礼申し上げます。慈しみ大切に育ててこられたお子様の立派に成長されました姿に感慨もひとしおのこととご推察申し上げます。本校での3年間の高校生活を経て、お子様は心身ともにたくましく、頼もしい大人へと成長されました。どうかお子様の輝ける前途を温かく見守り、時には励まし、これからも支えていただきますようにお願いいたします。

 結びに、卒業生の皆さんは1880年に創立された京都府画学校以来143年を超える歴史と伝統をもつ美工の卒業生として、そして「京都市立美術工芸高等学校」の映えある第1期生として社会に巣立ちます。その誇りと大きな志をもって、それぞれの新しい道を歩み始めてください。卒業する皆さんの将来が光り輝き、皆さんの人生が幸福と充実感に満たされることを心から願って式辞といたします。

 令和6年3月1日

            京都市立美術工芸高等学校長  名和野 新吾
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行事予定
3/7 1・2年学年末考査 図書館閉館(授業開始まで)
3/8 1・2年学年末考査 美工1年生展陳列・結団式(午後)
3/9 冬のオンライン学校説明会
3/11 2年学年末考査、1年美術研修旅行
3/12 2年学年末考査、1年美術研修旅行
3/13 1年美術研修旅行
京都市立美術工芸高等学校
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