最新更新日:2024/09/20 | |
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校長室ウェブログ(10月30日) 作品が語る 作者が語る
作品が語る 作者が語る
10月が終わろうとしています。第38回の美工作品展が15日に閉じてからも様々な余韻の中にいました。美術工芸の作品は、作者の観察、思考に基づく表現であるとともに、鑑賞者の心を揺さぶり考えさせるメッセージを発出します。美工作品展は、4日間、2会場あわせて約5800名の方々にご来場いただきましたが、1年生から3年生まで270名の表現した作品が、来場者の方に何かしらとどけたものがあったと思います。各専攻では、生徒と教員が合評の中で作品について言葉を出し合いました。また、たくさんの方々に聴いていただいたギャラリートークでは、作者である生徒が制作の意図や制作過程、作品で表現したかったことを言葉にしました。「絶対悔いの残らない作品にしたかった」「17歳でこのように絵が描けて幸せだった」「作品と自分が一体となった」、作者である生徒が語ったことは、新鮮であり深く印象に残るものでした。 生徒の作品すべてを鑑賞して、私は私なりに、美しいとか、構図や形がおもしろいとか、また引き寄せられる感じがするとか、作者を思い浮かべながら様々な印象をもちました。それは、私の持ちあわせている物や色に対するとらえ方やイメージ、ものごとの感じ方、もっといえば、自分のこれまでの経験や生き方を背景にしたものであり、作者の考えや他の人の感じ方とは異なっていたかもしれません。しかし、そのことの自由が保障されているのが美術、芸術であり、その意義はたいへん大きいと思います。「モチーフが先にあったのではなく、テーマがまず先にあってモチーフを決めた」という言葉には驚かされました。『ありがとう』という作品です。自分と弟を描いた『霞み瞬く』という作品で、「亡くなった母の視線で」描いたという作者の語りには、胸中に大きな波が寄せてくる感じがしました。自分なりの鑑賞の後、作者と言葉を交わして作品のとらえ方が変わり、作品から発せられるメッセージの深さ、重さをあらためて感じたことがたくさんありました。 美工作品展に限らず、展覧会の案内、個展の案内をよくいただくようになりました。作品を鑑賞する機会を増えたのも、行こうという気持ちが高まったのも本校に勤めてからです。中学生の時担任であった美術の先生、前任校の先生や本校の先生、本校の卒業生、やはり秋は機会が増えます。“作品が語る”こと、“作者が語る”こと、鑑賞して自らの中にわき上がる感覚とそれを語ること、そういうことを叙述された長い文章ではなく、目の前に置かれた作品と向き合ってやりとりする。日常の中にそのような時間があること大事にしたいと思います。幼い頃より、図画工作や美術が好きで、作る、描くという活動だけを楽しいと感じていた自分が、今、鑑賞することに豊かさや幸福感をもてるようになりました。先日、進路講演会にお招きした京都大学総合博物館の塩瀬隆之先生のご講演、「共創時代に生きる『表現』〜『ために』から『ともに』へ〜」のお話を今一度重ね合わせて、美術の作品制作、表現、作品鑑賞のもつ可能性や力をあらためて感じているところです。 2017年10月30日 校長 吉田 功 |
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