最新更新日:2021/03/25 | |
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「立春の日には…」
時の流れは早いもので、1月も残すところ4日となりました。来週の木曜日の2月3日が「節分」で、翌日が二十四節気の一つ「立春」となります。その立春の日にまつわるこんな話があります。
中国の古い書物に「立春の日には卵が立つ」と書いてあるのを発見し、中国、アメリカ、日本など様々な所で実験してみたところ、たまごは見事に立った。テーブルの上に立てたたまごは、次の朝まで倒れずに立っていたし、タイプライターの上にも立てることができた。次の日の新聞には「歴史的な実験に成功」という大見出しで書き立てた。(昭和22年2月)この記事を目にされた理学博士であり、随筆家であった中谷宇吉郎氏は記事に関心をもち、科学者としての考察、見解を随筆「立春の卵」に書かれました。 「たまごの表面はざらざらしている。すなわち小さなでこぼこがあることは、だれでも知っているとおりである。問題は、あのでこぼこにありそうである。たまごの底の部分の少なくとも三つの凸点は非常に小さなゴトク(五徳)の三本足のような役目をするはずである。そして重心からおろした垂直線が、そのゴトクの三本の足がしめる面積の中に落ちればたまごは立つことになる。それでたまごの底の部分のからを学校へもっていって、たてにうまく切って、その切り口を顕微鏡で調べてみたら、三つの小さな凸点の距離はだいたい0.8ミリくらいあることがわかった。これで問題は一応解けたわけである。たまごの重心からおろした垂直線が、およそ半ミリ四方くらいの底面積の中を通るようにうまくもって調節すればたまごはいつでも立つのである。それには、十分の一ミリくらいの精密さでたまごの頭を少しずつ動かしては、そっと手を離してみればよい。三分から五分やってみれば、たいていうまく立てられるはずである。こうわかってみると、何でもない話ではないかと思われるかもしれない。しかし、問題は、そういう何でもないことに、世界中の人間がコロンブス以前の時代から今日まで、どうして気が付かなかったという点にある。それは、五分くらい費やしてたまごを立ててみようとした人が、今までだれもいなかったからである。実際のところ、たまごを立てる実験は、かなり気を落ち着けて、必ず立つものと確信して、何度も繰り返してやっているうちに、うまく立つものである。立つかなと思ってちょっとやってみるくらいではなかなか立たない。そういう意味では、中国の昔の本にあった立春の日にたまごが立つという話は、かなりおもしろい話である。たまごのような手近なものに、こういう例があるのだから、私たちのまわりには、まだ誰も気の付かないことがたくさんあるであろう。学校で習った物象で全部わかってしまったと思うことが一番いけないことである。」と結んでおられます。 本当に立つかどうか試してみました。その結果…、見事立ちました。 |
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