最新更新日:2024/09/12 | |
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「人権」って…
「人権って?…」 (※人権懇談会への手紙より 抜粋)
みなさん、「人権」という言葉、どんなふうに思われますか?何か、かたくるしい感じや、おおげさに構えるような気分になりませんか。でも、決してそういうものではありません。 私自身、「人権」という言葉を使うのはちょっと苦手です。その言葉を使っても、あまりピンとこないことが多いし、使いすぎるとあまりにも「嘘っぽく」感じるからです。 「人を大切にしましょう!」…そんなことは当たり前のことです。「人権」という言葉が街にあふれる中で、本当に人々は大切にされているのでしょうか。いじめや虐待は、毎日のように新聞やニュースにでてきます。「しね」「ころすぞ」という人に向けるべきではない言葉も子ども達の会話に今でも見られます。ネットが拡散する中、人権感覚に欠ける言動が世の中にあふれかえっています。私たちは「人」を大切にするためにどんなことを知り、どう行動していけばいいのでしょう。決して、「人権」は難しくて重いものではありません。みなさんの目の前に、日々の行動に、ひと言ひと言に、いっぱい詰まっているものです。「人権」という言葉を使わないでも、そこにいる生の人間と結びつく「人間としての心の持ちよう」がポイントです。 そのために大切なことは、まず、身近な言葉です。「言葉は人をつくる」と言われるように、人は脳の中で言葉という道具を使って物事をとらえ、考え行動します。「しね」「きしょ」など相手をないがしろにする言葉からは、人を大切にする心や関係は決して育ちません。「ちくちく・とげとげ」ではなくて、「ほんわか・あったか」言葉を使うことは、身近な「人権」を実現する大切な要素です。 また、世の中には「男女差別」や「同和問題」「障害者差別」「外国人問題」など、さまざまな差別が今もあふれています。そんな問題について、知る、考えることが、人権感覚を豊かにする大きな力になります。今日の懇談会などはその大切な機会だと思います。 そして、私たちにとって何よりも「人権」の実践につながるものは「子育て」です。可能性がいっぱいの子ども達の力を信じ、支え続ける事が、何よりも「人権」を大切にしている証(あかし)です。一人一人がもつ個性や能力を存分に発揮し、「夢」をかなえていく子どもを育てていくことが、私たちにとって何よりも「人権」の取組だと思います。 イギリスの批評家であるバーナード・ショーがこんな言葉を残しています。 「人類の発展と幸福に対し、誰にでもできて、最大の貢献は、子育てである」 一人一人の子ども達が、日々、にこにこし、友だちと遊び、自由に学び、おいしく食べ、笑顔いっぱいに安心して育つことを温かく支える家庭や地域、社会をつくる事、それが私たちにできる一番身近な「人権」の実践です。 そんな子ども達の「こころ」や「からだ」そして「いのち」を毎日、懸命に支えていただいている保護者のみなさまは、本当の意味での「人権」の実践者だと考えます。 われわれ学校も、同じ思いで、徹底して子ども達を、そして一人一人の「いのち・こころ・からだ」を、大切にしていきます。 今からの懇談会、どうぞ、あたたかい気持ちになる、そして、子育てに力が湧いてくる時間になりますよう心から期待しています。 あなたのこと大切にしてるよ…
『あなたのこと、大切にしてるよ…』
先日、昔の教え子から突然の連絡が来ました。 その子、担任をしている頃は手におえないほどのやんちゃで、友だち同士のトラブルは毎日、担任に対しても反抗するし、指導もなかなか届かずに、お母さんも困り果てている状態でした。毎日のように家庭訪問をしては、どうしたらいいのか話をしていた子です。家で勉強も見ましたが、すぐにノートを破って逃げ出してしまう始末でした。その当時は、教師としてその子のことでストレスがいっぱい、朝目覚めても今日はどうしようか、その子の顔がにくたらしく?浮かんでくる毎日でした。中学校でもうまくいかず、あまりいい噂をきいたことがないようなまま卒業し、そのままになっていました。 「今どうしてるの?」とたずねると、「先生、ぼく結婚して子どもも二人いてる。子どもが学校行くようになって、ちょっと思い出したんや…」と、ポッとうれしくなる話でした。懐かしい姿を思い出しながら「いつも、叱ってばかりですまんかったな…」と言うと、「怒られてばっかりいたけど、なんか思い出したし…。」と言葉少なに、語ってくれました。いろんな思い出をひとしきり話した後、最後に「ありがとう ございました…」と言って電話が切れました。当時には想像もできなかった言葉、心の中で炎がともったような、熱くなる瞬間でした。その子のその後の苦労や、力強く生きてきたにちがいない姿に思いをはせながら、教師になってよかったと心から感じました。 そのお母さんがいつも笑いながら言っていた言葉を思い出します。 「親に逆らったり、きたない言葉を浴びせたり、子どもはどっちみち憎たらしくなっていく。だから、小学生までのまだまだかわいい時期に、いっぱいかわいがって、その子のいい笑顔をいっぱい頭に焼き付けとくんや。そうせんと大人になるまでめんどうみてられへん!」…今考えると、ものすごく力強いお母さんの言葉でした。 一人一人の子にはどの子にも発達の階段があって、人や社会の関係にもまれながらも、ほとばしるエネルギーで懸命にそれをのぼっていきます。自我が目覚め、大人の世界を否定したり、反発したりする時期も必ずあります。その時の発達パワーはすさまじく、大人の理論や理屈ではおさえられずに、それが反抗したり道を外れたりすることも多くあります。でも、どの子も、自分が大切にされた経験やそれに伴うイメージやがあることで、目に見えない求心力でどこかへ離れて飛んでいくことなく、ブーメランのようにもどってくるのです。 何をしてもなかなか成果が見えなくて、困ったり、ストレスをいっぱい感じたりする家庭での子育てや学校での教育活動ですが、今、目の前にいる子に対して、長い目で、心の底から「あなたのこと大切にしてるよ!」という姿をいっぱい示し、伝えていける大人・教師になりたいと、改めて思いました。 |
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