最新更新日:2024/12/06 | |
本日:15
昨日:148 総数:944595 |
全校人権学習「マイクロアグレッションってなに?」今回は、この「マイクロアグレッション」という概念を理解し、人権への認識を深めるとともに、自分の言動、ひいては社会を、より望ましいものにしようと努力する態度を育成することを目的に、一般財団法人アジア・太平洋人権情報センターより 朴 利明(ぱく りみょん)先生を講師にお招きし、講演会を実施しました。 朴先生は、まず、「マイクロアグレッション」という概念が生まれた経緯と歴史をご紹介くださいました。 1970年代にアメリカの精神科医チェスター・ピアスが、白人の黒人に対する小さな侮辱や差別に対して名称を付けたことがきっかけです。その後、人種やジェンダー、性的指向に関するものなどにマイクロアグレッションの対象が広がります。そして、主流(マジョリティ)から取り残された集団(マイノリティ)に向けられる日々の軽蔑や侮辱などが、その集団の人々の心身の健康や教育・雇用などにまで悪影響を与えているということが明らかになり、アメリカでは2000年代ごろから一般的に理解されるようになっていきました。日本では、2020年代からようやく知られるようになってきたそうです。 次に、さまざまな具体例を示しながら、普段気づかない隠れた思い込み、偏見、見下し、軽んじ等が、相手にモヤモヤやイライラを湧き出させていることを、ご説明くださいました。 たとえばジェンダー。ある女性が友達から「自分で作ったお弁当?おいしそう!女子力高いね!」と言われて、「女子力=家事力?」とモヤモヤする。言う側は相手を傷つけたりストレスを与えたりしていることに全く気付かず、むしろ、ほめ言葉のつもりで言っている場合が多いのですが、言われた側にはそのストレスがどんどん蓄積していってしまうのです。 続いて、先週金曜日に事前学習として各自が取り組んだ「この広告は問題あり?」のワークシートをもとに、グループワークを行いました。ワークシートには、過去に日本で使われた5つの広告・ポスターが示されており、なんらかの「問題」を含んでいるものなのですが、それらのどこが問題なのか、考えてみようというものでした。なかには発表後すぐさま社会から批判を受けた広告もありますし、当時は特におかしいと思われなったものもあります。また、今の私たちが見ても、どこがダメなのかピンとこないようなものも。事前学習で各自が記入していたこと、講演を聴いて新たに気付いた点などを、前後左右の仲間と交流しあい、10分間ほど意見交換を行いました。 その後、朴先生が各広告の問題点について解説くださいました。たとえば、カラーコンタクトレンズの広告には、カラーコンタクトレンズをつけた女性の顔の横に「脱THE日本人顔 付けるだけで憧れの外国人のようなハーフ顔」とのコピーがあり、これについて朴先生は、「白人の身体的特徴をほめているような表現だが、白人からすれば、見世物のようにいつもじろじろ見られているような気持ちになる人もいる。また、みなさんのワークシートに『“日本人顔”に対する差別』という意見があって、確かにそうだと思った。」とコメント。そして、マイクロアグレッションを受けることを蚊に刺されることに例えた短い解説動画を見せてくださいました。 「たまに蚊に刺されるくらいなら大したことはないが、問題は、蚊に刺されまくる人たちがいるということ。四六時中、蚊が現れて、毎日毎日、一日に何度も蚊に刺されることは、本当に不愉快極まりない。蚊に本気で怒って焼き尽くしたくなる。たまにしか刺されない人からすると、過剰反応しているように見えるかもしれない。『単に蚊に刺されただけなのに、そんなに気にする必要ある?』と。また、人生をめちゃくちゃにしたり、命を奪ったりする蚊もいる。だから、次に誰かか過剰反応しているように感じたら、思い出して。彼らは蚊にいつも刺されているということを。ここで“蚊に刺される”とは、マイクロアグレッションのことだ。」 そして最後に、次のようにお話しくださいました。 マイクロアグレッションに気づくためには、自分の内側を見てばかりいてはいけない。社会がどのように動いているのかを知り、考え、評価することが大事。ある言動が、相手にどういうインパクトを及ぼすのかを考えることをぜひ習慣にしてほしい。マイクロアグレッションについて学ぶことは、社会の中にある不平等について知ること。平等な社会へと近づけるため、日々のコミュニケーションを磨いてほしい、と。 日々、知らず知らずのうちに誰かを傷つけているかもしれない私たちの言動。今日の学びを通して、改めて日常にあふれる言葉や自分の発言に注意を向け、人権感覚を鋭敏にしながら、お互いを尊重し合うコミュニケーションを図れるようになりたいものです。 朴先生、貴重なお話をありがとうございました! 【写真上】朴 利明 先生 【写真中】グループワーク 【写真下】質疑応答 |
|