京都市立学校・幼稚園
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考えるあたまと感じるこころで

本日、1年生が宿泊研修に出発しました。

今年度は、海外3コース(タイ、マレーシア、台湾)と国内2コース(福島・東北、福島・関東)の合計5コースを設定しました。生徒たちは自分の関心や研究テーマなどをもとにコースを選択し、これまで長期間にわたって各地特有の歴史や自然、文化などに関する事前研修を重ね、今日を迎えました。

2年前に初めて設定した福島・東北コース。当時、私も同行しました。

ちょうど13年前の今日、平成23年3月11日に発生した東日本大震災。その大規模な地震災害の状況、そして、10年以上が経った後の人や街の状況をこの目で見ておきたかった。何が起きたのか。今はどうなっているのか。人は何を願っているのか。

現地でのバスの中でのこと。夕日を浴びながら、その日の宿泊地に向かっている。右手遠くには海が見える。今通っている道路は、津波に飲み込まれた地域であるとのこと。海側の家屋は新しく、山側左手は古いまま。ここまで津波が押し寄せたことを街並みが物語っている。

バスガイドの方が、脳裏に焼き付いた記憶を静かにゆっくりと語り始めてくれた。涙交じりの声が時にかすれている。そのことばの一言一言が私たちに重く響く。

雪が降り続く寒い午後だったとのこと。突然の揺れが人を混乱させ、街には津波警報が響く。人たちは高台に向かって細い一本道の階段を駆け上がる。四方八方に行き来しようとする車は狭い交差点で立ち往生し、クラクションが鳴りやまない。街中にある防災スピーカーからの避難指示は1回きりで、情報が更新されることはなかったという。

真っ黒な大波が地響きを立て、鳥たちを一斉に空へと追いやる。驚異的な速さと威力で建物を飲み込み、車をさらい、街を荒らす。高台に避難した人たちが必死に叫ぶ。「早く逃げて。車を捨てて上に登って。」無常にも、窓が閉め切られた車の中までその声は届かない。

バスガイドの方は、かけがえのない大切なものを容赦なく奪い去られた深い悲しみとともに、希望を持って心をつなげ合わせながらこれまで過ごしてきた心境を飾ることなく伝えてくれた。あたりまえのものの尊さと喜び、生きることの幸せと勇気、人への感謝と恩返し、そんなことを教わった気がしている。

その時に見た海は、太陽の光でキラキラと輝いていた。緑が風に揺れ、花が咲いていた。人々の笑顔にしなやかさとしたたかさを感じた。でもいまだ、街のところどころは静けさに包まれ、寂しさが漂っていた。今もなお、現地の人たちは故郷を想い、昔の光景を大切に心にしまい込んでいることだろう。

令和6年1月1日、能登半島で大きな地震が発生した。大切なものを失った心の痛みやどこにもぶつけられない強い憤りを抱きながら、それでも今も前を向いて歩むために周りを見渡し、声をかけあい、知恵を絞り出し、心をつないでいる人たちがいる。凍える寒さの中で。1日も早い復旧と復興を心から願う。

今から10年後を想う。東北の人たち、能登半島の人たちはどうしているだろうか。街はどうなっているだろうか。私たちにはいま何ができるだろうか。

世界では何かが起きている。目の前では何かが動いている。人がいて、時が流れ、ものが生まれている。その中で、私たちはいま何をすべきだろうか。

見るべきものを見て、立ち止まって静かに考え、胸に刻むべきことを刻む。無関心だと絶好の機会には巡り合えない。瞬間を逃せばエネルギーを蓄えられない。

昔、今、そして未来。
人の居場所、役割、そしてつながり。
考えるあたまと感じるこころをもって、自分や他者、社会や世界にとっての「豊かさ」とは何かを考える大きな機会となることを期待しています。

3月8日に実施した結団式では、宿泊研修委員の生徒たちが出発を前にして、力強く全体に伝えていた。
 現地研修は通過点に過ぎない。
 ハングリーでありたい。
 「シンカ」を追い求めていこう。

約5日間の現地研修。
大いなる刺激を受けて帰ってきた生徒たちが、少し誇らしげな姿で自分のダイナミックな変容を語ってくれることを楽しみに待っています。

橋詰 忍

巣立ちの日

冷たい風がまだ残る中、本日、第76回卒業式を挙行しました。

23期生の卒業生たちは、時折、緊張した面持ちを浮かべながらもキリっとした大人の姿を見せ、これまで培ってきた仲間との絆を確かめ合うような表情を浮かべていました。

卒業生の入退場の際には、吹奏楽部の生徒たちが会場内で曲を演奏してくれました。数年ぶりの生演奏。卒業式に素敵な花を添えてくれました。ありがとうございました。

保護者のみなさまにおかれましては、これまでの間、十分でなかったところやご心配をおかけしたこともございましたが、あたたかくお見守りいただき、支えてくださったことに、厚く御礼申し上げます。


以下に、卒業式式辞の一部を紹介いたします。

23期生のみなさんは「景(ひざし)」と呼ばれてきた学年でした。1人1人が自ら素敵な輝きを持ち、他を照らす存在であってほしい。それぞれの「景」があふれ、照らされたその先には新たな出会いがあり、つどいが重なりあったときのおもむきを味わい、自由に挑んでほしい。そんな思いを込めました。

1月の激励会では「GIFT」という曲の歌詞を紹介しました。
 降り注ぐひざしがあって だからこそ日かげもあって 
 そのすべてが意味を持って 互いに讃えているのなら 
 もうどんな場所にいても 光を感じれるよ

また、その曲にはこんな一節もあります。
 「白か黒で答えろ」という 難題を突きつけられ
 ぶちあたった壁の前で 僕らはまた迷っている
 迷ってるけど 白と黒のその間に 無限の色が広がってる

これからの人生、いっぱいの難題に出会うことでしょう。そのたびに悩み考え、勤勉に取り組み、楽しむことを忘れず前を見て、心を躍らせながら自分に似合う素敵な色を追い求めていこうとし続けるみなさんを、母校である堀川は、ずっと見守っていきたいと思っています。

自分の中にある、いちばんきれいな色ってなんだろう?
となりの人の中にある、いちばんひかってるものってなんだろう?
そんな最高のGIFTを探し続けてほしい。
そんな最高のGIFTを誰かに届けてほしい。
そして、そんな最高のGIFTをずっと大切にしていてほしい。
そんなことを願っています。


卒業生が、最後のことばを贈ってくれた。

卒業生代表の生徒が壇上に上がり、私の目の前でゆっくりと奉書紙を取り出し、落ち着きのある声で読み始めた。ことばの一言一言に力を感じた。手は少し震えていた。それでも節目節目で手元の文字から目を離して顔を上げ、私を見つめた。まるで、目線の上にことばを乗せて届けようとしてくれているように。

自分の高校生活を貫いてきた「おもしろがる力」に焦点をあてながら語ってくれた。「おもしろがる」ということを、すべきことが与えられるのを受動的に待つのではなく、いかなるものに対しても自ら魅力を見出し、楽しむという能動的行為とし、文化祭や体育祭、探究基礎、日常の学びや語らいなどのさまざまな場面で、いかに「おもしろがる力」が培われ働いたかを、豊かな語彙でもって伝えてくれた。

おもしろがる力とは、
些細なことに気づき、価値を吹き込む力
自分が主体となり、何かを変える力
情熱的になって、何かを突き詰める力

またその生徒は、昨今の世界の状況において光と影が同時に存在することに目を向け、自分たちは影の内を見る「視力」を養わなければならないと決意を新たにしていた。自らの成功や幸福をもってよしとするのではなく、内を見るためにはさらに教養を身につけ、思考力を鍛えることが求められる。そのときに大事なのは、やはり「おもしろがる力」なのだと。

もちろん彼は、自分を見守り慰め、支えてくれた家族をはじめさまざまな人たちに、感謝のことばを届ることを忘れなかった。


本日、23期生のみなさんはここを巣立ち、新しい世界に飛び立っていきます。記憶の中で、堀川で過ごした時間が、懐かしさとともに少しの誇りを感じられるものであり続けることを願っています。

みなさん、お元気で。

橋詰 忍

対話を通して

7月15日、学校近隣では祇園囃子が響く中、堀川高校の学校説明会を実施しました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ここ数年は参加者数の制限や時間の短縮をして実施してきましたが、今回は参加者の学年などを問わず、希望される方全員にお越しいただくこととしました。当日は暑い中、大変多くの方々にご参加いただきありがとうございました。なお、校内が混雑したり見学時間が短かったりということで、なにかと不便をおかけしたかもしれません。大変申し訳ございませんでした。

今回の説明会、2年生リーダー15名と200名ほどの1、2年生スタッフが、受付から案内誘導、全体会、フロアコンテンツ、個別相談など、多岐にわたる表や裏での役割を担い、みんなでいっしょに手と頭を働かせながら、元気よく創りあげてくれました。

5月25日、第1回ミーティング。2年生リーダーと担当教員との初顔合わせ。私は今回集まってくれた生徒たちに感謝を述べるとともに、思いを伝えてみた。

ずっと考えているんです。困っていると言ってもいい。
ぜひ、みなさんの力を貸してほしい。

例年、学校説明会を実施しているが、その内容や形態は長年ほぼ変わらずだった。生徒たちが抱く「堀川高校を知ってもらいたい」という思いをもっと多様にリアルに伝えられないか、そして参加される方々がワクワク感じる“祭典”のようなものにできないか。そんな思いからのことばだった。さらに続けてみた。

既存のスタイルにこだわることなく、新しい説明会づくりに挑戦していきたい。失敗を恐れず、やりたいことを大事にして、じっくり考えて準備を進めていけば、きっと何かを生み出せるはず。

2年生リーダーたちを困惑させたかもしれない。何のことだかピンとこなかったかもしれない。ただ、そのあと、リーダーたちは担当教員とも話しあいながら検討を進め、今回の説明会のテーマを設定してくれた。

対話を通して堀川の魅力を伝える

そのあと、2年生リーダーによる会議や全体でのスタッフ会議、各パートの打ち合わせが何度も重ねられた。そしてリハーサルを経て、当日の学校説明会を迎えた。

参加される方々とことばを直接やり取りしたい、ライブ感を味わってもらいたいという生徒たちの思いから、堀川高校全館が「探究エリア」「学校生活エリア」「宿泊研修エリア」などに分けられ、さらに各エリアには生徒たちの手作りによる対話ブース、発表ブース、展示ブースなどが展開され、フロアコンテンツの充実が図られた。個別相談ブースでも生徒たちは前のめりになりながら、参加された方との対話を楽しんだ。参加者の方々には、自由に見たり聞いたり体験したり話しあったりしていただけるような説明会にしたいとの思いだった。

受付や案内誘導を担当してくれた生徒たちは相当な準備をしてくれた。多数の方々を気持ちよく迎え入れるために、想定される混雑を少しでも解消するために、限られた時間の中で迷わず館内を回っていただくために。自分たちの想像力を駆使して、議論と工夫を重ねた。

全体会では、2年生のリーダー代表が今回の説明会への思いとコンセプトを快活に伝えるとともに、各エリアのリーダーたちが自分たちのエリアの特長をアピールし、参加者の方々を招き入れようと誘った。2年生らしく、明るく堂々としたプレゼンテーションだった。舞台設営や照明などを担当した裏方の生徒たちがそれをしっかり支えた。

堀川高校のすべての場所が生徒たちのリアルな舞台だった。

参加された方々からは、たくさんのアンケートをご提出いただきました。ありがとうございました。堀川高校生たちのはつらつとした姿、柔らかな表情、真剣なまなざし、心のこもったおもてなしに触れることができ、満足度の高い説明会だったという声をたくさん頂戴いたしました。校内で迷って立ち止まっていたとき、鉛筆やスリッパを忘れたとき、受付を見逃して素通りしてしまったとき、…。そんな当日に遭遇した一場面を挙げ、そのときの生徒の素早い対応や温かいことばに対する印象を丁寧に教えていただきました。以前に説明会にご参加いただいた方からは前回との違いを感じていただき、「また来たい」とのお声もいただきました。

一方、もう少し時間が欲しかった、どこで何が行われているのかわかりにくかった、ブースどうしが近くて声が聞き取りにくかった、コンテンツを充実させてほしかった、中学生の時にどんな学習をしていたのか知りたかった、などのご指摘もいただきました。次回に向けて可能なかぎりの改善を図っていきたいと思います。

当日の午後、すべてが終わった後の振り返りの会。リーダーとスタッフの全員が集う。その場ではアンケートの一部を用いて、よかった点や足りなかった点といったさまざまな声を生徒と共有したり、次回に向けた改善点や日常の高校生活で活かすことなどを確認したりしている。堀川にずっと続く、振り返りのスタイルだ。

2年生リーダーの1人1人が1年生スタッフに向けて想いを伝えるのもいつものスタイル。個性的なメッセージにあふれていた。

すごいものを見ることができた。
本番が自分たちを強くしてくれる。
いろんな人のかっこよさがあふれていた。
終わってしまうのがさびしい。
自分はやっぱり堀川のことが好きだったんだ。
本当に楽しかった。

数日後、2年生のリーダー代表は、誰に言われることもなくこの説明会を改めて振り返り、自身の経験や思いを綴ってくれた。その一部を紹介します。

自分が初めからもっとがんばっていたら、もっといいものができたんじゃないかと思ってしまうほど、何もできてなかったんだと悔しく、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。代表としてよくがんばったねとか、おつかれさまとか声をかけてもらえても素直に喜べないのは、やっぱり全力を出し切れなかったからだと思う。

それでも、ついていきたいと思えたとか、引っ張ってくれてありがとうとか言ってもらえるのは本当にうれしいし、自分は支えられているんだって思えた。1人ではできないことも、たくさんの人がいることでできるようになるのが本当に素晴らしく、何か美しいとも感じた。代表になって、本当にたくさんのことを学べたと思う。今回の説明会は、私の中で人生の転機となったと思う。学んだことを心に刻み、後悔し続けるのではなく、前を向いていきたいと思う。代表とは何なのか、裏で動くって何なのか、人に動いてもらうって何なのか、自分の意識って何なのか。最後は代表になれたかな…。

祇園祭一色の7月。17日の山鉾巡行には130名ほどの生徒がボランティアとして参加しました。

まだまだ続く暑い夏。生徒たちは学習に励み、文化祭の準備に取り組み、部活動で汗をかく。体調を十分に管理しながら、それぞれの目標に向かって挑んでほしいと思っています。

橋詰 忍

大地のめぐみ

堀川高校の桜はあたたかな風に舞い、新緑が芽吹き始めています。
春のおだやかな光が差し込む中、本日の午前10時より25期生の入学式を挙行しました。

ここ数年の入学式は、新型コロナウイルス感染症の感染予防、拡大防止に留意して行っておりましたが、今回は、可能な限りコロナ以前の形態に戻して新入生を迎えようということで、これまで割愛させていただいておりましたPTA会長と同窓会長からご祝辞を頂戴することといたしました。初々しい1年生に向けたあたたかい激励のメッセージをいただき、ありがとうございました。

式辞では、25期生の入学に対するお祝いを新入生と保護者の方々へお伝えするとともに、これからの3年間においては自分の可能性に限界を設けず、失敗を恐れず、挑戦を楽しみ、力強く躍動してほしいということを伝えました。

若さあふれる力をもって、「知りたい」という好奇心を抱き、まっすぐに高みをめざしてほしい。その過程においては、困難や葛藤、不安が立ちはだかることもあることでしょう。しかし、その中にあっても粘り強く取り組み、励まし合い、刺激を与え合い、ワクワクする感覚を仲間とともにしながら壁を乗り越え、幅広い社会で通用する自己の形成を図ってほしい。

実るほど 頭を垂れる 稲穂かな

稲穂の「穂」は、最初は若い緑色をしており、まっすぐに伸びてゆく。やがて実をつけ、厳しい雨風や暑さ寒さにさらされながらも大きく成長していく。そして、成長した自らの重みで自然と頭を下げ、波立つような美しい黄金色の風景をつくり出す。

新入生のみなさんにも、そういった稲穂のように、みずみずしさを大切にし、多様な経験から学び、力を蓄え、決して折れないしなやかさ、また、あたたかく包み込むやわらかさを持ってほしい。そして、実り豊かに成長するほどに、頭を低くし謙虚な姿勢で次の目標に向かっていく――そんな姿であってほしい。

25期生は「穂(みのり)」
大地のめぐみ。みずみずしくはずみ、やわらかくゆれて。

新入生にこのことばを捧げました。高校生活を通して、生徒たち自身がこのことばに魂を吹き込み、堀川高校生としてのアイデンティティとプライドを育んでいってほしいと思います。

入学式では1人の新入生が新入生宣誓を、午後に実施した対面式では別の生徒が新入生のことばを、それぞれが緊張した表情を浮かべながら、これからの高校生活に向けた抱負を力強く語ってくれました。


今日の昼頃、入学式を終え、1階エレベータ前を1人で歩いていると、後ろから2人の生徒がウキウキした様子で「校長先生、おはようございます。」と元気に挨拶をしてくれました。とても清々しい瞬間でした。

いよいよ新しい1年のスタートです。生徒たちには新しい仲間たちとともに、これから始まる学校生活を、ワクワクする感覚を大事にしながら送ってほしいと思います。

今年度もどうぞよろしくお願いいたします。

橋詰 忍
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行事予定
3/19 後期終業式(10:30) 生徒校内立入禁止(13:00〜) 合格者登校日(14:00〜) 新2年教科書販売
3/21 春季休業日(21日〜)
3/22 生徒校内立入禁止(12:00〜) 合格者登校日(13:00〜)
京都市立堀川高等学校
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