京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/04/23
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高校生は輝く

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 先週書いたピアノの位置について京都堀川音楽高校の先生に尋ねたら,発音部がホールのもっとも音響効果のよい場所(舞台中央が多いそうですが)に位置するように設置するということでした。聞いてみたらあたりまえのことで,何をあれこれ考えたのかと我ながら可笑しくなりました。
 2年生のピアニストは銀賞を受賞しました。そのクラスでは金賞該当者がなかったので,「一応1番だった」とのことです。おめでとう。

 8月27日(土)に探究科説明会を開催しました。会場のアリーナは,堀川で空調のない唯一のスペースです。大変暑くて本当に申し訳ありませんでした。
 いただいたアンケート用紙に「時期を変えてはどうか」というご指摘がありました。ただ,夏休み前までは中学生が部活や修学旅行などで忙しいし,9月には普通科各校が説明会を開くし(堀川は9月17日です),それ以降になると進路選択に間に合いにくいし,ということでいまの時期に行っています。
 2部制にして空調のある会場でやっておられる学校もありますが,施設の関係もあり堀川の場合は現行のようになっています。熱中症対策として,うちわに加えて今年は水を用意しました。その点はアンケートでも好評でしたが,暑いことに変わりはありません。また,空調設備のある別室を用意して本会場の様子を中継しましたが,やはり臨場感が違いますので行かれた方は少数でした。暑い中でお疲れになったことと思います。いまはまだ申し上げる段階ではありませんが,担当者が何らかの改善策を検討しているようです。
 当日は生徒もまた,ネクタイ・リボンをきっちりと着けていたので相当に暑かったと思います。ちなみに,堀川では制服の衣替えの時期を決めていません。暑いか寒いかは,生徒が体調を考慮して自分で判断します。夏場にネクタイ・リボンを着けるかどうかも生徒に任せています。ただし,儀式のある日やあらたまった場面では正装着用を定めています。着ていない場合は席に着けません。説明会は大勢の方をお迎えするあらたまった場ですから,ブレザーまでは求めませんが(かつては求めていました),夏の正装を着ることとしています。
 舞台に上がる生徒は照明の影響もあり,舞台袖にいる生徒は狭い中に多くいるために,廊下で案内する生徒はうちわも使えず,きっと暑いはずなのですが,自分たちがきびきびと動いてさわやかに応対することで,中学生や保護者の方に少しでも心地よく過ごしてもらおうということを,準備段階でも当日朝のミーティングでも確認し合っていました。手前味噌ですが,実に見事な生徒たちです。アンケートには,多くの方が生徒たちへのねぎらいや激励を書いてくださいました。
 
 アンケートに,「普通の子はどんな感じなのでしょうか」とお書きになった方もたくさんいらっしゃいました。説明会に出ている生徒は「普通の子ではない」という印象だったのでしょう。
 昨日の月曜日,5階から順に各階を歩きました。教室にも,休憩時間の廊下にも,どこにも「普通でない子」はいません。三々五々廊下を歩く姿も,どこにでもいる普通の高校生です。「前に出てしっかりとやれる生徒」はもちろんいますが,もともとそういう力のある生徒はわずかです。
 「その場面」で「そのようにしたい」,「そうなりたい」と考えて,多くの生徒が準備を重ね,懸命に努力した結果,何とかやりきれた,というのが事実です。傍らにいると,高校生の内包する力に驚かされます。実際には無理ですが,前日までのリハーサルをご覧になったとしたら,生徒がどれほど成長するかを分かっていただけます。
 バックヤードがあってこそ光のあたるステージが動き出します。
 見えるものはすべて見えないところで準備されています。

 長くなりますが,説明会で1年生がやった群読の冒頭部分です。
…………………
  その1月17日は知らないが,私たちはその年に生まれた。
  そして,あの3月11日を私たちは知っている。
  中学3年生だった。
  4月に高校に入った。

  何気ない毎日。
  朝が来て町が動き出して夕方のあわただしさを経て夜を迎える。
  そんな日常が,かけがえのないものだと知った。
  いまも多くの人が不安の中で暮らしている。
  文字通り必死になって取り組んでいる人たちがいる。

  どんなにつらくても,どんなに苦しくても,
  今日が始まり明日が来る。
  私たちはそれを,信じる,
  今日を,生きる。
  明日に,向かう。
  だから学ぶ。

  強くなりたい。
  やさしくなりたい。
  社会や人のために尽くしたい。
  そして,幸せになりたい。

  玄関の前の植え込みに光る黒い石の板。
  小さな子どもが自分の顔を写して笑ってた。
  やさしい筆の文字が彫られている。
  「絆」という一文字。
  断ちきることのできない,つながり。
  断ちきってはならない,つながり。

  思い返してみようと思う。
  自分がいま生きているということを。
  私たちは今日を生きている。
  明日を生きていく。
  前を向いて。
  いろいろな人とつながって。
  つながりを大切にして。
  希望をもって。
  ひとりの人間として。
…………………
 今度の土日は文化祭です。どなたでもお越しいただけます。
 高校生が輝くのをご覧ください。
                          2011.08.30…… 荒瀬克己

2011年 堀川高校文化祭について

9月3日(土)、4日(日)の2日間、本校で文化祭が開催されます。
生徒たちは、今週末に迫った本番に向けて、準備に汗を流しています。
(写真:3年アトリウムパフォーマンスの練習風景)

文化祭で予定されている企画一覧は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/files/3006...
また、以下は講堂・アトリウムのタイムテーブルです。
https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/files/3006...

お手数ですが、ご来場の際は上履きをご持参下さい。
たくさんのご来場をお待ちしております。
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学校説明会

 8月27日(土)に行いました探究科説明会に,1200名あまりの方にご参加いただきました。在校生による学校生活や探究活動の紹介に大きな拍手がおこりました。全体会後の個別相談や施設見学も大盛況,アンケートにもたくさんの方にご協力いただきました。暑い中ご参加いただいたみなさま、ありがとうございます。説明会の様子やアンケートにいただいたご意見など,追ってHPに掲載いたします。

 また、9月17日(土)14:00から普通科説明会を開催いたします。詳細は以下のURLをご覧ください。当日は,全体会前の12:30から部活動の様子を自由にご見学いただけます。活動予定の部活動は、近日中に本HPでご案内します。
https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/files/3006...
     
写真(探究科説明会の様子)
上:全体会開始直前 中:探究科目の紹介 下:パネルディスカッション
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ピアノ

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 20日土曜日,御所の西向かいにある府民ホールで開催されたピアノコンクールに行きました。前半が終わった後の休憩時間にホールに入ると,ちょうど調律をしているところで,光を落とした舞台の上の,調律師の手慣れた仕事振りを眺めていました。できないことは数多ありますが,これも私にはできません。
 調律が終わって,木の舞台にはグランドピアノだけが立っています。塗り込められて光沢を放つ黒い楽器は,周りを圧するような存在感があります。機能美の存在感。その性能がもっとも有効に発揮されるために出来上がった形にのみ許された美しさ。素材の組み合わせによる長さや厚さや重さと直線や曲線や角度や質感。その一つでさえも違ったとしたらそうはならない,これでしかないという形の美しさ。
 以前から不思議に思っていたのは,グランドピアノの脚。たった3本の,まるでサラブレッドのような華奢な脚。ピアノは,移動用の金色の車輪の接地面だけで支えられています。その上の車輪の軸受けにもピアノの全重量がかかっています。その金色のあまりにも重い一線なり一点なりを思うと,胸のあたりが詰まるような感覚になります。
 今回不思議に思ったのはピアノの位置。舞台中央のやや上手側に置かれていました。鍵盤側の2本の脚は舞台の中心線より左になりますが,バランスとしては右に寄っています。演奏者が中央にくるためかとも思いましたが,椅子に座ると舞台の中心には近いけれど,やはり演奏者は舞台中央の下手側になります。
 チャイムが鳴って演奏が始まり,順に晴れやかな衣装で登場する弾き手たち。椅子の高さと位置を決め,ピアノの前に座って,その後少しの静寂。そして静かに,あるいは激しく動き出す,腕,体,足先,表情,視線……弾き手は別世界の存在になって,人がピアノを弾くのか,ピアノが人を弾くのか,ピアノが鳴っているのか,人が鳴っているのか,思わず眩暈を感じるほど。手はすでに鍵盤の上を駆け過ぎているのに音はそのまま続いて,瞬間,弾き手もピアノも息を止めて空白の間をつくって,10本の指が触れる88の鍵盤が,ピアノを震わせ演奏者を動かし,その流れるような音と動きの中で,脚先の車輪は光を受けていよいよ金色に輝き,弾き手は腰さえ浮かして大団円へと向かって,そして演奏が終わった後のしじま。すべての力と技術を尽くしきって立ち上がった挑戦者に拍手が送られ,それを合図に聴衆も再び我に返ります。
 人が中心に座れば,ピアノが従となり,ピアノを中心に置けば,人が従となってしまう。舞台の正面中央にもってくるのは,鍵盤の奥にある緊張した弦を,指の動きでハンマーが音に変え,人と楽器が重なり合い交じり合って音楽が生まれる場所でなければならない。ピアノと人とが,互角に格闘して音楽を創るところが舞台の中心でなければならない。だから,ピアノはあの位置にあるのだ。そんなふうに思いました。
 6人の演奏を聴いて,審査の発表前にホールを出ました。ロビーに出るところで,先ほど出演していた2年生の男子生徒が追いかけて来ました。
 「今日は来ていただいてありがとうござました」
 「いや,こちらこそありがとう。でき具合はどうでした?」
 「80パーセントくらいです」
 「そうですか」
 「本番は,練習よりも上にはなりませんから」
 「すごいことを言いますね」
 「そうですか」
 「ピアノには消しゴムがないって言った人がいたけど,それも印象的でした」
 「確かにそうですね」
 さっき舞台の上でピアノと格闘していたとは思えない,屈託のない表情と声。
 「君,ニキビが二つ三つあったら似合いそうですね」
 「は?」

 その後,本能館へ。自治連合会の「本能夏まつり」です。オープニングセレモニーに吹奏楽部が出演します。近くでタクシーを降りたら,演奏が聞こえてきました。会場の芝の緑が柔らか。特設舞台の上ではオレンジのポロシャツが揺れ,楽器がリズミカルに光っています。お世話になっている,顔なじみの自治連合会のみなさんに挨拶したり,海外留学から帰ってきた,近所に住む卒業生と言葉を交わしたりして,副校長に後を頼んで学校に戻りました。
 午前中からアトリウムで文化祭の練習していた3年生たちは,もういませんでした。部活で来ていた教員から練習試合に勝ったという話を聞いて,「本番は練習よりも上にはならないってピアニストが言ってたよ」。「え,それって,勝ててよかったということですよね」。「まあ,そうやね」。
 午後10時頃に,コアSSHの事業として北海道で探究合宿をしていた中高生40人が帰ってくることになっています。出迎えをしてくれる教頭の机にメモを置いて,打ち合わせがあるので外に出ました。
 11時過ぎに教頭からメールが届いて,「全員無事帰宅」。
 みなさん,今日も一日お疲れさま。

 27日土曜日に,探究科の学校説明会を行います。全体会場のアリーナには空調設備がありません。小さなうちわと水をご用意しますが,暑いですのでくれぐれもご注意ください。
 生徒たちとともにお待ちしています。
                          2011.08.23…… 荒瀬克己

本能夏まつりに吹奏楽部が出演(2011.8.20)

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 地域のお祭りである「本能夏まつり」が今月20日に本能グラウンドで開催されました。昨年に引き続き、今年もオープニングセレモニーで本校の吹奏楽部が演奏しました。

 当日は天候が危ぶまれましたが、開始直前には雨も止み、無事「Back to the future」「グレン・ミラー・メドレー」「ルパン三世のテーマ」の3曲を演奏することができました。
 
 吹奏楽部は、9月4日に行われる本校文化祭でも演奏を予定しています。残り少ない夏休み、生徒たちは一生懸命練習に励んでいます。

探究合宿@北海道

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8月18〜20日の日程で、堀川高校・塔南高校・紫野高校・日吉ヶ丘高校と京都御池中・開睛中・大宅中・下京中・岡崎中の生徒が一緒に、モデルロケットの作成や自分たちで発見した課題を深める探究活動を行う「探究合宿 −ロケットで探究―」が行われています。
1日目には北海道赤平にある植松電機で講演を聞いたのち、モデルロケットの作成を行いました。また夜には人工衛星についての講演があり、製作過程での苦労や工夫、人工衛星をつくった技術の今後の展開などについて話がありました。


学校訪問

 堀川には,多くの方が見学や視察に来られます。多くの場合,副校長と教頭が対応していますが,進路部長や図書館司書や各教科の担当者に頼むこともあります。時々は私もお会いします。
 来られた方とお話しすると,居ながらにして各地の様子が垣間見えます。それで「○○県の教育は」などというのは乱暴ですが,全国の様子を少しは知ることができて,とても参考になります。また,お話しする際には,自分たちの動きを対象化しなければなりませんから,普段よりも客観的に堀川を見ることができて,こちらの取り組みを紹介している最中に,それまで気づいていなかった課題を見つけたりすることがあります。堀川に来られた方が何かを得られるとしたら,実は堀川がもっと学んでいます。

 さて,文部科学省担当の財務省主計官の訪問を受けたことがあります。学校教育関連予算に直接関与しているような錯覚に陥って,冷静を装いつつ必死に応答しました。
 「一人の先生の授業は週に何時間ですか?」
 「京都市の高校では18時間までとなっています」
 「子どもたちが好きで,教育に情熱があって教員になった人が,週40時間のうち18時間しか授業をもたないのは少ないですね」
 「授業には準備が必要ですし,教員は授業だけでなく他の仕事もしています」
 「教員を増やすだけでなく,事務職員を増やして教員のいわば雑用を減らすということを文科省は言うんですが,そんなに雑用が多いんですか?」
 「必ずしも雑用という言葉でひとくくりにできるものではありません。担任の仕事であるとか,教科の仕事であるとか,学校経営に関わる仕事もやっています」
 「そういった仕事をすべての教員がしているのですか?」
 「一人がすべてをするわけでなく分担をしています」
 「その部分に工夫が必要ではないでしょうか。授業をいっぱい持つ人と校務に専念する人とに分けるとか。本当に必要な予算をつけるのは国の責任ですが,すべて税金ですから,無駄な使い方はできません」
 「課題はいろいろあり,確かに工夫が求められます。逃げるわけではありませんが,一方で,学校の役割と家庭や社会の役割を見直すことも必要です。そういった全体の枠組みを構築する中で,学校の変革についても進める必要があると思います」
 あとで文部科学省の知り合いに聞くと,この主計官は精力的にあちらこちらを訪問して学び,財政面から教育を支えようという姿勢をもっている方だということでした。笑顔を絶やさず,しかしものすごい速さで矢を放つ主計官に対して,ナベブタの盾で応戦するのは骨が折れました。自分は何かを守ろうとしている,しかし,いったい何を守ろうとしているのか,ということを思いました。

 中国の西安市は京都市の姉妹都市の一つです。西安市と近郊の市の教育長さんたちが来られました。教室にご案内したときに,国語の授業で漢詩をやっていました。担当の教員が,読んでいただけないかと頼んだら,生徒たちの前で朗々と詠じてくださいました。押韻が理解できたというのを通り越して,心は西域に飛び,詩が音楽であることを体感しました。
 そのあと会議室で応対していた際のことです。あなたは若そうだが退職まで何年あるかと尋ねられました。年数を答えると,「ほう,随分ある。すると教頭が校長になろうとしたらどうするのか」とのご質問。くだけた雰囲気で話が進んでいましたので,「それはクーデターを起こすしかありませんね」と答えました。中国語の通訳の方が笑いながら伝えると,教育長さんたちは真顔でうなずいていらっしゃいます。その様子にこちらがびっくりしました。「いやそれは教育委員会が決めることです」とあわてて言ったら,みなさんたっぷりの笑み。当然でしょうが,相手が上手でした。

 アメリカ合衆国教育省のトニー・ミラー副長官が来られたこともあります。元文部事務次官の佐藤禎一氏が堀川のご卒業で,実にいろいろとお世話になっています。東京の会議でお会いした際に,「ミラーさんが高校を訪問したいということなので,母校にぜひと言っておきました。よろしくお願いします」と頼まれました。
 奥様とご子息と随行員の6人で,ふらっと寄ったという感じで来られました。アトリウムで生徒たちにご挨拶いただきました。そのあと会議室で10数名の生徒たちとも話し合ってくださいました。重職にある方とは思えないフランクな対応でした。それにしても,生徒の英語は見事。私は必死。英語の教員に通訳を頼んでいましたが,私の日本語がまだるっこしいものですから,なかなか英訳しにくい。加えて私が口を挟むから余計にややこしい。それでもミラー副長官は真剣に聴き,話してくださいました。事情は異なっても教育課題はどこもよく似ている,というのは早計ですが,そのように感じました。
 四条烏丸の稲盛財団に行かれるので,車を呼びましょうと言ったら,近いから歩いていくとのこと。玄関で見送る私たちに,何度も振り返って手を振っておられました。

 堀川にいて幸いなことの一つは,様々な方にお会いできることです。高校だけでなく,小中学校,大学,企業,教育委員会,議会等の関係者や,ご紹介したように中央省庁や国外の方もいらっしゃいます。
 お会いした方の多くから感じるのは,気さくで真面目で意欲的で行動的であるということ。そして,責任感の強さ。さらには,閉ざさず開いているという姿勢。
 
 夏の学校閉鎖は今日まで。明日からまた生徒がやってきます。文化祭の準備も大詰めを迎えます。
                          2011.08.16 …… 荒瀬克己

わかいいのち

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 この書は卒業生の作です。1年ほど前になるでしょうか,両手で抱えて持ってきてくれました。「もらっていただけませんか」と言うので,「じゃあ,どこかに掛けよう」と,二人で場所を探しました。
 「ほんとうにいいんですか」
 「どうしてだめなの」
 「わたしなんかの書いたものですから」
 「きっと読む後輩たちがいますよ」
 「あんまり目立つところは,ちょっと」
 「でも誰にも気づかれないところでは掛ける意味がないしね」
 「そういうもんですか」
 「そういうもんです」
 うろうろして,アトリウムの傍らの柱に位置を決めました。後日,業者が少しの工事をして掛けてくれました。
 谷川俊太郎の「やわらかいいのち」。「思春期心身症と呼ばれる少年少女たちに」という副題がついています。この卒業生は書が好きで,在学中にも半紙に書いたものを持ってきてくれたことがあります。乾いて少し凹凸のできた半紙には,「青い闇」と書いてありました。何日もかけて不安と動揺を綴った文章を読ませてくれたこともありました。
 休みがちであやぶまれましたが,進級もして,みんなと一緒に卒業しました。

 初夏,いつになるか分からないけど君のことと書のことを書いてもいいですか,と電話をかけました。
 「そんな,ほんとうですか」
 「ほんとうです」
 「なんか恥ずかしいですが」
 「嫌ならやめます」
 「いえ,うれしいです」
 「ありがとう。それで,どうしているの」
 「わたし,大学受けます。やっぱり農業をやりたいと思って」
 「じゃあ必死で受験勉強ってわけだ」
 「そうなんですよ」

 額に入れられた書の紙は,ところどころ変色しています。捨てられようとしていたものを先生に頼んで頂戴した,と言っていました。どうしてもその紙に書きたかったそうです。届けることのできる言葉と,届けることのできない言葉と。屈託のない笑顔の底で,若い人たちは時にやるせなくもがきます。

 額の掛った柱の先のアトリウムでは,いま3年生たちが文化祭の練習に余念がありません。連日の猛暑の中,Tシャツと短パンに着替えて,パフォーマンスを組み立てていっています。
 「水分摂ってる?」
 「はい」
 濡れた髪ときらきら光る汗は,まるで泳いだ後のよう。

 先日,1年間のうち1日しか学校を閉めない公立高校の先生と話しました。土日も当番制で回して自習室を開けているそうです。「大変ですねえ」と言ったら,その人は「本当に」とおっしゃいました。
 堀川は,明日から16日まで学校を閉鎖します。その間合宿に出ていく部活もありますが,生徒も教職員も,ONとOFFの切り替え期です。
                                 …… 荒瀬克己

コミュニティカレッジ『文学歳時記 通年講座』   予定変更について

 8月20日(土)に予定されていた『文学歳時記 通年講座』は、都合により中止させていただきます。
 次回は、9月10日(土)14時30分〜「総角・早蕨」で開講いたします。
 宜しくお願いいたします。

探究道場

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 まず,前回のセミ捕りの写真ですが,どこの公園かというお尋ねをいただきました。あれは堀川高校のさほど広くはない前庭です。近所の子どもたちがよく遊びに来ます。小さいお子さんを連れて,おばあさんやおじいさんも。

 7月30日(土)に本能館で「探究道場」を開催しました。
 本能館は堀川高校の東側,油小路通蛸薬師にあります。かつて本能小学校があった跡地に建てられた堀川高校の第二校舎で,その名の示すとおり,織田信長が討たれた本能寺のあった場所です。本能寺の変の後,寺は豊臣秀吉によって現在地,京都市役所の南側に移されました。
 「探究道場」は,文部科学省から研究指定を受けているスーパーサイエンスハイスクール事業の一環として行っている,中学生に理科や数学について深く学ぶ機会を提供するものです。今回は数学でした。同じ内容で別の中学生を対象にもう一度実施しますので,どんなことをやったかは,いまは申し上げられません。申し訳ありません。
 では何をお伝えしたいのかというと,今回の道場で見た,とても興味深いことがらについてです。実はすでに知られていることではありますが,実際にその場にいて体験すると,何度同じような経験をしていても,なるほど,やはりそうか,と改めて合点がいきます。
 要は,取り組みにはコミュニケーションが大切だということです。チームワークが欠かせない,と言ってもいいかも知れません。
 道場は,PBL(Problem Based LearningあるいはProject Based Learning)の手法で行っています。問題を提示した後は,基本的に説明は行いません。自分の持っている知識や技術や経験に基づき,それらを活用して取り組みます。堀川の生徒が進行役や補佐役を務めますが,手を貸すことはしません。したがって,自分でよく考えるということとともに,他のメンバーとよく話し合うということが大切になります。
 同じ中学校の人を別にしますので,各グループは初対面の中学生たちで構成されます。学年も同じではありません。まずは自己紹介から始まり,練習問題をやって,本番に臨みます。その中で,どれだけ自分を出せるか。どれだけ相手を引き出せるか。受けとめられるか。発見,考案,創出するために協同できるか。それらが問われます。そして,2時間余りの試行錯誤の成果をポスター形式で発表します。
 このとき,コミュニケーションが活発であったかどうか,そのことによってチームワークが図られたかどうかが如実に現れます。一人の考えた方法を,他のメンバーが質問したり指摘したりして,多角的に揉んでみたかどうか。それが行われたグループの発表は,一人では考え付かなかった確認や点検や考察が加わった結果,より論理的なものになっています。
 もとより,一人の才能によって新たな世界が開くことはあります。その場合,周りがそれに気づくということが重要になります。しかしながら,それを周りが気づけるように説くということもまた重要です。おそらく,そういう練習を重ねることが,これから社会に出ていく若い人たちには必要であるだろうと思います。
 「探究五箇条」なるものがあります。教員が考えました。あちらこちらから集めた感はありますが,なかなかのものであると思います。何度も読むと,これは誰に対しての言葉なのかと思ってしまいます。

   探究五箇条
  一、知らないということを知れ
  一、常識を学べ
  一、常識を疑え
  一、手と頭を動かせ
  一、朋と愉しめ

 「はじめに,堀川高校の校長でもある,探究道場の荒瀬克己道場長からあいさつがあります」。
 道場の開始にあたって,司会の生徒が紹介してくれました。校長を辞めて道場長一本でやっていくっていうのもいいなと思いました。今度名刺を作ろうかと思っています。
                                 …… 荒瀬克己

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行事予定
3/31 PSTなし
4/5 新1年登校日(クラス発表・制服頒布・学習状況テスト等)
京都市立堀川高等学校
〒604-8254
京都市中京区東堀川通錦小路上ル四坊堀川町622-2
TEL:075-211-5351
FAX:075-211-8975
E-mail: horikawa@edu.city.kyoto.jp