京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2025/01/20
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アートフロンティアコース後期作品展は、1月31日(金)〜2月2日(日)の3日間、堀川御池ギャラリーで開催いたします。生徒たちの若さ溢れる作品を、ぜひご高覧ください。

新年のご挨拶

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 新年明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 旧年中は、保護者の皆様、地域の皆様、そして本校を支えてくださるすべての方々に多大なるご支援を賜り、心より御礼申し上げます。昨年も生徒たちが多くの学びや挑戦を通じて成長を遂げる姿を見届けることができ、大変嬉しく思っております。

 さて、近年「予測困難な時代」と呼ばれるようになり、私たちの価値観やライフスタイルも大きく変化しています。かつての「良い学校を出て一流企業に勤め、安定した人生を送る」というモデルは、すでに過去のものとなりました。現代社会で求められているのは、「どの大学に入学したいか」「どのような職業につきたいか」といった選択ではなく、「どのようなことを自分は成し遂げたいのか」「何を大切にして生きていきたいのか」を問いながら、自分自身の将来像を見出す力です。そのため、本校では、美術専門の高校だからこそ、在学中の3年間で基礎教養をしっかりと身につけるとともに、生徒たちが最も関心を寄せている「美術」を核に据え、多様な経験や体験を通じて視野を広げ、豊かな発想力を育むことを大切にしています。

 本校は、移転後に策定した「美術工芸高校グランドビジョン」を踏まえ、生徒一人ひとりが主体的に考え行動する力を育むための教育を推進しています。特に、キャリア形成の観点から「CAREER PRODUCE」の取り組みの下、「BIKO steAm」プログラムや探究学習を中心に、自ら課題を発見し、解決する力を養う機会を提供しています。これらの学びは、生徒たちの未来に直結するだけでなく、学校全体の活力にもつながると信じています。

 また、本校の生徒たちは昨年、海外研修や「トビタテ!留学JAPAN」をはじめとする国内外のプログラムに積極的な姿勢を見せ、参加する生徒が増えています。これらの経験を通じて、異なる文化や価値観に触れ、国際的な視野を広げるとともに、自らの未来を見据える大きなきっかけを得ています。私たちは、このような貴重な経験が、個々の成長にとどまらず、仲間たちと共有され、学校全体に良い影響を与え、やがて学校文化として根づいていくことを期待しています。

 互いに学び合い、刺激を与え合う風土を大切にし、挑戦する姿勢や学びの喜びを学校文化として根づかせていくことを目指しています。これこそが、本校の中核となる教育活動で掲げる「生涯にわたり、自ら探究し、学び続けるための基盤作り」を実現する姿であり、生徒たちの可能性を最大限に引き出す教育環境の柱であると考えています。

 本校の教育活動に対する皆様のご理解とご支援に、改めて感謝申し上げますとともに、今後とも温かいご協力をお願い申し上げます。2025年が皆様にとって希望と実りに満ちた素晴らしい一年となりますことを、心よりお祈り申し上げます。


 令和7年1月6日
                     京都市立美術工芸高等学校
                         校長 名和野 新吾

●「生徒の皆さんへ」(校長メッセージ) → こちら

●「美術工芸高校グランドビジョン」 → こちら

新年を迎えて(校長メッセージ)

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「生徒の皆さんへ」

 新年明けましておめでとうございます。
 2025年の幕開けにあたり、歌人である俵万智さんの短歌を紹介したいと思います。

 「未来とは いまを生き抜く その先に
           光る窓あり 新年の朝」

 この短歌は、「現在を全力で生き抜くことが、未来を切り開く鍵である」ということを教えてくれます。新年の朝、皆さんの前には無限の可能性が広がっています。その「光る窓」は必ず一人ひとりに現れます。すでに気づいている人もいれば、まだ見えない人もいるかもしれません。焦らなくても大丈夫です。努力を続けていく中で、必ず自分に合った窓が見つかります。そして、見つけたその瞬間、自分を信じて一歩ずつ進んでみてください。また、これから重ねる経験や思考によって、その窓が形を変えたり色を変えたりすることもあるでしょう。変化に戸惑うこともあるかもしれませんが、その時も自分を信じて挑戦を続けてください。

 新しい年は、これまでの自分を振り返り、未来へ向けて自分を磨く絶好の機会です。「一年の計は元旦にあり」と言いますが、皆さんは今年どんな目標を掲げましたか?
目標を立てるときは、高すぎず低すぎず、「自分にとって少しだけ挑戦となるもの」にすると達成感を得やすいでしょう。そして、目標に向かう道中では、決して他人と比べることなく、自分自身の歩幅で進んでください。

 そうした努力の末に見えてくる「光の窓」は、自分だけの道であり、それこそが皆さんに与えられた使命です。しかしその道を見つけるためには、自分の内面を見つめ直し、日々コツコツと努力を続けることが大切です。時には迷うこともあるでしょうが、焦らず、自分のペースで歩み続けてください。

 私たちは皆、それぞれが自分にしか辿れない道を歩んでいます。そして、この世界で一度きりの人生を生きています。だからこそ、この瞬間を大切にしてください。学校生活の中で出会う仲間や先生方との交流を楽しみ、たくさんの学びを得てください。

 最後に、この言葉を贈ります。

 「一日一新」

 どんなに小さなことでも、毎日ひとつ、新しいことに挑戦してみましょう。新しい知識、新しい行動、新しい考え――そうした小さな挑戦の積み重ねが、未来の自分を創り上げます。世の中には挑戦できる機会がたくさん散らばっています。その中から「これならできるかな」「これならやってみたい」と感じたものを見つけ、一歩ずつ、着実に進んでいきましょう。

 皆さんが新しい年をいきいきと過ごし、自分の道を力強く歩んでいくことを心から願っています。
 今年も一緒に頑張りましょう。

 令和7年1月6日
                     京都市立美術工芸高等学校
                         校長 名和野 新吾

年の瀬を迎えて

 2024年も年の瀬を迎え、あと数日で新年を迎えます。今年は、国内外で多くの変化や課題が生じる中、私たち一人ひとりが自分の役割や未来への責任について改めて考えさせられる一年でもありました。

 本校では、新校舎移転から2年目を迎え、生徒たちが日々成長し、その個性と可能性がますます輝きを増していく姿が見られる一年でした。今年度は特に、「美術」を通じた新たな教育プログラムに挑戦し、生徒たちが自ら考え、行動し、仲間とともに学び合う力を育む場面が数多く見受けられました。その真剣な表情や互いを支え合う姿は、私たち教職員にとっても大きな感動と励みとなりました。また、海外での体験にチャレンジする生徒が増えてきていることも大変嬉しい変化です。未知の世界に飛び込むその勇気と好奇心は、生徒たちがさらに大きく成長するきっかけになることでしょう。

 これらの挑戦が実現できているのも、保護者の皆様をはじめ教育委員会、地域の方々からの温かいご支援のおかげです。この場をお借りして、改めて深く感謝申し上げます。

 一方で、社会全体に目を向けると、気候変動に伴う異常気象や自然災害が国内外で相次ぎ、多くの方々が被害を受けた年でもありました。また、国際情勢においても、紛争や不安定な状況が続いています。このような現実に対して、本校生徒には、「自分の身近な生活と世界をつなげて考える力」を育み、他者への思いやりと共感を持つ人間に成長してほしいと強く願っています。それは、皆さんが持つ「美術」の力を通じて、社会をより良い方向へ導く一歩だと信じています。

 さて、2024年の締めくくりにあたり、生徒の皆さんには、この一年を振り返る時間をぜひ持っていただきたいと思います。成功や喜び、時には悔しさや失敗もあったかもしれません。それらすべてが、皆さんをより強く、豊かに成長させる糧です。そして、新たな一年に向けて、自分自身の目標や挑戦したいことを具体的に考え、一歩ずつ前進してください。

 「未来を切り拓くのは、他の誰でもない、自分自身の行動である。」

 この言葉を胸に刻み、自分の可能性を信じて、前向きに新しい年を迎えてください。

 最後になりますが、生徒の皆さん、保護者の皆様、そして本校を支えてくださっている全ての方々に、この一年間の温かなご支援とご協力に心より感謝申し上げます。皆様のご理解とご支援が、生徒たちの未来を広げ、可能性を大きく伸ばしています。来年も変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 どうぞ皆様、心豊かに新年をお迎えください。
 
 2024年12月26日
                      校長  名和野 新吾

後期始業式 校長メッセージ

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皆さん、おはようございます。
まず、先ほど表彰式を行いました。表彰された生徒の皆さん、おめでとうございます。皆さんの努力がこのような形で表彰されるのは、学校全体にとっても誇りです。しかし、表彰されなかった生徒の皆さんも、前期を通して大きな成長を遂げたことを私たち教職員は日々感じています。学校生活は、一人ひとりが自分なりの目標を立て、それに向かって努力を重ねることが大切です。表彰という形はなくとも、皆さん全員が前期に自らの成長を実感できたことと思います。皆さんの努力を心から称えたいと思います。

さて、今日から後期が始まります。新たな学期にあたり、皆さんに二つのメッセージをお伝えしたいと思います。まず、一つ目は「多様性と包摂性の重要性」についてです。

現代の社会では、異なる価値観や背景を持つ人々と共に生きていく力がますます求められています。皆さんも学校生活の中で、多くの友人や教職員と日々接する中で、自分とは異なる考え方や意見に触れることがあるでしょう。そのような時、自分の考えを相手に伝えることが重要ですが、同時に相手の考えや気持ちを理解しようとする姿勢も忘れてはいけません。意見が対立することは決して悪いことではありません。むしろ、そこから学ぶことが多くあります。意見の対立は、決して人格否定ではないし、ましてや人格否定として攻撃してはならないのです。

例えば、友人との話し合いで、自分の意見をどうしても伝えたいときがありますが、相手の話にもしっかりと耳を傾け、どのような背景や思いがあるのかを理解することが大切です。私たちは皆、異なる経験や環境で育っていますから、意見が食い違うのは自然なことです。その違いを否定せず、互いに理解し合う努力をすることが、豊かな人間関係を築くための第一歩です。

また、自分の言動が相手にどのような影響を与えるかについても、常に考える必要があります。時には、冗談のつもりで言ったことが、相手にとっては傷つく言葉になることもあります。人を傷つけたり、いじめたりする意図が全くなくても、相手に誤解されることがあるのです。だからこそ、言葉や行動には常に責任を持ち、相手の立場に立って考える習慣を身につけてください。多様性を尊重し、お互いを支え合うことで、学校全体がより安心して過ごせる場となり、皆さん自身も成長することができるでしょう。

次に、二つ目のメッセージです。それは「礼儀や思いやりの大切さ」についてです。

皆さんはこの半年間、学問を深めただけでなく、人としても成長してきたことと思います。しかし、私は皆さんがさらに成長するためには、礼儀や思いやりが不可欠だと感じています。どれだけ学業で優れていても、他者との関わりにおいて礼儀や思いやりが欠けていれば、真の成長とは言えません。

例えば、毎朝の挨拶です。挨拶は他者とのコミュニケーションの最も基本的な形です。しっかりと相手の目を見て、気持ちを込めて挨拶をすることで、相手への敬意を示し、人間関係を良くしていく第一歩となります。毎朝、私は正門に立っていますが、まだまだ挨拶を積極的にしてくれる生徒が少ないのが少し残念です。友人同士ではしっかり挨拶ができているかもしれませんが、先輩や後輩、教職員、そして学校を訪れる方々に対しても同じように挨拶をすることを心がけてください。

もう一つの例として、トイレのスリッパを揃えることがあります。皆さんは、トイレを使用した後、スリッパを揃えていますか?校内を回っていると、乱れたスリッパを見かけることがあります。これは小さなことかもしれませんが、次に使う人が気持ちよく使えるように整えることは、他者への思いやりを示す行動の一つです。こうした些細な心配りが、周囲との関係を豊かにし、自分自身の気持ちも整えてくれます。

挨拶やスリッパの整理など、こうした小さな行動が積み重なることで、学校全体の雰囲気は大きく変わります。私たち一人ひとりが、自分の行動に責任を持ち、日々の生活の中で他者を思いやることで、この学校はもっと素晴らしい場所になるでしょう。

京セラ創業者の稲盛和夫氏は、「心を磨くためには、日々の行動を通じて自己を律して鍛えることが必要だ」と語っています。挨拶や礼儀を続けることは、心を成長させる修行とも言えます。皆さんも日々の行動を通して、自分の心を磨き、他者との関わりをより良いものにしていってください。

二つのメッセージを送りましたが、皆さんの心に少しでも残るものがあれば嬉しく思います。今日から後期が始まります。皆さん一人ひとりが、この半年間で何を成し遂げたいか、どのように成長したいかをしっかりと考え、目標を立てて、充実した学校生活を送ってください。半年後の終業式、そして卒業式に向けて、皆さん一人ひとりがどう成長していくかを楽しみにしています。

2024年10月16日 
校長  名和野 新吾

前期終業式 校長メッセージ

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 前期を締めくくるにあたり、そして美工作品展を前に、今日は皆さんに二つのメッセージをお伝えしたいと思います。

 まず一つ目は、「困っている方のことを忘れないでほしい」ということです。

 今年は本当に自然災害が多い年だと改めて感じています。前期中だけでも、全国各地で多くの豪雨災害が発生しました。特に、1月に地震で被災した能登半島の方々が、復興に向けて努力を続けている中で、この度の豪雨災害が追い打ちをかけてしまいました。
 テレビ報道などで被災した方のインタビューを見ると、胸が締め付けられる思いです。自然の力は時に残酷ですが、私たちはこれまで自然と共に生きてきましたし、これからもそうです。辛い状況ですが、能登半島の方々がこの困難を乗り越えていくと、私は信じたいと思います。

 しかし、人は一人では困難に立ち向かうことはできません。皆さんもそうではありませんか? 周りの人々の温かさや助けがあってこそ、乗り越えられるのです。全国の心ある多くの方々が、直接的・間接的に支援の手を差し伸べています。本校でも、今年3月には生徒会を中心に能登地震への募金活動を行い、8月には本校の生徒代表が石川県で支援活動を行いました。こうした思いが、被災地の方々に届いて、勇気を与えているのだと信じています。

 私たちも、いつ自然災害に巻き込まれるかわかりません。大切なのは、これを「自分ごと」として捉えることです。被災地は今も支援を必要としています。私たちにできることは、まだまだたくさんあります。小さな行動が大きな変化を生むこともあるのです。それが、社会を変える力にもつながります。このことを、まず皆さんに伝えておきたいと思いました。
 どうか、身近な場所や日本、そして世界で困っている人々の存在を忘れないでください。感じる何かがあれば、少しでも行動に移してください。
 そして、これがとても大事なことなのですが、自分自身が幸福でなければ、他者を思いやり、大切にすることはできません。まずは自分のことを考え、自分を大切にしてください。

 続いて二つ目は、美工作品展についてです。

 本日午後から作品展の搬入が始まります。昨年度お伝えしたように、校舎移転を機に新しい教育活動を推進し、美工作品展も新しい形へと改革を進めています。美術館での展示は、美工における学びの集大成を発表する場となり、より自由な展示を実現します。
 今年から3年生のみの展示となりますが、1・2年生の役割も非常に重要です。ここにいる生徒全員が受付や会場当番として、多くの市民の方や教育関係の方と接することになります。一人ひとりが展覧会の主催者としての自覚を持ち、鑑賞者に気持ちよく作品を見てもらえるよう、心を込めたおもてなしをお願いします。2年生は、各専攻で搬入・搬出・展示などの手伝いを行います。しっかりと先輩のお手伝いをお願いします。
 美工作品展は、展示する3年生だけがいれば開催できるものではありません。皆さんをはじめ、保護者の方、美術館の方など多くの関係者の協力があって初めて成り立つことを忘れないでください。

 次に、3年生の皆さんに向けて。この作品展は、これまでの美工での学びを存分に発揮する場です。満足のいく作品が仕上がった人も、悩みや葛藤を抱えながら完成させた人もいるでしょう。しかし、どんな過程であれ、精一杯取り組んだその姿勢は、真に称賛に値します。作品展の期間中、自分の作品や自分としっかり向き合い、考え、次のステージに向けて自信を持って前進してください。
 1・2年生の皆さんは、先輩たちの作品やギャラリートークを通して、その創造力や情熱を学び取ってください。

 美術館のことで一つ伝えたいことがあります。それは美工作品展期間中の11日(金)から、同じ会場である京都市京セラ美術館にて京都市立芸術大学移転記念特別展「巨匠たちの学びや日本画の名作は、こうして生まれた」が開催されます。本校の前身である京都府画学校や美術工芸学校、京都市立芸術大学の前身である絵画専門学校で研鑽を積んだ47人の画家を一堂に紹介しています。皆さんが通っている学校のことを知るための機会になります。ぜひ、鑑賞してください。

 最後に、皆さんが前期で学んできたこと、そしてこの美工作品展での経験は、きっと皆さんを成長させるものとなります。後期にその学びをどのように活かすかが、皆さん一人ひとりの目標や夢の実現に近づく鍵となります。後期始業式で元気にお会いしましょう。

 これが私からのメッセージです。皆さんの心に何かを届けられれば嬉しく思います。

 2024年10月7日 
                        校長 名和野 新吾

アートを学ぶ皆さんへ

これは私からの「想像力」について考える一つの提言です。皆さんも一緒に考えてみてください。(校長)

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連休中にようやく観ることができた「オッペンハイマー」の映画は、科学の進歩と人間としての心の葛藤を描いていました。テクノロジーの進歩がどのような世界を作り出すのか、そして人間にどのような影響を与えるのか、クリエーターとしてとても興味がありました。

映画のあらすじは割愛しますが、ジュリアス・ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いたこの作品は、彼の科学者としての苦悩を描いたものです。人間の飽くなき追求心は止まることがなく、科学の進歩も止めようがありません。しかし、その過程で人間に不幸をもたらすこともあることを痛感しました。私は映画を通して、人類の飽くなき探究心から生まれるあらゆるものは、ただ技術的な進歩のみならず、人格の向上がいかに重要であるかを学びました。特に、人を思いやる想像力、つまり他人の立場に立って考え、感じる能力の大切さを強く感じました。

オッペンハイマーの業績が最も輝いて見えるのは、彼が持つ人間性の深さ、特に彼の想像力の豊かさによるものです。彼は自らが関与した原子爆弾の開発が、世界にどのような影響を及ぼすかを深く思索し、葛藤しました。その場面で、私も彼の葛藤に共感しました。彼の経験は、科学技術がもたらす可能性と、それに伴う倫理的な責任について私たちに問いかけています。

アートを学ぶ皆さんに伝えたいのは、どんなに知識が豊富で、技術が高度であっても、人としての成長が伴わなければ、その知識や技術は時に人類にとって負の力となり得るということです。あなたは自分の創作物が他者に何らかの影響を与えることになるのではと考えたことはありますか。私は、創作物が他者に与える影響を必ずあると考えています。だからこそ、作品制作する場合に、つくる責任者として、他者のことも考慮しなければならないのではないでしょうか。人を思いやる想像力を育てることは、自分自身の人生を豊かにするだけでなく、周囲の人々、さらには世界に対しても良い影響を与えます。

想像力は、他人の感情や立場を理解するための鍵です。この能力があれば、人との関係を深め、より良いコミュニケーションが可能になります。映画の中で、オッペンハイマーが自分の選択肢を考える際に、その想像力が役立った場面が印象的でした。また、異なる背景や文化を持つ人々に対する理解も深まり、多様性を受け入れる心が育ちます。映画を観ながら、この想像力の大切さを再認識しました。

皆さんはこの学校で学び、様々な分野に旅立っていきます。ここで得た知識や技術などはほんのわずかなものです。在学中からしっかりとした人格形成を行い、何が自分にとって幸福なのか、社会にとって幸福となるのかを磨いてほしいと考えています。
この映画に興味があれば、ぜひ観てください。

                        校長 名和野新吾

アートを学ぶ在校生の皆さんへ

アートは、創造力や表現力を育むだけでなく、他者との共感や理解を深める素晴らしい手段です。映画『オッペンハイマー』を通じて、科学技術の進歩が人間の幸福に与える影響を考えさせられました。同時に、自らの創作物が他者に与える影響についても深く考えさせられました。

在校生の皆さんは、日々創作活動行いながら、将来に向け必要となる力を身につけています。皆さんが創作する作品は、ただ単に技術や知識の表現にとどまりません。それらは、他者とのつながりを深め、共感や理解を促す力を持っています。例えば、あなたの創造物が誰かの心に触れ、新たな感情や考えを呼び起こすことがあるかもしれません。あなたは、自らの創作物が他者に与える影響を考えたことはありますか?

その答えがこの映画にあるわけではありませんが、大きなきっかけとなる機会を与えてくれたことに間違いはありません。私自身の感想も入れてのメッセージを読んでみたい方は、下記の校長ブログを見てください。

 ◆校長ブログ → こちら

旧銅駝校舎3D映像 寄付受納式を行いました

9日(火)、京都市役所正庁の間において、寄付者の中山智博氏(3Dアーカイブ制作会社社長)、京都市会から寺田一博議員、京都市から稲田新吾教育長・東元彦教育政策監・菅野明宏指導部担当部長のご臨席のもと、旧銅駝校舎3D映像寄付受納式が執り行われました。本校からは校長と渡邉野子副校長が出席させていただきました。

この度、ご寄贈いただいた旧銅駝校舎の3D映像は、歴史価値の高い銅駝校舎(旧銅駝美術工芸高校)を後世に継承するとともに、将来的には本校生徒が主体となって運営するバーチャルミュージアムとして活用するなど、美術教育の環境充実を図るものになります。

今後、この3D映像については、インターネット上で無料公開して行く方向であり、本校の生徒が制作した作品をバーチャル展示していく予定です。公開などの時期等が決まりましたら、本校ホームページで紹介をさせていただきます。

(写真中:中山社長が3D映像について説明している様子)
(写真下:渡邉副校長がバーチャルミュージアムについて説明している様子)

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令和6年度前期始業式 校長メッセージ

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 生徒の皆さん、こんにちは。

 本日の午前中に、美術工芸高校として第2回目の入学式を行い、92名の新入生を迎えました。また教職員も新しく着任された教職員10名を迎え、新たな気持ちで始業式を迎えています。

 3月に卒業生を送り出し寂しくなっていた校内は、本日から新入生を迎え、また活気あふれる学校となりました。4月は新しい出会いが多くなる時期です。また自分の立ち位置も変わる時でもあります。
 その変化を皆さんの顔から伺うことができます。新しいスタートを切る時は、誰しも緊張し、不安なものです。特に1年生はそうでしょう。でも安心してください。美工に集う仲間には、他者を尊重し、助け合うことができる優しい人がたくさんいます。そんな先輩がきっとその不安を取り除いてくれるはずです。

 さて始業式に当たり、皆さんに「想像する力」を大切に育んでほしいという願いを込めてお話をします。

 まず、ここにいる2年生が昨年、1年後期に「情報 l 」という授業で行った取り組みを紹介します。その授業は「情報デザイン」について学ぶものでした。3〜4人のグループで、京都駅の案内表示を頼りに目的地までたどり着けるかを英語圏の方、高齢者、車いすの方、視覚障害のある方などを想定し、実際に京都駅でのフィールドワークで検証するものです。

 その成果発表会には、私も参加させていただきました。各グループともよく調べて検証し、課題や改善点を提示するなど素晴らしい発表を行なっていました。聞いていた私もその発表された内容について「本当にその通りだ」と強く思いました。その中で、車椅子の方を想定したグループがいくつかあり、具体例として「車いすが通るにはこの入り口の幅は少し狭い。」などの分析結果を発表していました。

 この成果発表会を通じて、私は一級建築士でアクセシビリティ研究所を主宰されている川内美彦(かわうちよしひこ)さんの著書「尊厳なきバリアフリー "心・やさしさ・思いやり"に異議あり!」という一冊の本に出会ったことを思い出しました。アクセシビリティとは、「利用しやすさ」「近づきやすさ」などの意味です。

 19歳から車椅子を使用されている川内さんは、だれにも使いやすく、安全な建物やまちづくりにおけるアクセシビリティやユニバーサル・デザインについて発言され、障害のある人の社会への関わりについて「人権」や「尊厳」の視点で分析し、平等な社会参加を権利として確立していく活動を展開されています。

 その本の中で「日本の先を行く国々では、アクセシビリティ整備は、その不十分さのために社会に出られない人を無くして、平等に社会に参加する権利を実現するために行われている。そして、その延長上にユニバーサル・デザインもある。一方、わが国では何のために整備するのかの認識が決定的に不足しており、ハード整備そのものが目的となってしまっている 。」と記されています。
 形だけを追い求めても、本当に使用する人の身になって考え、我が事として捉え、施設整備やものづくりができていない部分がある日本であることは紛れもない事実です。皆さんはどう思われますか。

 私たち美工が行なっている教育活動は、予測が不可能な社会の中で、皆さんが好きな創作活動を通してこれからの社会で必要な力をつけてほしいと考えたプログラムを実施しています。ただしこれまでもお話をしてきたように、ただ単にモノ作りをするためだけのスキルを身につけるだけの学校にはしていません。それでは皆さんはここで何を学ぶべきなのでしょう。

 その一つの答えが本校のスクールメッセージに謳われている2つのソウゾウではないでしょうか。このソウゾウには、イマジネーションとクリエーションの二つがあり、それは勿論、作品づくりに直結しているのもですが、イマジネーションの「想像する力」は、あらゆる社会の中で必要な力であり、社会包摂を実現するためにも大きな力を発揮します。先程紹介した「情報 l 」の授業のことでも必要な力となっていますよね。

 少し話は変わりますが、皆さんは美術の授業でデッサンを習います。その力はデッサン力を身につけるため、大学受験のためだけに鍛えているのではないと私は信じています。物事の真実や本質を見抜くために行っている行為です。目に見える表面的な事実だけを切り取るだけではなく、「観察力」を使って自分の置かれている環境や状況を把握して、分析し、そこから生まれてきた「何か」を掴み取り、表現へ向かうことができるのが、皆さんの強みです。

 私自身も長年作家として培ってきた「観察力」が、教育者になった今でも仕事に生きています。その「何か」を掴み取ってから表現する間に必要な力が、イマジネーションの「想像する力」です。人だけがこの限りない想像力のたくましさを持っています。いくら生成AIが進化しても、ゼロから何も生み出すことはできず、人の気持ちを理解することも今はできません。

 「美」を愛する人は、想像力に長け、モノにも人に対して優しさを持ち合わせている人であると、私は昔から信じています。美工で学ぶ皆さんも、この想像する力や他者を思いやる力を持っています。多様性を認め合いながら、この力がより豊かになるように日々の学びを大切にして欲しいと願っています。

 ここにいる教職員は、そのサポートすることに尽力し、生徒の皆さんと共に歩んでいきます。今でも私は素晴らしい学校であり素晴らしい生徒たちであると思っていますが、より高みを目指して、これからも共に作り上げていきましょう。

 これで私からのメッセージを終わります。

 令和6年4月8日
                       校長 名和野新吾

第2回入学式 式辞

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 ピンクの桜が満開に咲き誇り、心地よい春の風が、キラキラした鴨川の水面を吹き抜けていく今日の佳き日に、京都市教育委員会をはじめ、PTA役員、平素より本校にご支援をいただいております美工交友会、京都パレスライオンズクラブのご来賓の皆様、そして、多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、令和6年度 京都市立美術工芸高等学校 第2回入学式を挙行できますことは、この上ない喜びであり、本校教職員を代表いたしまして、心よりお礼申し上げます。

 ただ今、92名の新入生の入学を許可いたしました。まずは新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。これからの3年間、教職員一同、力を尽くしてお子様の成長を支援してまいります。ご理解、ご協力を賜わりますようお願い申し上げます。

 本校は1880年、京都御苑内にわが国最初の公立の美術学校「京都府画学校」として創立されました。そして昨年、新天地であるこの地に移転、「京都市立美術工芸高等学校」として校名を改称し、2年目を迎えています。本校は美術工芸科単独の高校として143年を越える長い歴史と伝統をもつ学校であり、本校を卒業された諸先輩方は、美術界、産業界をはじめ、様々な方面で活躍されています。皆さんは、晴れて美工生として、この良き伝統を引き継ぐと共に、新しい歴史を刻んでいくことになります。

 さて、入学式において、本校の新しい一員として皆さんを迎えるにあたり、心より歓迎の意を表します。そして、この特別な日に、私から皆さんに伝えたい2つの重要なメッセージを贈ります。

 まず、ダイバーシティという言葉についてです。
 今日から皆さんは多様性を深く理解し、尊重する旅をはじめることになります。ダイバーシティという言葉を知っていますか。この概念は、単に人々をその性別や人種などの生まれ持った属性で分類し、区別することではありません。それは、個々人の持つユニークな特性や経験を認め、尊重することであり、これらの個性が集団全体の豊かさへと貢献する、という考え方に基づいています。
 これからの学校生活では、多様な背景を持つ人と出会うことでしょう。いえ、すでにもう出会っていますよね。隣に座っている同級生が、その一例です。異なる文化的ルーツ、育ってきた環境、ハンディキャップの有無、性自認の違いに至るまで、これまで経験したことのない多様性に触れることになるでしょう。これらの出会いは、私たちに新たな視野を開き、相互理解と思いやりの精神を育む機会を与えてくれます。これは、美術という分野で私たちが追求する創造性と直接結びついています。多様な人々との出会いにより、様々な視点から物事を見ることができれば、より豊かで多面的な作品を生み出すことができるのです。

 そこで、皆さんには異なるバックグラウンドを持つ人と積極的に関わり合うことを期待します。自分と違うから、分からないからといって排除したり、躊躇したりせず、新しい出会いを求め、多様な経験を共有し、お互いから学び合ってください。
また、学校生活に留まらず、地域活動や学校外でのグループの活動に参加することで、視野を広げ、深い理解と共感を育んでください。これらの経験は、未来を切り拓く上での貴重な糧となるでしょう。
 皆さんのこれからの旅が、互いの違いを尊重し、その中で自己を見つめ直し、成長する機会に満ちたものになることを心から願っています。美術を通じて人と人とを繋ぎ、深い理解を育む使命を持ちながら、豊かな学びの場を共に築き上げていきましょう。

 次に、お話ししたいことは、批評に向き合い、立ち上がることについてです。
 皆さんはこれまで中学校などで様々なジャンルの作品制作を通じて貴重な経験を積み、美術がとても好きになったのではないかと思います。それはとても素晴らしいことです。しかし、これから始まる本校での美術教科の学びは、常に楽しいわけではないかもしれません。心を込めて制作した作品が批判的なフィードバックを受けることや、予想外の角度から講評されることもあるでしょう。
 また、他者との比較によって落胆や挫折感を抱くこともあると思います。そのような経験はとても辛いことだと思います。けれども重要なのはそのように落ち込んだとしても「七転び八起き」の精神で、常に立ち上がることです。
 厳しい批評や多様な意見に向き合うことは、本校の教育プロセスにおいて不可欠なことです。それは、深く考え、自らの表現と向き合いながら新たな作品を生み出すことへの挑戦でもあります。長年作家としての経験を積んできた私自身も、そのような経験を何度もしてきました。

 私たち美工が目指すのは、周囲の多様な価値観を尊重し、それによって自身の真の個性に気づき、誰にも真似できない新たな価値や表現を生み出す力を育てることです。異なる興味や関心を持つ仲間、教員と出会い、意見交換を通じて、より広い視野を得る場所です。ひとりでは決して体験できない多くの学びを、ここで経験してください。
 皆さんが好奇心を持ち続け、新しい出会いを通じて視野を広げることを期待しています。そして、皆さん一人ひとりの成長と発展につながることを願っています。

 結びに、皆さんもよく知っている画家のパブロ・ピカソの言葉を紹介します。「できると思えばできる、できないと思えばできない。これは、ゆるぎない絶対的な法則である」。この言葉には、挑戦の精神と自己信頼の重要性が凝縮されています。人生は、自分の信念と態度によって形作られるということを、ピカソをはじめ、多くの作家たちは私たちに教えてくれています。皆さんがこれからの高校生活の中で様々な挑戦や学びに向き合う時、確かに無数の困難に直面することでしょう。その時、この言葉を思い出してください。できると信じることが、第一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。逆に、できないと決めつけてしまえば、その時点で可能性は閉ざされてしまいます。
 新しいことに挑戦することは、不安や恐怖を伴うかもしれません。しかし、その一歩が皆さんの能力を高め、未知の世界へと導いてくれることでしょう。失敗を恐れずに、挑戦を続けることで、皆さんは自分自身の限界を超え、違う景色に出会うこと間違いなしです。

 ピカソの言葉を胸に、限界を設けず、夢に向かって果敢に挑んでください。自分自身の可能性を信じる皆さんが、未来を切り拓く主役です。ここでの高校生活が、皆さんにとって充実したものとなり、自らの無限の可能性を信じるきっかけとなるよう願っています。
この言葉をもって、式辞とさせていただきます。
 
 令和6年4月8日
                京都市立美術工芸高等学校
                校長  名和野 新吾
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行事予定
1/20 3年大学入学共通テスト自己採点
1/22 大掃除、学校安全の日
1/23 3年学年末考査(1)
1/24 3年学年末考査(2)
1/25 1年総合学力テスト(ベネッセ)

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