京都市立学校・幼稚園
最新更新日:2024/04/23
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学校教育目標「将来の夢を実現するために,自らを磨き続けられる人間の育成」

「卒業生へ ありがとう」

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式辞
皆さんは一年生から,学年目標の「気宇壮大(きう そうだい)互いの違いが認め合える集団,自分を大切にでき,そして,仲間を思いやれる集団」を目指して様々なことに取り組んできました。その中で,特に印象に残っているのは,3年間の集大成と言える3年生の「学校祭」ではないでしょうか。
沖縄戦をテーマにした人権劇「『信じる』命(ぬち)どぅ宝・沖縄」は,大変感動的な舞台になりました。出演者は,台詞の読み合わせから役になり切り,その真剣な役作りが練習の中でとても伝わってきました。本番では,迫真の演技に,その場にいるかのような心情になりました。大道具の人は,舞台背景を立体的に描き見事な舞台空間を作ってくれました。小道具の人は,それぞれの場面で必要な物を,まるで実物のように精巧に制作してくれました。音響,照明,幕引きの人は,各場面の流れに合わせてタイミングよく舞台がより映えるように演出してくれました。衣装の人は,戦時中の状況を忠実に再現しようと工夫を重ねてくれました。三年生全員が,一人一役の役割を責任を持って果たすこと,また,惜しみなく協力し合うことで,素晴らしい劇を創りあげてくれました。劇中で,「あなた方一人一人の命は,お父様・お母様からいただいた大切な命です。そして,あなた方自身の命なのです。夢を叶えるために生き抜くのです」というIさん演じる島袋先生の台詞がありました。さらに,エンディングで心のこもった迫力ある声量と素晴らしいハーモニーで歌った学年合唱「信じる」を聞き,皆さんからのメッセージ「命の大切さ」は間違いなく観ていた人たちに伝わりました。
また,体育の部は,「ラグビーのワールドカップの日本チームのように,ひたむきにがんばりたい」と,Nさんの力強い宣誓で始まりました。一文字綱引きでは,各クラスの勝負に賭ける団結力とパワーを見せつけられ,決着がつくまで目が離せませんでした。最後の一瞬まで全力を出し切った皆さんの表情や姿は,見ていたすべての人に感動を与えてくれました。閉会式で「どうしたらいい結果になるか,みんなで考え話し合うプロセスが大事だと知りました」と涙交じりにあいさつしたMさん。それに対して,たくさんの同級生から「がんばれー」「がんばれー」と励ましの声が上がったとき,学年目標が達成できた瞬間だったと思います。
その後の皆さんの成長には,目を見張るものがありました。一人一人が進路に向かって一生懸命に学習に取り組みました。その姿勢や態度は,一・二年生のよき手本となりました。
思えば,4月に本校の教育目標「将来の夢を実現するために自らを磨き続けられる人間の育成」を伝えました。そして,「自らを磨いている姿」を「ライオン・ハート」と呼び,「学校だより」に掲載してきました。読み返してみると,皆さん一人一人には一つ一つの輝きがあることがよくわかります。世界に一つだけの「自分自身の輝き」を決して忘れず,これからもそれを磨き続け,将来の夢や希望をぜひ叶えてほしいと思います。
結びに,卒業生の皆さん「私は,皆さんに出会えて本当によかったと思っています。皆さんの幸せを,心から遠くからいつも祈っています。ありがとう。さようなら」
平成28年 3月15日
京都市立嘉楽中学校 校長 井上 浩史

「泣いた赤鬼」

 今日2月3日は節分です。みなさんのお家では豆まきをされることでしょう。そこで,鬼にまつわる話をしたいと思います。

山の中に一人の赤鬼が住んでいました。赤鬼は,人間たちとも仲良くしたいと考えて,自分の家の前に,「心の優しい鬼の家です。どなたでもおいで下さい。美味しいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます。」と書いた立て札を立てました。

けれども,人間は疑って誰一人遊びに来ませんでした。赤鬼は悲しみ,信用してもらえないことを悔しがり,おしまいには腹を立てて立て札を引き抜いてしまいました。そこへ,友達の青鬼が訪ねて来ました。青鬼は,理由を聞いて赤鬼のために次のようなことを考えてやりました。

青鬼が人間の村へ出かけて大暴れをする。そこへ赤鬼が出てきて、青鬼をこらしめる。そうすれば,人間たちにも赤鬼が優しい鬼だということがわかるだろうと言うのでした。しかし,それでは青鬼にすまないと渋る赤鬼を,青鬼は無理やり引っ張って村へ出かけて行きました。

計画は成功して,村の人たちは安心して赤鬼のところへ遊びに来るようになりました。毎日毎日,村から山へ三人五人と連れ立って出かけて来ました。こうして赤鬼には人間の友達ができました。赤鬼はとても喜びました。しかし,日がたつにつれて気になってくることがありました。それは,あの日から訪ねて来なくなった青鬼のことでした。

ある日,赤鬼は青鬼の家を訪ねてみました。青鬼の家は戸がかたく閉まっていました。ふと気がつくと,戸の脇には貼り紙がしてありました。そして,それに何か字が書かれていました。
「赤鬼くん,人間たちと仲良くして楽しく暮らしてください。もし,ぼくがこのまま君と付き合っていると,君も悪い鬼だと思われるかもしれません。それで,ぼくは旅に出るけれども,いつまでも君を忘れません。さようなら,体を大事にしてください。どこまでも君の友達,青鬼。」

赤鬼は,黙ってそれを読みました。二度も三度も読みました。戸に手をかけて顔を押し付け,しくしくと涙を流して泣きました。
(日本昔話 絵本「泣いた赤鬼」 浜田廣介 著)
 
こんなに優しい鬼を知ると,豆まきで「福は内,鬼は外」とは言えなくなりますね。私の娘が小学生のときに,学芸会で学級劇「泣いた赤鬼」を見て感動したことをふと思い出しました。今日は「福は内,鬼は外(小声で)ばかりでない」と豆まきします(笑)

嘉楽中学校 校長 井上 浩史

「学 校」

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「学校」という名の詩(文)がありますので,紹介します。

どなたが,この詩(文)をつくられたかご存知ですか?
これは,夜間中学校に通っておられた生徒の皆さんに「学校ってどんなところですか?」と尋ね,返ってきた答えをまとめたものです。
夜間中学校とは,幼い頃にいろいろな事情で勉強をする機会がなかった年輩の人,外国から日本に来て間もなくて日本語ができない人,中学の時に不登校で悩んでいた人などが登校している学校です。
この詩(文)の言葉を見て,どう感じられましたか?
この詩(文)には,様々な背景や環境で育ってきた生徒の皆さんの,「学校」に対する純粋な思い,希望,願いがたくさん含まれているように思います。私は,改めて「学校」が本来目指すものを,この詩から強く感じました。
今後はより一層,嘉楽中学生にとって,『嘉楽中学校が,将来の夢を実現するために,しっかり力をつける一番いいところであり,卒業後は心のふるさとになるところ!』を目指していきます。

嘉楽中学校 校長 井上 浩史

「人権について」 〜12月1日(火)人権講話から〜

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12月1日(火)4限,全校生徒に対して行った人権講話を紹介します。

今から67年前の1948年に,国連の総会で「世界人権宣言」が採択されました。そこで,採択された12月10日を「世界人権デー」としました。今日は,みなさんに「人権」についてしっかり考えてほしいと思います。

最初に「わたしのいもうと」という絵本を紹介します。
(略)※「わたしのいもうと」(松谷みよ子 文,味戸ケイコ 絵)偕成社
これは,実際に「いじめ」で妹を亡くしたお姉さんから聞いた話をもとに作られました。
次に,今から30年前,東京の中学2年生の男子が,「いじめ」を苦にして亡くなる前に書いた遺書を紹介します。
(略)
その苦しみは想像を絶するものだと感じられます。
さらに,20年前,愛知県の中学2年生の男子が,「いじめ」を苦にして亡くなる前に書いた遺書を紹介します。
(略)
お金を要求する「いじめ」があったことがわかります。これはもはや犯罪と言えます。(略)
また,ひどい「いじめ」で苦しんでいるのにもかかわらず,最後までいじめた人への気遣いをしている優しい人柄に,先生はとても胸が締めつけられました。

最近もテレビや新聞などで,小,中,高生が「いじめ」を苦にして亡くなったという報道があります。「いじめ」は,今も日本の学校のどこかで起こっています。
「いじめ」がどれほど重大なことかについては,『その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものである。』と法律に書かれています。そして,法律で「いじめ」の定義がされています。定義の中に,『インターネットを通じて行われるものを含む』とあります。ケータイやスマホ,パソコンで,悪口など相手が嫌がることを書き込むことも当然,「いじめ」になります。「いじめ」には様々な言葉や行動があります。「きもい」や「きしょい」など人に傷つく言葉を言ったり書いたり,暴力,仲間はずれ,無視,お金を盗ったり,危険なことを無理やりさせたり,物を隠したり,壊したりすることが「いじめ」になります。調査では,「冷やかしや悪口」「仲間はずれ・無視」「ぶつかられる・蹴られる」が多いです。また,「いじめ」の内容によっては,犯罪になります。無視は「脅迫罪」,サイトに悪口を書き込むと「名誉毀損罪」,殴る・蹴るは「暴行罪」お金を要求すると「恐喝罪」になります。

「いじめ」は,決して許されない「人権侵害」です!

「いじめ」が,どのようにして始まるかを考えましょう。
「遊び」と「いじめ」の違いを説明します。「遊び」には,きちんと約束があります。それは,「一定のルール」と「役割の交替」とです。例えば,「鬼ごっこ」をするときに,ジャンケンをして鬼を決めるとか,鬼から最初に見つかった人が次に鬼になるとかのルールがあり,同じ人ばかりがずっと鬼になることは基本的にありません。いわゆる参加した人たちが「一定のルール」のもと「役割の交替」があり,みんなが平等になるようにして過ごせるのが「遊び」です。ところが,「いじめ」には,「一定のルール」と「役割の交代」がなく,複数の人たちから何回も不利な状況に陥れられてしまいます。
だから,平等に行われる「遊び」とは大違いなのです。最初は「遊び」から始まって,途中で「いじめ」に変わることが大変多いです。遊びの仲間の中の人間関係の変化と共に,役割の交代がなくなる瞬間があり,それが「いじめ」に変わった瞬間と言えます。また「いじり」は「いじめ」の入り口です。このことを,しっかり意識して下さい。

実際にクラスや部活内で「いじめ」があると,どんな状況になるかを考えましょう。
「いじめる人」「いじめられる人」の周りに,それを「見ていてあおる人」がいます。
さらに,その周りに多くの「知らんふりしている人」がいます。ここで,知ってほしいことは,「いじめられている人」から見ると,「いじめる人」「見ていてあおる人」だけでなく,「知らんふりしている人」も黙って認めている存在となり,「いじめている人」と同じ立場になるということです。「いじめられている人」は,とても孤独な存在なのです。これまでに,いじめられた体験をした人は,よくわかると思います。

3年前に,滋賀県の大津市で「いじめ」を苦にして亡くなった中学生がいました。
そのあとで,周りの生徒にアンケートを取りました。その内容の一部を紹介します。
(略)
「知らんふりをしている人」が,いじめを止められなかったことに,すごく罪悪感を持っていて,自分自身を責めていることがよくわかります。

【質問】 『どうすれば,「いじめ」のない,言い換えれば,一人一人の人権が守られる学校生活を送れるでしょうか?』

そのヒントが,先ほどのアンケートの中にあります。
(略)
一人一人が「いじめる人」にならないことは言うまでもありません。しかし,それ以上にたくさんいる「知らんふりしている人」など周りの人たちが,自分が「いじめる人」になっていることを知って行動することが,「いじめ」を止めたり,なくしたりするために,とても大きな力になるということなのです。だから,周りの人たちから

『それって,「いじめ」ちゃう?』
『やめとけや!』
『やめとき!』

という声を出してほしいと思います。
そうすると,「いじめ」が起こっても,状況が変わっていきます。
たくさんの声があれば,嘉楽中学校では「いじめ」が防げます。
大きな声になれば,嘉楽中学校から「いじめ」がなくなります。

『今 必要なことは,生徒会本部が中心になって,"生徒が主役"の学校,
言い換えれば,一人一人の人権が守られる学校をつくること!』
だと思います。

嘉楽中学校 校長 井上 浩史

「虐待と子どもの人権」

11月は『児童虐待防止月間』なので,「虐待と子どもの人権」についてお話します。

 地域の方などから児童相談所へ虐待通告される件数は年々増加しており,児童虐待が後を絶たない状態が続いています。暴力などの身体的虐待と育児放棄であるネグレクトが多く,虐待の約8割を占めています。また,虐待された子どもの約半数は6歳までの幼い子どもたちです。子育てに悩んでいたり,困っていたり,疲れていたりしている家庭が大変多くなっていると言えます。
そこで,日々虐待を受ける状況に置かれるという体験が,幼い子どもにどのような影響を及ぼすのかについて考えてみます。

0歳〜2歳までに大切なことは,「基本的な信頼感を持たせる」ことです。

赤ちゃんは痛みや空腹などを感じると,自らそれには対処ができないため,めいっぱい泣くことでそれを訴えます。放っておかれれば死んでしまいます。だから養育者が絶対に必要です。この話からも乳児期のネグレクトが深刻な問題であることはおわかりになると思います。養育者は子どもの要求を読み取り,満たすことで赤ちゃんを快適な状態に導きます。この体験の繰り返しを通して,赤ちゃんの心に宿るのは「生まれたこの世界は安心だ,求めれば必ず救われる」という絶対的な信頼の感覚です。この時期にひどい虐待を受け続けると,強い人間不信に陥ります。

 3,4歳までに大切なことは,「自分をコントロールする力をつけさせる」ことです。

子どもをしつける時期です。2歳ぐらいから運動機能も発達して,楽しく動き回る反面,叱らなければならない行動も目立ってきます。ただ,叱ることも必要ですが,それ以上に大切なのは,お父さんやお母さんのようになりたいという子どもの気持ちを尊重してやり,できたことをほめて認めてやることです。この時期に暴力などの強烈なしつけをすると,恐怖心や被害感を与えてしまうことになり,子どもは常に人の顔色を見て行動するなど自信を持てなくなります。

昨今養育者が,子育てを相談する相手がいなくて孤立していたり,様々なストレスが子どもに向いたりするなど気持ちに余裕がない環境に置かれていることが多くあります。

『子育ては,手間がかかります,時間がかかります,心を遣います』

スピードと利便さが求められる現代社会の方向性とは正反対です。だから,「子育ては難しい」と学校や地域全体で共有し,できるだけたくさんの人たちで,子育てを支援することができればと考えていますので,遠慮なく本校にも相談をして下さい。養育者が焦らずに,ゆったりとした気持ちでしっかりと子どもと向き合えたなら,子どもの人権は守られると思います。

嘉楽中学校 校長 井上 浩史

「子どもから学ぶ」

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「子どもから学ぶ」についてお話します。

 私にとって忘れられない生徒の1人を紹介します。
小学生時は優等生で,中学入学後もクラスのリーダーとして活躍していました。遅刻もなく身だしなみの乱れもありません。ところが,2年生の後期に家出をしました。どこかで野宿して,翌朝に帰ってきました。母親も私も家出という行為を叱りつけました。収まったように思ったのですが,その後も数回にわたり家に帰りたがらない行動を繰り返しました。
3年生では,数日間続く家出をしました。私は予想できる行動範囲を夜遅くまで探しましたが,見つけることはできませんでした。その後,夜に祖母宅に帰ってきたという連絡を受けて駆けつけました。連れ戻そうと説得をしましたが,ただ泣くばかりで全く動きませんでした。私は自分自身が子どもとつながっていないことを思い知らされた気持ちになりました。しばらくすると,警察にお世話になることになりました。卒業後は高校に進学しましたが,中途退学しました。

家出とは,文字通り家を出るわけですから,「自立行為」と言えます。ただ,生まれたときから自立している人はいません。小さいときは親にひっついています。徐々にひっついたり離れたりを繰り返しながら離れていくことで精神的に自立していきます。中学生ぐらいの時期がちょうどひっついたり離れたりを頻繁に繰り返す過渡期ですから,それを相手する親は大変です。昨日はベタベタひっついてきたのに,今日は反抗的な態度になるなど,「子どもが何を考えているかわからん?」という声をよく聞くのは,そのためです。そういった段階を経て20歳前後ぐらいで実際に家を出る人もいますし,家を出なくとも精神的に自立します。ですから,本来,中学生ぐらいの時期は心の中で激しい葛藤が起こりますが,親子げんかをしたとしても家の中で収まることが多いと思います。

 このように考えると,早過ぎる家出に対しては,「自立するために,もっとしっかりひっついて下さい。これでは僕は自立できません」「急に離さないで(冷たくしないで)下さい。まだ,僕には自立する準備ができていません」という子どもからの心のメッセージと理解することができるのではないでしょうか。そして,家出という行為で気づいてもらえないなら,あとは警察にお世話になるしかなかったと理解できるわけです。

 この子どもとの出会いを通して,子どもの行動には何か深い意味があるのではないかと思うようになりました。振り返ってみると,親や教師にとって手がかかる子どもほど,学ぶことが多いように思えてなりません。これからもたくさんの子どもたちとの関わりの中で「子どもから学ぶ」姿勢を持ち続けたいです。

嘉楽中学校 校長 井上 浩史

「子どもを守る」

「子どもを守る」についてお話します。

 広い牧場の周りの柵を想像して下さい。これ以上外へ出ると危険であるという境界線が明確になっています。柵が無ければ,動物はどこでも自由に行けますが,危険な目に遭うことが予想できます。また,外部からの侵入に対して無防備な状態となります。柵は,牧場の内外を分けることで,牧場内の動物を守っているわけです。

 子どもにとっては,「これ以上はダメよ」「あかんもんは,あかんで」と言ってくれる親の存在が柵になります。柵が"しっかり"あることは,子どもにとって心理的に守られている状態と言えます。とりわけ,思春期の子どもたちの内面は非常に不安定です。自立するための葛藤は相当激しいものがあります。柵が弱いと葛藤が柵を跳び越えてしまい行動として外側に出てきます。さらに,弱い状態が続くと,行動はどんどんエスカレートしていきます。そして,社会のルールを超えるほどの衝動に駆られて実際に超えることもあるし,自身を深く傷つける行為に走ることもあります。柵が“しっかり”あれば,葛藤を自身の心の内で解決したり,親とのやりとり(ケンカも含めたコミュニケーション)で表現したりしながら成長していきます。子どもの健全な成長にとって,柵は必要な「守り」と言えます。

さて,昨今ケータイ・スマホの危険性や依存性の課題が浮かび上がり,家庭内のルール(柵)をつくることの重要性が指摘されています。そのルールを,子どもと話し合って決めることになれば,親は真剣に子どもに向き合わなければなりません。今どきの子どもたちは,情報社会の中で知識も知恵も豊富に持っていますので,半端な気持ちで向き合うと論破されてしまいます。よって,親が真剣な態度を示すためには,"心のエネルギー"が必要です。子どもは「私のことを大事にしてほしい」「大事ならば,それだけのエネルギーを使ってほしい」と期待しています。だから,日頃から様々な場面で子どもと向き合うときには,親がエネルギーをきちんと使って柵づくりをしていることがとても重要です。しかし,残念ながら,子どもが柵を大きく飛び超えることがあったならば,親は相当な"心のエネルギー"を持って対応しなければなりません。自らが柵そのものになるほどの覚悟がいります。心の底から「これ以上はダメだ!」「あかんもんは,あかん!」と声をあげるなど,体を張った毅然とした態度をとることでしか子どもの暴走を止めることはできません。

(※)柵を,心理学では「枠(わく)」という表現をします。

嘉楽中学校 校長 井上 浩史


「心のサインも見落とさずに」

「心のサインも見落とさずに」についてお話しします。

 ずいぶん以前のことですが,「中1の息子が万引きをしました。親として何が悪かったのでしょうか?」と相談を受けました。盗ったものは,数十円のアメ・ガム類数個でした。お母さんは「欲しければ,言ってくれたらよかったのに…」と嘆かれました。

そこで私は,最近の家庭での様子を聞かせてもらいました。「小学生の頃は,地域のスポーツクラブに所属して活躍していたんです。両親でよく応援に行きました。中学入学時に父親が単身赴任になりました。最近は,妹の習い事の送迎で忙しく,息子と話す時間がなかなか持てないんです。」とのことでした。

その後,私は「親から本当に欲しいものを,万引きを通じて訴えているのではないでしょうか?」と返しました。しばらくすると,「私の気持ちが急に妹の方ばかりにいってしまい,淋しかったと思います。もっと息子に関心を持って関わりたいと思います。」とおっしゃったので,「さらに,今度お父さんが帰られたときに,お父さんから『俺の単身赴任中は,お前がお父さん役として,家でお母さんと妹をしっかり守ってやって欲しい!』と言ってもらえたら,息子さんは家族の中での存在感を強く感じるのではないでしょうか。」と伝えました。

それから,彼の問題となる行動を聞かなくなりました。万引き行為を,叱ったりするなどの説諭だけで終わらせずに,子どもの心理的な背景を考え,家族の課題として捉えることで,本当の解決につながったように思えた体験でした。子どもの問題となる行動が,家族の危機を救ったと言えるのではないでしょうか。私は,この体験から,子どもの行動にはとても深い意味があるのではないかと考えながら指導することを心がけるようになりました。

『大人はみんな,子どもの教師』という言葉を聞いたことがあります。体は,すでに大人と言えるほどに成長はしているものの,まだまだ未成熟な心を持つ中学生です。自らの思いや考えをなかなか上手に言葉にできないことも多くあります。われわれ大人は,言葉として表現することの大切さを伝えながら,表情や行動,態度で表現する心のサインも見落すことがないようにして,子どもの正しい判断力を育てなければなりません。

今後も引き続き,地域や保護者の方々に,嘉楽中学校教育の推進ができるようにご協力をお願いします。

嘉楽中学校 校長 井上 浩史

「ほめる達人になる」

「ほめる達人になる」についてお話します。

「ほめる」と簡単に言いますが,上手にほめることはなかなか難しいのではないでしょうか。
子どもが小学生の高学年から中学生ぐらいになる(個人差もあるが,いわゆる思春期に入る)と,親や先生の言うことを聞かなくなり,「ほめる」より「叱る」方が多くなりがちです。当然,注意や指導しなければならない場面では,時として「叱る」ことも必要です。ただ,気づいたら「叱る」「叱られる」の多いコミュニケーションに陥っていると振り返る保護者や先生が多いと聞きます。

そこで,「ほめる」ために,私自身が心がけていることや技術を紹介しましょう。

□さ行の「ほめ言葉」を口癖にする
 さ:さすが〜。最高。
 し:しっかりしてるなぁ。しびれたわ〜
 す:すごい。すげぇ。素晴らしい。すてき。好きやわ。
 せ:センス抜群やね。世界一ちゃうか。先生も嬉しいわ。
 そ:それでいいよ。その調子で頑張れ。その通りやね。          など

 以上は,すぐに使える短い言葉です。ですから,子どもとの関わりの中で日常的に口癖のように使うことで,子どもの「自尊感情」を少しでも高めることになるのではないかと思っています。

□視点を変えて「ほめる」テクニック(リフレーミング)を使う
 これは,同じ物事でも,人によって見方や感じ方が異なり,ある視点で見たら短所として捉えられるが,違った視点でみたら長所として捉えることができるという考え方に基づくほめ方です。

例えば, 子どもの様子 → リフレーミングすると 

□さわがしい    → 明るい,活発な 
□意見が言えない  → 争いを好まない
□飽きっぽい    → 好奇心旺盛な  
□自慢する     → 自己主張ができる
□おしゃべりな   → 社交的な    
□断われない    → 相手の立場を尊重する
□だまされやすい  → 素直な 純粋な 
□あきらめが悪い  → チャレンジ精神に富む
□勝ち気な     → 向上心がある  
□調子にのりやすい → 雰囲気を明るくする 
□がんこな     → 意志が強い   
□涙もろい     → 人情味がある

 以上は,少し意識していないとなかなか言葉になりませんが,メッセージのコメントや文章などの中で活用ができると思います。参考にしていただければ嬉しいです。
 
                 嘉楽中学校 校長 井上 浩史

子どもに自己存在感を与える

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「子どもに自己存在感を与える」ことについてお話しします。

 「自己存在感」とは,自尊感情のことで,自分は価値のある存在だという実感です。これは,十把ひとからげでなく,個別性,独自性を尊重されるときに生じる感情です。「一人一人の存在」をかけがえのないもの(代理不可能なもの)として,大切にすることです。子どもに自己存在感を与えることは,正しい判断力と積極的な意欲を育てることにつながります。そこで,具体的な例として,ある画家の方がインタビューでお話しされていた内容を紹介します。

 僕は次男坊でね。大変よくできる兄貴がいて,いつも兄弟で比較されてつらかったです。母親から『お前は勉強ができないから,お父さんの仕事をしっかり手伝っておくれ』と言われて,漁師の父親についてよく港に行ったものです。
 漁が終わり片付けをしている頃がちょうど夕方になるんです。汗をいっぱいかいたあとに一息ついて,海に目をやると夕日に染まって空も海も真っ赤でした。いつのまにか,その素晴らしい景色を見ることが楽しみになってたんですよ。だから,手伝いはしんどかったけど頑張りました。

 そんなある日,学校で担任の先生がね。美術の授業で,港に写生に行くって言うんですよ。授業時間だから当たり前なんだけど,周りのみんなは昼の海や港の風景をていねいに観察して上手に描いているんです。でも僕はみんなと同じように描けないんですよ。なぜかと言うと,毎日見ている夕日に染まる空と海の光景がまぶたに焼き付いてしまっているから。それで,完成した絵が昼の写生なのに,何と夕日に染まる空と海の風景画になっちゃったんです。困ったなぁと思ったんだけど,僕にはそれしか描けないんだからしょうがないと思いました。
 そして,これは怒られるなぁと心配していたから,とてもドキドキして先生に画用紙を差し出しました。すると『お前すごいじゃないか!素晴らしい絵だよ!』とすごく褒めてくれたんですよ。それまで自分は何をやってもダメだと思っていたので,初めて褒めてもらってめちゃくちゃ嬉しかったです。そのとき,ひょっとしたら僕は絵がじょうずなのかなぁとすごく自信がついたんです。
これが私がプロの絵描き(画家)を目指すきっかけになったんです。

 先生に限らず,大人が子どもの「ありのまま(自己存在)」を受け止めることは簡単なように思えて,なかなかできていないことが多いです。つい大人の枠組み(大人の希望・期待する行動や態度など)にはめようとして,しつけるなど指導的になりがちです。
実は,本校の学校だよりの「ライオンハート」(子どものいいところを見つける)は,子どもに自己存在感を与える取り組みでもあると考えています。目の前の子どもの様子をきめ細かく観察しながら,一人一人の子どもを尊重する接し方を心がけたいものです。

                  嘉楽中学校 校長 井上 浩史
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月行事
3/31 離任式(9:30〜)
京都市立嘉楽中学校
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