京都市立堀川高等学校

まわり道

 堀川高校は、文化祭や体育祭などの行事をはじめ、特別活動も含めて生徒たちの主体的な活動を応援しています。活動を通して、生徒たちは失敗を含めたいろんな経験を通して、喜びや悔しさなどいろんなことを感じ、気づいていきます。このようなリアルな経験を学習面だけではなく、このような生々しい活動の中で、生徒たちは成長していきます。一見、将来の進路実現には遠回りのように感じますが、実は密接に繋がっていて、大きな要素であると思っています。将来、豊かな人生を送るためにはこのような体験はとても大切なエネルギー源なのです。自分たちで考え、立ち止まり、失敗し、また考え、軌道修正をする。ちょっと遠回りもしますが、遠回りから見えてくるものもたくさんありますし、堀高生としてのエネルギーは確実に蓄えられています。
 今年の8月25日の土曜日、地元の本能自治会地区の夏祭りがありました。毎年本校の吹奏楽部が夏祭りのオープニング演奏に声をかけていただき、参加しています。その時の祭りの様子で、とても素敵だと感じた親子と出会いました。その親子はお父さんとよちよち歩きができるようになった1歳半くらいの女の子でした。女の子は白地にピンクの柄の入った甚平姿で、小さな赤い靴を履いていました。お父さんは片手に出店の券を数枚持っていて、おそらく出店まで行って、トウモロコシかから揚げか焼きそばなどと引き換えに行く途中だったようです。お父さんは女の子を抱っこしたり、手を引っ張って出店まで行けばその目的を早く達成できたと思いますが、そのお父さんは女の子を歩かせて、その子の後ろからそっと寄り添いながらゆっくりと歩いていました。女の子は一歩進んでは足元の芝生をつかんでみたり、一歩進んでは、横を向いてしゃべっているおばあさんの顔をじっと見つめたりと、女の子はいつもと違う風景や様子、たくさんの大人と子どもでいっぱいの会場を、そのひとつひとつの風景や人をじっと観察しながら、ゆっくりと一歩、一歩を前へ、横へと歩みを進めていました。女の子はいろんなことを見て、肌で感じ、どこからかやってくるおいしそうな匂いを嗅ぎ、足元はふわふわした芝生で、歩きにくそうで、おそらく初めての感触だったでしょう。五感を体全体で感じながら、いろんな思いを現実として体験していました。お父さんはその様子をじっと見つめて、根気強く女の子につき合っていました。娘の感じるまま、思うままを体験させて、それを大切にしていました。女の子の遠回りをじっと見守っていました。こういうリアル体験がこれからの世の中にはとても大切になっていくと思います。こういう体験をした子どもたちは、豊かに育っていくのだと思います。今の世の中、早く合理的に答えを手にすることがよしとされています。もちろん否定はしませんが、リアルな体験をともなって蓄えられるエネルギーがより良い豊かな人生を作っていくと思います。
 そういう意味では、堀川高校での生徒主体の遠回りの活動も同じだと考えています。マニュアル通り、指示通りではない、クリエイティブな探究的な活動が将来、社会で活躍するときには、必ず力となって発揮されると信じています。目の前のことやモノについて、感じたり、思ったり、考えたり、触ったりで現実を体感させて、その体験を大切にしていたのです。便利な世の中になりました。ほしいと思っている答えがすぐに手に入る時代です。今後はさらにスピーディーになっていく世の中になっていくでしょう。そういう世の中だからこそ、現実のリアルな体験が重要になっていくと考えています。

 学校長 谷内 秀一


 アルベルト・アインシュタイン曰く、
「大事なことは疑問を持つことを止めないことだ。好奇心はそれ自体で存在意義がある。」



【校長室から】 2018-12-06 17:21 up!

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