京都市立紫野高等学校

生徒インタビュー@校長室Vol.3「自分が受けたものを返していきたい。その自分の行動原理に、マレーシアで気付けました」(2年8組小嶋達希さん)

「一歩踏み出すGlobal Citizen」を体現する生徒の活躍を紹介する校長室インタビュー、今回は満を持して生徒会長の2年8組小嶋達希さん(神川中出身)の登場です!(写真は大阪万博マレーシア館のグッズを見せてくれる小嶋さん)

――今日は学校運営協議会(注1)どうもありがとう。どうだった?
小 おもしろかったです。最初に依頼を受けたときから、楽しそうだと思っていました。

――ありがとう。ようやく生徒会長とゆっくり話す機会を持てたね。どうして紫野を選んでくれたの?
小 最初は家から近い南部の高校に行くのかな、と漠然と思ってました。紫野という高校があると聞いて、へー、校名に色が入ってるんだ、と思ったぐらい。でも、学校説明会に行ってみたら、生徒が登壇して学校紹介するじゃないですか。その先輩の姿が生き生きしてたので興味を持って、その後の説明会にも行って。その度に登壇生徒や個別相談の先生との出会いがあって、だんだん親子ともに、紫野いいね、と思うようになりました。

――実際に入学してみての印象は?
小 出身中学とは雰囲気が真逆でした。中学はマンモス校だったんでガチガチで、生徒会中央委員だった自分も正義感で突っ走っていました。でも対照的な高校に入っても、いい意味で周囲との関わり方が変わらなかった。むしろ、ギャップを感じないことに自分でも驚きました。
アカデミア科80名という密接な関わりを持てる集団に入ったからかも知れません。知り合いも少ないゼロからのスタートだったけど、みんなフレンドリーで、自然に興味あることをざっくばらんに何でも話せるようになった。誰としゃべっても、ずっとしゃべり続けられる感じ。

――なるほど。生徒会長に立候補した動機や抱負は?
小 高校生活で一番思い出に残るのは学校行事だと思います。その学校行事をみんなに楽しんでほしい、いい思い出にしてほしい、だからしっかり成功させたい。そのために方向性の矢印を揃えますよ、という気持ちです。でも、1年のときは生徒会長になるつもりは全くなかった。

――それが、どういった経緯で?
小 そこがうまく言えないんですが…。人を楽しませたいという原動力はありつつ、小中のときもそうでしたが、周囲や先生に背中を押してもらった面もあって。1年のときに運営委員として、前生徒会長たちと一緒に活動できたことも影響しています。先輩方とは、すごく仲良かった。わりとチャレンジャーなところもあって、周囲へのリスペクトもあって、言葉では大切だとわかっていたことも、行動で気づかせてくれた。

――いい経験だね。
小 この学校にはいろんなことを考えている生徒がいる。声が大きい人もいれば、声を上げられていない人もいる。それらを表明できる機会が少ないので、せっかくの意見を束ねて先生方に届けたり、今後の方向を打ち出したりしたいと構想していました。でも、会長になってみたら、周囲に助けられてばかりで。学校行事以外にもやりたいことはいろいろあるし、「一歩踏み出すGlobal Citizen」の学びももっと深めたいし、キャパ超えて、ウーってなってます(笑)。

――自分が助けられていることに気付いたり、周囲への感謝の心を知ったのは大事なことだよ。
小 そのことで言うと、1年の最後の修学旅行が思い出に残っていて。実は行くまでマレーシアのこと全然知らなかったんですけど、数日の滞在だけでも他者へのリスペクトを感じて、今は大好きです!

――え! そうなの?
小 現地添乗員のクリスやピーターとも、空き時間にいろんな話をしたんですが、二人とも「どこの所属という前に、自分たちは地球人」と言っていて、マレーシアでは本当にみんなからそういう姿勢を感じられた。それまで全然海外に興味なかったんですけど、メチャクチャ影響受けました。経験濃度がちがった。

――なんか、エンジンかかってきたね!
小 正直、今日この話がしたかったんですけど、いいですか?

――いや、こちらこそすまない! もちろんだよ、君の話したいことを話してもらうのが一番。
小 今日の学校運営協議会で、川那部先生(注2)が、「生徒の内発的な動機が重視されがちだが、響くか響かないかわからないけど、強制力をもってみんなに何かを経験させてみることも大事。それで未知の扉が開くこともある」っておっしゃったじゃないですか。わ、スゴイって思って。自分にとって修学旅行がまさにそうで、あ、こういう意味があったんや!って。すごく行ってよかった。全然興味なかった、だからこその感動。

――あれは逆説的で示唆に富んでたよね。小嶋さんにそんなに刺さってるとは気付かなかったよ。
小 校長先生が出発前の結団式で、「本当は自分も今すぐにでも海外でまた働きたい」って語ってたじゃないですか。正直、ホンマかなー、そこまで言う?って思ってたけど。ホンマでした。

――(笑)。ぼくも団長として一緒に行ったけど、一人ひとりの生徒が何を感じたか、じっくり話す機会はなかなかないから、今日は小嶋会長からそんな話が聞けてすごく嬉しいよ。
小 振り返ると、一貫してあの旅の中で、関わってきた人からのリスペクトを受け止めていました。将来、どう役立つかわからないけど、これまでで一番と言っても過言ではない経験だった。と言うと、これまでお世話になった方々に少し申し訳ないけど。最終的に泣きましたもん、マレーシアの空港で。幸か不幸か列の一番後ろで、クリスやピーターとのお別れも最後だったんです。引率の先生にも「泣いてるやん」と言われちゃいました。

――そこまで!
小 ええ。普通科のベトナム修学旅行は平和学習が前面に出てましたけど、多文化共生の国マレーシアでも、むしろ平和についてすごく考えさせられました。戦争のニュースなどを見る目も変わりました。だから、ぼくらの学年は海外修学旅行の直後に岡真理先生(注3)の講演会があってよかったと思います。普通科にとってもアカデミア科にとっても。

――年度末ギリギリでタイトな日程だったけど、そうやって関連付けて捉えてもらえたのは嬉しいね。
小 はい。実は数日前、友達の誕生日だったんで、一緒にお祝いで大阪万博行ったんです。パソナ館の鉄腕アトムとか、ヘルスケア館のiPS細胞とか、いろいろありましたけど、結局一番長くいたのも感動したのもマレーシア館でしたから。

――もうマレーシアLOVEだね。
小 マレーシア館では、マレーシア・マダニという国家政策の説明をしてくれました。「madani」という語自体が6つのキーワードを一文字ずつ取って表しているんですが、その6つのマレー語の中に「敬意」と「思い遣り」がちゃんと入ってたんです。こういう芯がなければ、あの国のあの特色はなかったんやな、と改めて納得しました。

――いい話だなあ。
小 自分の住んでいる地域は農家が多くて、幼い頃は農家同士のコミュニティの中で周りの人たちに育ててもらったという思いが強くあるんです。この人と人との触れ合いがめっちゃ好きで。幼少期も学校でも、みんなの支えがあって自分はここまで来た。そこに対して、自分も何かを返していきたい、という思いがずっとありました。生徒会長になったのもその一環だと思います。自分の奥にある行動原理を以前はわかっていなかったんですが、そこがマレーシアで見てきたことと繋がって、ハッとしたんです。

――すごい、ぐるっと回って生徒会長の話に繋がったね! 将来はどんなことをしたいの?
小 何となく先生に憧れがあって。幼少期の近所の農家もそうですけど、大人と深く関わる、大人と長い時間を過ごすという体験をさせてくれたのが先生なんです。自由にさせてくれて、見守ってくれて、感情も育んでくれた存在。自分、先生大好きっ子なんで(笑)。

――なんか、背筋の伸びる話だなあ。今日はありがとう! 一緒に紫野をもっとよくしていこう。これからもよろしく!
小 よろしくお願いします。

注1 本校では、今年度から現役生徒代表として、生徒会長に学校運営協議会の理事を委嘱している。インタビューは8月の第1回学校運営協議会後に実施した。
注2 川那部隆司准教授(立命館大学文学部)。本校の学校運営協議会理事。
注3 修学旅行翌週の3月17日、アラブ文学者の岡真理教授(早稲田大学文学学術院)を本校にお招きして、パレスチナ問題に関する人権講演会を行った。

※記事及び写真は生徒本人の了承を得て掲載しています。


【校長室より】 2025-09-18 15:18 up!

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